第10話 ロリとロリコンと市民プール
六月も半ばに入り、暑さが日に日に増してきた第三土曜日。
約束したわけでもなく、自然と愛莉の家に集まっていたロリッ娘達はだらしない姿で僕がたまたま持ってきていた団扇を仰いでいた。
「あ〜あつい〜……」
「えぇ……そうですね」
「愛莉さんの家は山の中にあるのに、ここまで暑いなんて……」
『はぁ〜……』
三人は大きなため息をつく。
こうして見ると、この子達がお嬢様で投資やコンサルとか色々出来ちゃうスーパーロリッ娘なんてことを忘れてしまうな。
普段なら快適な温度が保たれているこの家に、何故夏の暑さが入り込んでいるかというと…………。
「空調設備の修理ってまだかかりそうなんですか?」
「はい。紗奈によると少なくとも夕方くらいまでかかるらしいです」
この暑さの中、ヒートしてしまったらしく空調設備が完全に止まっていたのだ。
いくらこの家が森の中みたいなところにあるとはいえ外は三十度近くあるのだ、夏場は扇風機のみで過ごしていた僕とは違い快適な環境にいたお嬢様達には少しばかり辛いだろう。
「愛優さんは大丈夫なんですか?」
僕はふと横を通りかかった愛優さんに質問を投げかける。
こんな日なのにいつもと変わらぬメイド服を身につけているため、何か気分だけでも涼しくなるような心得がある……なんて期待を込めて。
「大丈夫とは暑さのことでしょうか。うーん、そうですね……大丈夫か? と、聞かれれば大丈夫と答えられますが、これは私も湊様と同じで暑さに慣れているだけなので……」
「ん? 僕と同じ?」
「はい。私……というより私達はつい最近メイドになったばかりなので。それまでは湊様と似たような生活をしてましたから、では」
愛優さんはそう言い残すとキッチンの方へと消えていった。
それにしても知らなかった。紗奈さんはともかく、愛優さんはメイドがしっかりと馴染んでいたから小さい頃からそういった訓練みたいなのを受けているとばかり……。
「色々あるんだな……」
僕はしみじみとそう呟くと、後ろの方からとんでもない会話が聞こえてきた。
「えーいっ! こうなったら脱いじゃえ!!」
「!?」
聞こえてきたのは紗々ちゃんの声だ。紗々ちゃんの声なんだが……今、脱いじゃえって言わなかったか?
……いやいや、気のせいだろう。
いくら小学生とは言っても一応高学年だし、それに紗々ちゃんもいいところのお嬢様なんだからそんな事あるわけが…………。
僕は爽やかな笑顔を浮かべ、振り替えろうとしたその時──
「拓海さんはこっち見ちゃダメです!!」
「ぐえっ!?」
僕は愛莉の手によって無理やり頭を元の方向へと変えられてしまった。
ということはつまり……。
「えーっと、愛莉、さん?」
「拓海さんはちょっとそのままでいてください! 兼元さんも早く服を着て……あっ! せめて脱ぐなら上だけにしてください、拓海さんがいるので下はダメですよ!」
下も脱いだだとぅ!!?
下ってことはあれか、あれだよね? 今日の紗々ちゃんの服装は確かショートパンツだったから……。
「拓海さんも妄想しちゃダメです!」
「なんでバレた!?」
「拓海さんはへ、変態さんですから全てお見通しですよっ」
まさかまだ根に持っていたのは……。
ちなみに愛莉にここまで言われるのにはちゃんと理由がある。
つい先日火曜日辺りの出来事で、雨が降った日に僕と愛莉が相合傘をしていたところ、愛莉の肩が少し傘から出てらしく、雨に濡れて片方だけ制服……というよりその下のキャミソールまで透けて、ピンクのアレが見えていたことがあった。
しかし、その時の僕は自分の煩悩に勝てずその光景をお楽しみしてしまったのだが、結局バレてしまい、それからは愛莉に完全な変態だと思われてしまった。
まぁあんなエッチな本を書いてる時点で、世間一般からしたら変態なのだが、どうやら愛莉はあれは仕事であって僕が心から望んでいることではないから変態じゃない……と、思ってくれていたらしいがその時完全にソレが崩れた。
まぁ……あとは。
僕は壁にかけられているカレンダーを見る。
カレンダーには三日後のところに花丸マークが付いている。
これは愛莉のママさんの退院日だ。
長い間頑張っていた愛莉の肩の荷が降りたから前とは違って開放的になったんだろうなって。
僕はそれが少し嬉しかった。もちろん前の愛莉も好きだったけれど、今の愛莉はとっても輝いて見えるのだ。
それはまるで前に話したこれから始まるゴールデンタイムを嬉しそうに待ちわびているようで……。
「うぅ……お二人を見ていたら私まで脱ぎたくなるじゃないですか……」
「えっ? 二人?」
「はい」
「今脱いでるのは紗々ちゃんだけだよね?」
「それが困ったことに天海さんも……」
「なん……だと……」
てことはあれか? 今僕の後ろでは幼女二人がキャミソール姿になっているのか?
「愛莉さんも脱いでみてはいかがですか? 意外と開放的で涼しいですよ♪」
僕の顔を抑える愛莉に天海さんによる悪魔の
さっきから二人の涼しそうな姿を見て、限界になっていたのだろう。
「うぅ……背に腹変えられないですね……あ、でも拓海さんはこっち向かないでくださいねっ!」
「わかってるわかってる」
「……じゃあ失礼して」
愛莉の手が頭から離れる。
すると、布の擦れる音や床に落ちた音が聞こえる。
……というか僕は事故とはいえ、一度愛莉の裸体を見ているのに、今更キャミソールくらいで恥ずかしがられるものなのか?
うーん。女の子ってわからない。
「はふぅ……確かに少し涼しく感じますね……」
「でしょでしょ!」
愛莉も脱ぎ終わったのか、後ろで少しだらしない声が聞こえてきた。
それと同時に花のような甘い香りがこちらにも…………。
しかし、あれだな。後ろにパラダイスがあるというのに見られないってのはなかなかの拷問だ。
「ねえねえ、お兄ちゃん」
「ん? どうしたの?」
「この中で誰のキャミソールが一番可愛いかな?」
「そりゃ誰って……」
僕は紗々ちゃんの声に導かれ、思わず振り返ってしまった。
「あっ……」
しかし気付いた時には既に遅く、僕の脳内に目の前の光景が一人一人フォルダ分け出来るくらいしっかりと保存されてしまった。
ピンク色のキャミソールを着ている紗々ちゃんを始め、水色のキャミの天海さん、そして純白のキャミの愛莉…………って、あれ?
「あっ、ああ……」
パッと見や遠くにいる時は決して気付くことはないが、愛莉のすぐ近くにいる僕にはわかる。
愛莉の純白のキャミソールが汗で肌にぴったり引っ付いてそれだけでエロいというのに、その上透けているではないかっ!!
二つのピンク色の突起がしっかりと見えているのだ!
「あ、ああああ愛莉……」
「ふぇっ?」
僕は愛理の胸元を指差す。
一瞬何のことかわからなかった愛莉がクエスチョンマークを頭の上に浮かべるが、自体を把握した瞬間、見る見るうちに顔が赤くなっていく。
「た、拓海さん見ないでくださいっ!」
「ご、ごめんっ!」
すぐさま後ろを向く。
が、脳内にはしっかりとそりゃコンマ一秒単位で愛理の赤面していくところと共にばっちり保存されている。
これが赤面し始めの愛莉。こっちが赤面しきって胸を隠そうとしている愛莉。それでもってこっちが僕が後ろを向く際に少し涙目になっていた愛莉。
「? どうしたのお兄ちゃん?」
「な、なんでもないよ?」
「ですが愛莉さんも顔を真っ赤にして涙目になってますし……」
「なんでもないよ?」
『…………』
「なんでもないよ?」
「わ、わかりました」
ふぅ、ゴリ押しだけどなんとかなったかな?
それから愛莉が落ち着くのを待ち、みんなが再び上を着たころ僕のスマホに通知が届く。
画面を見ると、cocoaのグループトークで柿本達が最近出来た方の市民プールに行くけどどうするか? というのを聞いてきた。
「ふむ、プールか……」
僕は顎に手を当て、考える仕草をする。
もちろん僕はプールを断ったが、あくまでもそれは柿本達とのプールを断っただけで…………。
「よし、プールに行こう!」
僕は三人のロリに向かってそう宣言した。
みんなプールなんてめんどくさがると思ったが、やっぱり暑い日には……と言って意外にもすぐに行くことに決まった。
そんなこんなで一時間にはみんなお待たせプールにやって来ました。
無論、ここには柿本達はいない。柿本達が行ったのはしおり市にある市民プールで、今僕達が来ているのは隣の市……
受け付けを済まし、僕達はそれぞれの更衣室で着替える。
もちろん、着替えは男の僕が一番早く終わるのだが……。
「遅いなぁ……」
別れてから既に10分近く経過している。
なのに女性陣は誰一人として姿を見せていない。
「しかし流石に見に行くのはなぁ」
僕だって健全な思春期男子ですから、女子更衣室ってのに憧れはある。
しかし、いくら心配だったからと言って突撃するのはまずい。
何がまずいのか……それは完全に捕まるのは大前提として、そこにいるのがロリだけとは限らないことだ!!
それにいくら隠れスポット市民プールでも人はいる。
つまりロリコンの僕にとって余りよろしくない人達がいるかもしれないわけで…………。
「あれ、湊君じゃない?」
そうそう、例えば今こちらに駆け寄ってきているオレンジのビキニを着ている柿本とか…………ん?
「か、柿本っ!!?」
僕は思わず二、三歩下がってしまう。
ど、どうして柿本がここにっ!? あいつは充達としおり市の市民プールに行ったはず……。
「おーい、柿本〜いつまで着替えに時間かけて……って拓海っ!?」
あぁ……もう一人厄介なのが来てしまった。
僕達の元へと駆け寄ってきたのは言わずもがな僕の親友の
この二人……と言うより基本的に学校の関係者には愛莉達のことは知られたくない。
とにかくここから一旦離れるために何か適当に言いくるめなくては。
「よ、よぅ柿本に充……偶然だな」
「おう、そうだな」
「うん♪ 凄い偶然だね、もしかしたら運命の赤い糸にでも結ばれているのかな?」
「あはは冗談はよしてくれよ」
「湊君ってば相変わらずだねぇ……こんなスタイルのいい女の子が運命の赤い糸って言ってるのにそれを問答無用で断ち切るなんて」
そう言いながら柿本はその大きな二つのメロンを揺らす。
当たり前だけど、横を通り過ぎる男の視線を釘付けにするほどの魅力は持ち合わせている。
「はいはいナイスボディですねっと。それで、二人ともどうしてここに?」
「私の扱い酷すぎない!?」
「拓海、それはちょっとした事情があってな……簡単に言うとあっちのプールは人が多すぎた……」
「あぁ」
納得。あっちのプールは最近改修工事が終わってほとんど全部が新品になっている。
そのため客のほとんどはそっちに持っていかれるわけで。
「でもロリはあっちの方がいるだろう?」
「うん、俺もそう思ったんだが……」
そう言って充は柿本の方を見る。
「だってぇ、いくらロリロリっ子のためとはいえプールに来てまで暑い思いしたくないんだもん」
「まぁ、ごもっとも?」
「てな感じでここになったんだ」
なるほどな、確かにプールに来たのなら芋洗い状態ではなく、もっと伸び伸びしたいもんな。
「それで、拓海はどうしてここに? 俺達の誘いを断ったのだからてっきり家にいるかと」
「ぎくっ!?」
やばい。話題がこちらに飛んできた。
「うんうん、確かにそれ気になる。湊君が泳ぎが苦手で私たちに見られたくなかった……ってのはないだろうし」
「タマニハヒトリデキタカッタンダヨ」
「うわっ、すごい棒読み……ひょっとしてコレ、なのかな〜?」
そう言って柿本はイタズラな笑みを浮かべながら小指を突き出す。
「なっ、拓海! お前マジかよ!? お前がロリ以外に興味を示すなんて……嘘だと言ってくれよ!!」
「お、落ち着け充……わかったから揺らすな……脳が、脳が揺れるううううううう」
「……うぅ、酷い目にあった……」
あの後、なんとか充達を説得した僕は気が付くと充達から逃げるようにプールの奥へと移動していた。
一応こちらの市民プールも最近改装したのだが、しおり市の方が大々的に取り上げられたせいでこっちの方の客足はそこまでなのだ。
まぁだからこそこっちに来てるのもあるけれど。
「まぁそろそろいい頃だろうし戻るか────あれ?」
踵を返そうとしたその時だった、僕の視界の隅にチラリと流水プールを流れる少女の姿が映った。
ただその少女の動きはどこか不自然で、手足をばたつかせているようにも…………。
と、その時少女と目が合う。少女は力なくこちらを見つめ、
「た…………てっ」
「?」
「たっ、すけ……って」
「まさか!?」
僕は軽く腕と足を伸ばすと、そのまま流水プールに飛び込み、少女の元へと泳ぐ。
しかし、そのプールは意外にも深く流れも早いため中々追いつけない。
「くっ……もう、少し……」
暴れる少女へと手を伸ばす。
もう少しなのだが、波のせいでその少しがとても遠い。
そこで僕は一旦潜り、そのまま一気に距離を詰める。
「──ぷはっ!! 助けて、助けて助けてくださいー!」
僕は暴れる少女を下から抱き抱えるように捕まえる。
──ふにゅ。
「ん?」
直後何か柔らかいものが顔に…………って、これはこの子のおっぱ!
「怖い、怖いですよぉ〜!」
「〜〜〜ッ!!」
少女の胸の感触が更に強くなる。
というか顔を正面に頭をしっかりと抱きしめられてるせいで、少女のふわふわもちもちの大きなおっぱいが僕の顔を包んで…………息が出来ないっ!!!
「むごごごっ!! むご!!」
「ひゃうんっ! しゃ、喋らないでぇ……力抜けて落ちちゃ……うぅ!」
「…………」
やばい、これ、僕の方がダメかも。
おっぱいに包まれて死ぬとか男にとってはこれ以上にない至福の死に方だが、生憎僕はちっぱい派で愛莉という恋人もいるわけで。
「むごご、むごごごごごっ!!」
「ひゃう〜っ! だから、くすぐった……ぁん!」
何やら頭の方から少女の甘い声が聞こえてくるけど、そんなことを気にしている場合では無い!
少女のおっぱいを一秒でも長く感じていた──じゃなくて、一刻も早く少女と僕をプールサイドにあげなければ!
少女の前に僕が死んでしまう!!
これが世の中の男性の半分近くが望んでいる死に方(僕調べ)だと思うとなんとも言えないな。
僕はそんな望まぬラッキーを感じつつ、そのままプールサイドの方へと泳ぐ。
こういった時、昔店長に鍛えてもらってよかったとつくづく思う。
だってこの流水プールの勢いが意外と強いんだもの。
「はぁ……はぁ……たすかり……まし、けほっけほっ」
僕はそのまま少女をプールサイドに下ろすと、少女は流れている途中で水を飲んでしまったのか、咳き込んでいた。
「けほっ、けほっ」
「ちょっと待ってね、確かここら辺に…………ちょっと失礼して、えいっ!」
「けほっ! けほっ!」
僕は店長直伝のツボを押すと少女は激しく咳き込む。
しかし、それと同時に飲んでしまった水が身体の外へと出ていった。
「あ、ありがとう……ございます」
「ううん。それより大丈夫?」
「はい、貴方が不思議なところを押してくださったので……けほっ」
少女はまだ少し辛そうに地べたに座り込んでいるが、どうやらこれ以上僕が何かすることもなさそうだ。
しかし、こうして見ると……この子かなりスタイルがいいな。
座っていてもわかる腰のライン、すっと伸びた細い手足に白い肌、身体からして大人な顔つきに近いはずなのにどこか幼さが残る顔、そして何よりも大きな二つのメロン。
愛莉のママさんの影響で巨乳の良さを知ってしまった僕は少しクラっとしてしまうほどだ。
「あっ」
僕は慌てて目を逸らす。
恐らく僕の顔があそこに当たっていたからであろう、少女の着ていた白い水着のヒモが解けかけていた。
しかし直接伝えるのも……まあ無難にこれでいいか。
「あちゃー、あのプールの水の流れが速すぎるせいか水着の紐が緩んじゃったよ……あ、君ちょっと紐直すけどごめんね。君も一応確認した方がいいと思うよ、僕の結構キツく縛ったのにコレだから、あはは……」
僕はそう言って紐を締め直す動きを見せる。もちろん、僕はしっかりと縛ったから緩むことなんてないのだが、それはそれ。
少女は自分の水着が乱れている事に気付いたのか、
「あの……すみません。私も少し直したいので……」
「うん、わかった。僕はこっち向いてるから」
「ありがとうございます」
そう言って僕はそのまま少女を背にしたまま動かずに待機。
ここで事故を装って後ろを向くなんて事はもちろんしない。
だって、紳士だもの。たくみ。
「あの、もう大丈夫です」
「ん」
少女の言葉に僕は念のため少しずつ振り返る。
そこにいたのは先程までの弱々しく座り込んでいる姿ではなく、キリっとした少女が立っていた。
しかし、その頬はほんのり赤く水着が乱れていたことが恥ずかしかったのだろう。
少女はそれを隠すように一つ咳払いをする。
「こほん、えぇと……助けていただいてありがとうございます。私は
「僕は湊拓海。よろしく村井さん」
「はい。こちらこそよろしくお願いします湊さん……いいえ、私の命の恩人ですからそんな呼び方では失礼ですね……では、主様とお呼びしましょう♪」
「あ、主様!?」
この子は屈託のない笑顔で何を言っているんだ!?
すると、村井さんは可笑しそうに笑う。
「ふふふっ、冗談ですよ♪」
「なんだ冗談か……あまりびっくりさせないでくれ」
「お兄様と、呼ばせてもらいますね♪」
それもあまり変わらないような気がしたが、まぁその時のこの子の太陽のような笑顔の前には首を縦に振る以外の選択肢などなかった。
「んー、でも私としても流石に恩人の人に何もしないってわけにはいかないので……」
「いやいや、お礼は既に受け取ってるよ」
「既に?」
「うん、キミのその笑顔だけで十分すぎるほどのお礼だよ」
「まぁ、口がお上手なんですね」
軽く流された。うーん、笑顔が素敵なのは本当なんだけどなぁ。
「しかしですね、私としても引下がることは出来ないので、そうですね…………」
「村井、さん?」
そこまで言って、何故か村井さんは顔を赤らめもじもじし始める。
「そ、その、お兄様は女の子の身体に興味はありませんか?」
「……は?」
「ですから、女の子の身体ですよ女の子のカ・ラ・ダです♪」
「言っている意味が──うわっ!」
僕は言葉を言い切る前に村井さんによって押し倒される。
ベッドとか下が柔らかい場所ならいいけどプールでこれをやるのはたいへん危険です。
何故なら下が固いからマジで痛い。
「うっ……む、村井、さん?」
痛みを我慢しつつ、僕の上で馬乗りになっている少女へと視線を移す。
「もぅ、お兄様って意外と鈍感なんですか? それともわかってて私に言わせようとしているんですか?」
そう言ってる少女の顔はほんのり赤く、ローアングルから見る大きなメロンに、メロンの間の素晴らしき三角形エリア……そして何よりも僕の股間の上に伝わる暖かく柔らかい…………ん? 僕の、股間の上!!?
そこで事の重大さを再び理解する。
「き、ききき君どこに座っているんだ!?」
「どこって……貴方の大きくて立派な……ア・レの上ですよお兄様♪」
「……君、ひょっとして恥ずかしがってる?」
「──っ!」
あぁ図星だ。さっきから下ネタを言う度に頬を染めていたからそうじゃないかと思ったんだけど…………というか恥ずかしいなら言わなければいいんじゃないですかね!?
と、心の中でツッコミを入れたけど、それを口に出すのも気が引けるので心の中だけにしておいた。
「で、その恥ずかしいのならどいてもらえると助かるんだけど」
「いえ、恥ずかしくなんてありまへんよ? こ、こんな事周りの子はみんなやってる事なので??」
「でも顔は真っ赤だよね?」
「こ、これは……そう! メ、メイクです! メイクで赤く見えるだけで決して恥ずかしいというわけではありませんからっ!」
そうは言うものの、さっきまで顔までプールに浸っていた(溺れていた)のを知っているからその嘘はむしろ微笑ましく思えてしまう。
「あっ、頬が緩んでます! ほ、本当にメイクですからね!」
「うん大丈夫メイクだってわかってるから」
「む〜それならどうしてニヤニヤひているんですか〜っ!」
「よっと!」
結局あの後は、特に何も起こらず少女はそのまま僕の上から降りた。
「それでお兄様。明日、予定とか入っていらっしゃいますか?」
「明日? 明日は……特に何も無いけど」
「では、明日しおり女子学園の前でまた会いませんか?」
僕がそう言うと、少女は僕の手を握り満開の笑顔を見せる。
「しおり女子学園?」
しおり女子学園。
それはしおり市にある日本でも数少ない女学園で、俗に言うお嬢様学校だ。
僕達庶民ではその存在は知っていても、場所は絶対にわからないそんなような所だ。
しおり女子学園には初等部と中等部があるらしく、この子の見た目からしたら恐らく中等部なのだが……。
「それは嬉しいけれど、男の僕が君の判断で勝手に入っていいのかな?」
「はい、恐らく大丈夫かと。私これでも総生徒会長を務めているので。それに、一般市民がこの学校に入るのはこれで二度目となるので」
しれっとすごいことを言うなこの子は。
……って、二度目?
「それじゃあ明日、しおり女子学園の前で♪ 場所はそうですね……朝武さんかそのメイドさんにでも聞いてみてはいかがでしょう? ではっ!」
「あ、ちょっと……」
村井さんは僕の呼びかけには答えてくれず、そのままどこかに走り去ってしまった。
……元気になったのはいいけれど、いきなり走っても大丈夫なのだろうか?
「……まぁ大丈夫か。っと、それよりも」
僕も村井さんとは反対側……更衣室の方へと走り出す。
いくら女の子の着替えが遅いって言っても流石にもう来てるよなぁ…………。
足元に注意しつつ、全力で駆け出す。
「……しかし、僕と愛莉の関係は一切語ってないはずなのにどうして彼女は僕と愛莉が繋がっているって知っているんだろうか」
そんな疑問を抱きながら……。
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