第41話 小ネタ(カクヨム限定)
第一回目の準備会を終えた次の日の土曜日。
僕達は再びしおり女子学園に呼び出されることになったのだが……。
「……なあ拓海さんよ」
「なんだい充さんよ」
毎度おなじみの掛け声から始まるこの雑談。
この声のかけ方は十割型どうでもいい話だ。
……でもどうしてかこれから話されるであろうことを事前に理解してしまうのはきっと目の前にあるこの、男子禁制、女子採寸チェック中という張り紙が貼られている教室と、その中から聞こえてくる少し甘くて楽しそうな声が原因だろう。
「俺はさ、今まで覗きとかそういったものは理解できないと思っていたんだ」
「偶然だな、僕も同じだ」
「でもさ、今なら少しだけ理解できるかもしれないわ」
「そうか……なら僕はどうかしてしまった親友のために警察の準備をしておくわ」
「……そこは親友サービスで普通に止めてください」
「ほらあのアニメでも言ってたじゃん、犯罪に走る前に病院か警察へって、だから早く警察行ってこいよ」
「せめて最初に病院行ってもいいですか!?」
「ダメだ」
「どうして!?」
「病院とか言っておきながらお前精神科じゃなくて児童がいっぱいいるところ行くじゃないか」
「児童がちっぱいしてるとこ?」
「……もしもし警察ですか?」
「冗談だって! だからそれだけはやめて拓海!」
「イラストレーター志望のほしみつこと星川充 逮捕 プギャー」
「何そのワード検索!? しかも何気に最後がひでぇ!」
「冗談だよ」
「なんだ冗談か、驚かせるなよ」
「今はまだ」
「まだ!?」
「──こほん、とにかく話を戻すと、俺はここの選択は非常に意味のあるものだと思っている」
「ほう?」
「だから俺はいくぜ……」
「そうか僕はここの選択に意味を見いだせないから大人しく隣の教室で待ってるわ」
「拓海、死ぬ時は一緒だぜ」
「いやお前だけでいけよ」
「仕方ない……俺だけパラダイスを満喫してくるぜ!」
「マジで行くのか……」
既に扉に手をかけている親友を横目に僕は予め言われていた隣の教室へ。
「まあ一応言っておくけど、どうなってもしらんぞ」
「ふっ、甘いな拓海……むしろここで開けずにいつ開けるというんだ。今、だろ?」
「……止めても無駄か」
「無駄だな。んじゃ行ってくるぞい!」
そう言い残して採寸中の教室に入る充と同時のタイミングで僕は隣の教室へ。
……入ったはずなのに。
「まったく充のやつももうちょっと欲を抑えなきゃダメだ……ろ?」
「せ、せん……せい?」
「拓海くん?」
目の前には肌色が広がっていた。
いや正確に言うと肌色だけではなく、色とりどりの布地も見えるけれど……。
いやそれよりもだ。
「えっと……どうして、みんなはここに……? 隣で採寸してるんじゃ──」
そこまで言った時だった。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!?!?!?」
「充!?」
突然隣の部屋から充の断末魔が聞こえてきたのだ。
「あららー、やっぱり拓海君は引っかからなかったかー」
「奈美さん?」
「いやね、採寸中って言ったら覗きにくるかなって思って念のためにトラップを仕掛けておいたの」
「なんて恐ろしいことを……」
「だってここは私のハーレムだよ!? 邪魔されたくないから……と思ったんだけどね」
「いやなんか本当にすみません」
「いいのいいの、それに愛莉ちゃんの期待も裏切らなかったし」
「愛莉の?」
「うん、このトラップを仕掛ける話をした時、愛莉ちゃんだけは拓海君は引っかからないって言ってたから」
「愛莉……」
僕はその言葉に素直に感動した。
自分の彼女に誇りを感じつつ、その視線を愛莉の元へ──。
「せ、先生……見ちゃ、ダメですよぅ……」
「……あっ」
そこには必死に上半身を隠しながら縮こまる愛莉、とその他の女子数名。
完全に忘れていました。現在進行形で採寸していたことを。
「先生すみませんが早く出ていってください!」
「は、はいっ!」
「終わったら連絡するから君は親友の元に行ってあげてねー」
そのまま僕は逃げるように充の元へと向かった。
「……にしても大変な目にあったぜ」
「自業自得だろ」
今は別教室で待機中。
ちなみに充だが、奈美さんが仕掛けたであろうスタンガンによって気絶していたのでビンタで目を覚まさせた後ここまで連れてきた。
「それにしてもまさかトラップだったとは……」
「相手が悪かったな」
「くそぅ、桃源郷が見られると思ったのに」
「……桃源郷」
一瞬だけ脳裏にさっきの肌色の光景が映る。
「ん? どうしたんだ拓海?」
「……いや、なんでもない」
このことは充意外のみんなとの秘密としてそっと心のうちに留めておくことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます