ロリと恋人になったら世界が変わった

第35話 小学生って最高だな！

　僕が着く頃には既に愛莉はそこにいた。

　ということは二人は無事に会えたということなので、ひとまずホッとした。

　「愛莉」

　「あ、先生」

　「二人の様子は？」

　「うーん、なんと言いますか……さっきの事もあって今は見つめあったまま何も……」

　「覚悟できたんじゃないのかよ……」

　二人からはもちろん僕達のいることはわかっているだろうけれど、それでもなるべく視界に入らない場所からこっそり見守る。

　と、思っていたら充がこちらをチラリと見ると、頷く。

　「……もしかして」

　「先生？」

　「あ、ああ、いや……」

　(もしかして僕の到着を待っていたのか？)

　そんな事を思っていると、

　「……奈穂、ちゃん」

　「……はい」

　「まずは謝らせてほしい。自分勝手な思い込みというか決めつけであんな断り方をして、本当にごめん！」

　地面に擦り付けるくらいの勢いで頭を下げる。

　「頭を上げてください……」

　「奈穂、ちゃん……」

　そういった彼女の目はとても優しく、それでいてどこか悲しそうだった。

　「……それだけ、ですか？」

　「えっ？」

　「それだけ言いに来たんですか？」

　「…………いや、違う」

　親友に叩いて貰った背中は未だに少しジンジンする。でもお陰で今でも背中を抑えてもらっている気がする。

　……だけどここからは俺が一人で歩く番だ。

　俺は一度深呼吸をして、ピンと姿勢を正し真っ直ぐに彼女を見つめる。

　「奈穂ちゃん──天海奈穂さん、さっきあんな酷い振り方をしておいてこんなことを言うのは都合が良すぎるのはわかっている。でも言わせて欲しい」

　「…………はい」

　「俺、星川充は、天海奈穂さんの事が好きです、大好きです」

　……もう悩むのはやめた。

　「俺は君と一緒にいる時間が好きです。君の無邪気に笑う顔が好きです」

　熱が上がってくるのがわかる。頭もくらくらする。

　だけどこれは言わなければいけない、さっきも同じ思いをしながらその思いを踏みにじってしまった彼女に対して俺に出来る精一杯のことをするんだ。

　それはこの気持ちをそのまま伝える、それだけだ。

　「俺はまだまだ未熟だけど、それでも君の隣にいたい。これからも何年先も、変わらない笑顔を浮かべる君の隣に俺の姿があってほしい」

　「……あの先生、これって」

　「ああ……あいつ告白をしているつもりなんだろうけど、あれじゃまるで……」

　「プロポーズですね」「プロポーズだな」

　「天海奈穂さん、俺と付き合ってください！！」

　「…………」

　充の精一杯の告白が静かな丘の上で響く。

　告白というよりプロポーズのような気もするが、まあそれは良い。

　あとは奈穂ちゃんの答えを待つだけだが……。

　「いや、です」

　「……そうか。まあそうだよな……」

　彼女もまたしっかりと充の瞳を捉えてそう返した。

　「奈穂さんっ！」

　「──ッ！」

　「せんせい！」

　その答えに我慢出来なくなったのか、愛莉は立ち上がろうとする……が、僕はそれを防ぎゆっくりと首を横に振る。

　「ですが先生！」

　「いいから、大丈夫。大丈夫だから今はじっと堪えて。それとも今出ていって台無しにするつもり？」

　「……すみません」

　冷静さを取り戻したようで元の位置に戻る。

　……まあこの状況は僕の予想の範疇だから大丈夫だろう。

　何より、二人ともお互いのことが大好きだってわかってるから。

　「……ごめん、天海さん。都合が良すぎたよな。振ったのは俺なのに……ほんとごめん」

　「…………」

　「でも天海さんが俺に言ってくれたように俺も言わなきゃって、これが俺なりのケジメだ。……こんな形になったけど聞いてくれてありがとう」

　それだけ言って充がその場を立ち去ろうとした時だった。

　「──嫌ですッ！！」

　「えっ？」

　充の背中にまるで逃がさないと言わんばかりの勢いで抱きつく奈穂、その時に瞳から流れた涙が宙に舞った。

　流石にこの流れは予想していなかったようでその顔は驚きに満ちていた。

　「嫌です、ごめんなさいなんて嫌です！」

　「天海……さん？」

　「謝るくらいなら愛してるって言ってください……私が聞きたいのは謝罪じゃなくて充さんの気持ちなんです……」

　声を震えさせながらその小さな身体で精一杯気持ちを伝える。

　「天海さんじゃ嫌です、前みたいに奈穂って呼んでください。謝った分いっぱいいっぱい愛してるって好きって言ってくださいよ！」

　「奈穂、ちゃん？」

　「ありがとうなんて言わないでください……まだ私は何も言ってないじゃないですか……」

　「でも……嫌って……」

　「大好きな人に大好きって言われて嫌な人なんているわけないじゃないですかっ！」

　「──っ」

　「私は謝られるのが嫌だったんです。あんな振られ方をして、嫌いになりかけて……でも嫌いになれなかった……」

　「奈穂ちゃん……」

　「充さん、聞こえますか私の鼓動……」

　「……うん」

　「あなたに告白されて……いいえ、あなたと顔を合わせてからずっとこんな状態だったんです、あんなに酷い振られ方をしたのに、それでもあなたの事が好きなんです」

　「……俺も、俺もそうだ。君に告白する前から、君の事を思い出すだけでもこんな風になってしまう」

　お互いにお互いの鼓動を確かめあうように、奈穂は充の事をより強く抱き締める。

　「振られた時、凄く悲しかったです……。もしかしたら好きなのは私だけで充さんはそうじゃなかったのかもって……」

　「ごめん……本当にごめん」

　「……ぅぅぅ……」

　「奈穂が望むならなんだってする、だから泣かないで」

　「泣かせたのは充さんじゃないですかぁ……」

　「それは……」

　「……なんでも、してくれますか？」

　「もちろん」

　「本当の、本当ですか？」

　「ああ、ロリコンに二言はない」

　「……なら愛してください。いっぱいいっぱい謝った分、私に愛を感じさせてください……」

　「えっ！？」

　「……なんでも、してくれるんですよね？」

　「…………」

　俺は意を決し、抱きついている身体を離すと、彼女の肩の上に優しく手を載せる。

　「充さん」

　「奈穂」

　俺は彼女を逃がさないように、自分が逃げないように、彼女の肩をしっかりとそれでいて優しく掴み。

　「愛してる」

　「──っ！？」

　今までの分を全て愛情で返すように、しっかりとこの気持ちを噛み締めるように俺は彼女の桜色の唇を塞いだ。

　唇から伝わるこの熱は子供特有のなのか、俺と同じものなのかはわからない。

　だけど今はこの柔らかくて愛おしい彼女の唇を……。

　「……充さん、もう一度」

　「うん」

　何度も何度も、好きの気持ちを確かめあう。

　「もう、一度……」

　俺の目の前には可愛い奈穂の顔がある。

　いつもの落ち着いた雰囲気とは違い、涙の擦った後やとろけた瞳に真っ赤になった顔。

　(ああ、俺は本気で彼女の事が好きなんだ……)

　彼女の顔を見ているとそれだけで幸せになる。

　だからせめて自分が感じた幸せ以上の幸せを彼女と一緒に築こう。

　そうして何度目かのキスを終える。

　「はあ、はあ……」

　少し回数が多かったのだろう、少し苦しそうになまめかしい吐息を漏らす。

　そうして視線は自然とその口元にいってしまい、先程まであの小さな唇とキスをしていた事を更に強く思わせる。

　「──ねえ奈穂」

　「なんでしょうか……」

　「好きだよ。大好き、愛してる」

　「はい、知ってます」

　「なら奈穂の答え聞かせてくれるかな？　俺の記憶ではまだ貰ってない気がするんだけど」

　「……もう、充さん。そういうことは察してください」

　「わかってるけど、俺は奈穂の口から聞きたいかな」

　「そんなの、決まってます。私も好きです、大好きです愛してます。そうじゃなかったらキスなんてしません」

　「ははっ。そうだね、間違いない」

　二人はその場で座る。

　「奈穂、俺はちゃんと愛を感じさせることは出来たのかな……」

　「ふふっ。心配しなくてもちゃーんと感じましたよ。充さんの私に対する気持ちは」

　「……なら今回のことは」

　「ですが、それとこれとは別です。私は今回の件で傷つきました。それは本当に傷つきました」

　「……ごめんなさい」

　「ですからこの傷ついた心を充さんの愛情で癒してください。ちゃんと癒えるまで愛してくれないと許しませんからね」

　「……頑張ります」

　言いながら寄りかかる彼女の体温を感じる。

　(……ああそうか。これが……)

　そのとき充は理解する。

　「確かに、全てが輝いて見えるな」

　「輝いてですか？」

　「ああ。拓海に聞いたんだ、愛莉ちゃんと付き合って世界はどう見えるようになったのかって。そうしたら全てが輝いて見えるようになったって言ってたんだ」

　「……なるほど。確かにそうかもしれませんね」

　「奈穂の見える世界も輝いてる？」

　「はい、とってもキラキラとして眩しいくらいです」

　「そっか。それは良かった……あっ、花火だ」

　まるで二人を祝福するかのように星空のカーテンに色鮮やかな一輪の花が咲く。

　きっと二人はこれからも大丈夫だ、何故ならこんなに素敵な告白（プロポーズ）になったのだから。

　「そう言えば充さん」

　「ん？」

　「何年先も一緒にいたいって言ってましたけど、あれはプロポーズと受け取ってよろしいんでしょうか？」

　「え、あ、そ、それは……」

　「それは？」

　「……まあ、うん」

　「ふふっ、素敵な告白（プロポーズ）ありがとうございます♪」

　……そんな幸せな時から数時間後。

　「どうしてこうなったんだっけ」

　「どこかの誰かさんがさっさと告白を済ませないからじゃない？」

　僕と充は今地元の銭湯にいます。

　時は遡り告白のあと……。

　「ふぅ……これで本当に安心できるな……」

　「そうですね。二人には幸せになってほしいです」

　「確かにそうだけど……僕は愛莉に世界一幸せになってもらいたいからね」

　「あっ、せんせぇ……」

　あんなに熱烈なものを見せられて黙っていられるほど大人じゃない。

　完全にスイッチが入ってしまった僕達。

　「今はこんな形でしか愛情を示せないけど……」

　「ふふっ、それでも私は嬉しいですよ。先生からしてくれることなんてほとんど無かったので」

　「そうだっけ？」

　「そうですよ。先生は私が小学生だからって遠慮しすぎです」

　「ははっ、そうかも。……でもこれからはなるべく頑張るから」

　「はい、期待してますよ……拓海さん♪」

　こうして僕達も唇を重ね合い、あの二人を通して再び僕達の愛を確かめあった頃。

　「……アツアツだねぇー」

　「「──ッ！！？」」

　突然の第三者の声に驚き思わずバランスを崩しそうになる。

　「あはは、ごめんごめん。そこまで驚かせるつもりはなかったんだけど……」

　「……何やってるんですか渚さん」

　その声の正体、それは堂々と片手にカメラを持った渚さん、そして。

　「まあいいじゃないですか、お二人は恋人なんですから」と、うんうんと頷く愛優さん。

　「そうは言っても場所は選ぶべきだと思うんだけど……」と、呆れたように言う梓桜。

　「そうかな？　ボクは二人がアツアツならいいと思うよ！」と、何故かテンション高めの紗々ちゃん。

　「というかなんでここにいるんですか？」

　「拓海くん、時間」

　「えっ時間？」

　僕は言われてスマホの時間を見る。

　現在時刻……十九時。

　確かみんなと別れたのが十六時だから……その時から既に三時間経っているわけで……。

　「あっ……」

　「やっと気付いたかなー。た、く、み、く、んっ」

　「あ、いや、確かに集合は出来なかったけれどわけがあって……」

　「わけ？」

　そう言って思わず充達の方へと視線を向けてしまう。

　「なーるほど」

　全てを察したように頷くと。

　「全軍……突撃ィ！！」

　まるで先陣を切って走る歩兵隊のような勢いで充たちの方へと走りだした。

　……そして本来一緒に回るはずだった分を何故か銭湯でやるらしいのだが。

　「なあ充さんよ」

　「なんだい拓海さんよ」

　「物凄い今更なんだけどさ」

　「おう、なんだ」

　「どうして僕達は女湯に入っているんだ？」

　「どうしてだろうなぁ……」

　そう言いながら貸し切っているため今は誰もいない女湯に浸かりながらクエスチョンマークを浮かべる。

　そんな仕草はしてみるもののどうしてかなんてわかっている。これはただの現実逃避だ。

　「せんせーい！」

　「みつるさーん！」

　入り口からこの銭湯を貸し切った人物達のうちの二人、愛莉と奈穂ちゃんの呼ぶ声が聞こえてくる。

　きっと準備が出来たのだろう。

　流石に裸のお付き合い……なんてした日には牢屋とのお付き合いが始まってしまう。

　なので一応僕達は湯浴み着を着用することになっているのだが……。

　「なあ拓海、奈穂達って湯浴み着を来てくると思うか？」

　「そりゃ……そうでしょ？」

　一瞬だが愛優さんのイタズラっぽい笑みが浮かび着ない可能性も浮かんだが、流石にいくら恋人とはいえ人前でそんなことはないと思う。

　とかなんとか思っているうちに足音はどんどん近くなり、

　「あ、こちらの方にいたんですね」

　「うん、ここなら外の様子も見えないからね」

　「充さんも同じ理由ですか？」

　「まあ、そうだな」

　「なるほど、だから隅の方にいらしいたんですね」

　実際は堂々と女湯に入っていられるほどのメンタルが無いからせめてもと隅の方で縮こまっていただけなのだがそれはそれ。

　にしても……。

　「なあ充」

　「ああ拓海」

　恐らく僕と親友の意見は完全に一致しただろう。

　湯浴み着ロリいい！！

　例え湯浴み着が透けてもそれがわからないように思えるほど透き通った白い肌に、蒸気で肌にピッタリと吸い付く湯浴み着。

　その気はなくとも自然と愛莉達のロリボディラインや成長途中の慎ましやかなちっぱいが強調されて……なんというかとてもエロい。

　「初めて湯浴み着というものを着ましたが、私似合ってますか先生」

　「うん、とても、似合ってるよ」

　「私はどうですか充さん」

　「もちろん似合ってるさ」

　僕達がそう答えると二人は可愛らしくふふっと嬉しそうにはにかんだ。

　「あ、そうだ。折角なので私達がお背中……いいえ、この際色々なところを洗いましょうか？」

　「えっ？」「へっ？」

　「それはいい案ですね愛莉さん。是非私からもお願いします」

　「えーっと……」

　「これは……」

　どうしようかと顔を合わせる。

　もちろん愛莉達に色々なところを洗ってもらえるのは嬉しいのだが、その色々の部分が物凄く気になる。

　背中だけではないのはわかっていふものの、万が一それが身体の隅々までというのであれば……僕達の逮捕は間逃れない。

　ただでさえ愛莉達のえっちな湯浴み着すがたを見たせいで少し敏感になっているというのに、小さくて柔らかい手に触られたら……考えるだけで興奮しそうになるし同時に終わりを意味する身震いまでしてしまう。

　それに戦闘状態になってしまった場合困るのはそれだけではない。

　「ヒャッハー！」

　「こらこら紗々ちゃん、走ったら危ないよー」

　「まあ貸し切りだからいいんじゃない？　ほかの人の迷惑になるわけでもないし」

　「ですが転んだら危険ですし、その拍子にポロリなんてしたらお二人の首が……」

　「しないし、怖いこと言わないでよ……」

　続々と入ってくる、紗々ちゃんに渚さんに梓桜に……。

　「って、愛優さん何持ってきてるんですか？」

　「カメラです。ポロりを見逃さないための」

　「今すぐ片付けようか」

　「湊様は見たくないんですか、貴重なポロりを」

　「いや見たくない……ってわけじゃないけど、それでもダメです！」

　全くこのメイドは……油断も隙もありゃしない。

　「ははは、拓海も大変そうだな」

　「もう慣れてきたよ。本当に慣れって恐ろしい」

　「俺は慣れそうにないけど、そういうのって慣れるもんなのか？」

　「んー、詳しくはわからないけど僕は慣れたし多分そうなんじゃないかな？」

　とは言っても慣れないものももちろんある。例えば……。

　「さあ先生早くこちらに座ってください♪」

　「充さんもですよ」

　「なあ拓海さん」

　「なんだい充さん」

　「これも慣れるのかな」

　「少なくとも僕はまだ慣れてないね」

　「だよなぁ」

　純粋に回数が少ないってのもあるけど、多分これは何回やっても慣れる気はしない。だけど……。

　「御手柔らかに」

　「お願いします」

　『はいっ♪』

　嬉しそうに返事をする二人を見て思うんだ。

　僕達はまだお互いに知らないことが多い。時に喧嘩もするだろうし、別れるところまでいってしまうかもしれない。

　でもそれでいいんだと思う。普通なら交わることのない世界がこうして身近にあるということは初めての事が多いのだから。

　慣れない事でも少しずつ慣れていけばいい、そんな風に沢山のことを積み重ねて僕達は恋人……いずれは夫婦になるんだ。

　だから今は小さな一歩でも確実に進んで行こうと思う。

　いつでも僕達の隣には愛莉達がいる、それだけで僕達は頑張れるのだから。

　「充」

　「ん？」

　「世界は変わったか？」

　「……ああ。もちろん、今俺の世界は眩しいくらいに輝いてる」

　「それは良かった」

　「やっぱりアレだな」

　「うん、アレだね」

　『小学生（ロリ）って最高だな！』