第25話 ワケありなロリあり
とあるアパートの一室にひとりの男子高校生と一人の女子小学生がいた。
お互い驚きのあまりに表情から身体まで、まるで時が止まってしまったかのように固まっていた。
それもそのはずでこの少年、
そしてこの少女、
そんな二人の疑問の答えを持っているのはやはりというかなんというか言わずもがな朝武邸のメイド、
ちなみに彼女は今、
が、そんな事を知らないバスタオル一枚の姿を見られたり見たりした男女は今もなお、この状況に対しての疑問を抱き続けるのであった。
しかしそんな固まったままの時間は続かないのが現実。
この『どうして』という疑問を全て吹っ飛ばしてしまうような出来事が起こってしまうのがこの男湊拓海である。
お互いがお互いを見たまま三分近く経過しようとした、まさにその時だった。
ほんの一瞬だけ彼女が動いた、ただそれだけなのに彼女のロリロリしくも一部分だけ見事な迄に育っているボディを守るバスタオルがその使命を終えたかのようにするりと少女の身体を滑り落ちた。
「「……ッ!?」」
その先にあるのはもちろん桃源郷。
まさに全て尊き理想郷。
ファミチキください。
これが……世界か。
などなど様々な感想が横切ってしまうような完璧なまでのボディ。
まさにアイドル……というか実際にアイドルなのだが、これぞ真のロリ系アイドルなのだと実感させられてしまう。
おお神よ……ありがとう、本当にありがとうございます。
僕が神に感謝を捧げる。そして同時に訪れる時間の流れ。
彼女はわかりやすいくらい顔を薔薇のように真っ赤に染める。
「きゃああああああああああ!!!!」
「ごごごごご、ごめんっ!!!」
今更ながら悲鳴を上げながら身体を必死に隠す一夜梓桜と、急いで扉を閉める僕。
「はぁはぁ……ど、どうして彼女が僕の家に?」
考えようとしても頭に浮かぶのは先ほどの光景。
白く透き通った肌にロリ的で健康的な身体、そしてその身体にしては大きいお胸様……あれはきっとC近くはあるだろう。
まさにロリ巨乳!!
これはファンが増えるわ……。そして
「見られた……男の人に、しかも裸を……見られたぁ……」
「本当にごめん、まさかこの家に女の子がいるなんて思ってもなかったから……」
「そんなことないはず……だってあのメイドさんがこの部屋の
「えっ?」
僕は急いでそのメイドさんに電話をかける。
『もしもし愛優さん』
『はい、どうかしましたか湊様』
『僕に何か言うことがあるでしょ?』
『……愛莉様の使用済みパンツの発送は二十三時頃になります』
『ちっがっう!! 一夜梓桜だよ一夜梓桜!』
『あっ! すみません、忘れてました……梓桜様に湊様のお部屋を少しの間貸すことになったという報告をするのを』
『それ大事だからね、忘れないで!』
『すみません湊様。ですが湊様ならあの手この手を使ってなんとかしますよね?』
『あの手この手って……』
僕はスマホから耳を離し彼女のいる脱衣所の扉に耳を当てる。
「ありえないありえない……これは夢です、そうきっと夢なんです。そうじゃないとこんな事ありえるはずがない……夢じゃなかったらいっそこのままここで死ぬしかない……」
……うん、なんかダメそうだ。
一人でなんかぶつぶつ物騒なことを言ってるし。
『詳しくは言えないけれど少し色々あってダメそうなんですけど』
『別に裸を見たくらいなので大丈夫なのでは?』
『おい待てなんでそのこと知ってるんだよ』
『そりゃ今はあまり使っていないとはいえ湊様の家でもありますからね。隠しカメラもとい監視カメラはちゃんと付けていますよ』
『……その事については帰ってから追求するとして』
『別にデートの終わりはセックスで終わると
『…………で、その変態メイドさんはこの状況をどうしたらいいと思いますか?』
『変態メイドだなんて、そんな事言われたら……興奮するじゃないですか』
『どうしようもないなこのメイド!』
『冗談ですよ。それでこの状況なら……と言いましたが、私的なアドバイスは出来ません。何故ならこの分野(ロリ)としては私より湊様の方が得意なので』
『それは、そうだけど……』
『とにかく湊様のお好きなようにしてみては? 普段愛莉様と接するようにしたら案外なんとかなるかもしれません』
『……やってみます』
確かにその通りかもしれない。そう思った僕は一言お礼を言うと電話を切り扉の向こうにいる少女へ語りかける。
「えっと、一夜さん……本当に今更なんだけど事故とはいえ見てしまってごめんなさい」
「…………」
「一夜、さん?」
「うぅ、やっぱり見られてましたあ……もうやだおうちに帰りたい……」
「その前に服を着てはいかがかな!!」
「そう言って私に服を渡すついでに色々……た、例えば私の服ですーはーすーはーしたりするつもりなんですよね、私知ってますから」
「いやしないからね!? というより僕が後ろを向いている隙に君がそこから出てすぐに着替えればいいのでは?」
「そ、そんなこと言って途中で覗くつもりですよね」
「そんなことはしないよ」
「とか言って実は部屋に隠しカメラが仕掛けられてるんですよね」
「それは……」
否定しようにも否定出来ない。
何故なら本当に隠しカメラが配置されているから、僕もどこに隠されているか知らないけど!!
「ほらやっぱりそうなんじゃないですか! いやですいやです。ここから私出ません!」
「いや確かにカメラはあるけれど僕が仕掛けた訳じゃないし、第一僕も存在を知っているだけだから」
「そんなの余計に信用出来ないじゃないですか!!」
「うん、そのとおりだよね!」
「それに……私、今服持ってないですし」
「えっ?」
「あ、あの公園を出た後、転んでしまい今服を洗おうと洗濯機に入れてしまって……。それにこの家は今日は使わないって聞いたので一人なら別に裸でも……と思ったんです」
つまり彼女は僕がここを離れたとしても全裸またはバスタオル一枚で過ごすことになる。
だけど僕的には全裸よりも裸
シャツとかのが可愛いというかエロいというか……つまり好きなんです。
「……ん、Tシャツ? あっ、ちょっと待ってて!」
「え、ど、どこに行くんですか!? ま、まさかお仲間を呼んで私をどうにかしようと!」
「違うからね!? とにかくそこでじっとしてて!」
僕はそれだけ言うと自室へ行き、今は使われていないタンスを開ける。
そしてそこから比較的新しいTシャツを手に再び脱衣所に。
僕の目算だけど彼女の身長に胸の大きさを計算してもこのYシャツでならば下まで隠れるはず……。
そう、あの小学生にしては大きいお胸になんといってもあの柔らかそうな白い肌。
あれはきっと愛莉とは違った次元で神なんだろうな……。
「っと、いけない……」
「今へんなこと考えてましたよね?」
「別に考えてないよ? とにかく扉の前にシャツ置いておくから僕が一旦部屋に行く間にそれだけ着て。多分君の隠したいところは隠れるはずだから」
僕はそれだけ言うと脱衣所の前に綺麗に折りたたんだTシャツを置くとそのまま外へと出た。
「はぁ……まったく、どうしてこんなことに……」
ため息混じりに呟きながら空を見上げる。
そこにはこの非日常的な出来事が起こった僕なんかとは違い、いつもと同じような満天の星空を映し出していた。
「……そろそろかな」
そう思い家の中に引き返そうとした時だった、不意に背後から現れた人影に肩を叩かれる。
「よっ! 拓海、どうしたんだ家の前で?」
「げっ、充……」
「げっとはなんだげっとは。第一ちゃんとあの後お前の家に行くって行ったじゃんか」
「そういえば……」
あんな事の後だから普通に忘れていた。
とはいえ手にはお泊まり道具のような物を持った親友を追い返すわけにも……いや、逆だな、今ここでこいつを追い返さないともっと不味いことになるな。
「すまん充。鍵をどこかに落としたみたいで、今は入れないんだ」
「マジか!? どこで落としたとかわかるか? 一緒に探せば見つかるかもしれないし!」
「いや大丈夫だ。鍵は大家さんにいえばなんとかなる。でも今日はいないみたいだし、近くにいる知り合いが一泊ならいいと言ってくれたからそっち行くことにするよ」
我ながらよくもまぁすらすらとこんな嘘が出てきたなと感心してしまう。
そして同時にこんないい親友を騙すことになった自分が少し嫌になってしまう。
だけどこれは仕方ない……仕方ないんだ。と、何度も心の中で自分に言い聞かせる。
「まあそういうことなら俺は帰るわ。力になれなくてごめんな。早くなんとかなるといいな」
それだけ言い残し家へと帰る親友をの背中が見えなくなるまで僕はその場に立つ。
「充には悪いことをしちゃったな……」
そして親友の背中が見えなくなると自然とそう呟いていた。
だけどこれは仕方ないことなんだと自分に言い聞かせながら僕は家の中へと入っていった。
「ありがとう、ございます」
部屋に戻ると既にそこで正座をして待機していた一夜さんは顔を赤らめながら恥ずかしそうにそう言った。
「でもこれとあれは別ですからね!」
直後今度は怒りをあらわにする。
まあそうなるわな。
「本当にあれは事故だったんだよ……」
「仮に事故だったとしても、してもですよ。私の裸、見たんですよね?」
「……はい」
私の裸、の辺りから急にトーンが落ちる。
「これは、言質を取れたってことでいいんですよね?」
「はい、おっしゃる通りです……え? 言質?」
「そうです。言質ですよ」
そう言いながら彼女はいつの間にか忍ばせていたスマホを取り出しボイスレコーダーの再生ボタンを押す。
するとそこから聞こえるのはつい先程の会話なわけで。
「ということで責任、取ってくださいねっ♪」
「あ、あはは……」
こうなってしまっては最後、僕はその場で固まったまま引きつった笑みを浮かべるのみだった。
「──それで。責任を取るって言っても何をすればいいの?」
とりあえず立ったまま固まっていても始まらないので机を挟み正面に座る。
「そうですね……例えばですけど、私の処女、とか?」
「けほっ、げほっ!! しょ、処女って!?」
「あはは、冗談ですよ冗談。私初めては結婚する人とするって決めているので」
「そ、そうなんだ……」
「ちょっと期待しました? 小学生アイドルと一夜を過ごすなんて……一夜だけに」
「うるさいやい!」
そりゃ僕だって男の子ですから、愛莉というベストパートナーがいるとはいえ、そう言った話が出てくると反応してしまいますよ。
「とにかくです……。私がうっかり手を滑らせて先ほどの再生データをこの膨大なSNSという海に放流したら……どうなると思いますか?」
「やめてください……許して……。比喩表現でもなんでもなく本当に死んでしまいます、社会的にも肉体的にも……」
「ならあなたは私にどうしますか?」
「喜んで下僕にならせていただきます」
「物わかりのいい人は好きですよ♪ もっとも女の子の裸を覗くような変態さんは嫌いですが」
「うぅ、わかってます。わかってますからその冷たい視線で僕を見ないで……」
「そうですよね。世の中にはこんなふうに見られると興奮するどうしようもない変態さんもいるわけですからね」
「いるけど僕は違うからねっ!!」
「でもロリコンですよね?」
「な、な、なぜ……それを……?」
突然の鋭い一撃に同様を隠しきれずにいる僕に追い打ちをかけるように彼女はあるものを取り出す。
それは僕がロリコンである何よりの証明ともいえるもので。
「ここにあるイラストなど全部……そう、ですよね?」
「……はい」
「…………」
「…………」
「とりあえず私は『110』にかけてみてもいいですか?」
「それだけは本当にやめてください。何でもするので」
「……ん? 今なんでもするって言いました?」
「いやなんでもするとは言ってないですよ」
「それなら『110』にかけるしか──」
「ごめんなさい言いましたッ!! ……それで僕は何をすればいいんでしょうか」
相手を伺うように恐る恐る顔を上げる。
しかしそこにあったのは先程までの自信に溢れる彼女ではなく……。
「お願いします。私を……守ってください」
酷く怯えた少女だった。
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