第3話 兄という存在 決着
私は、彼の産まれた1年後に産まれた。
歳が近く、あまり兄弟として見てはいなかったが、なぜか
「お兄ちゃん」
と呼ぶようになっていた。
私は彼のことが好きだ。
好きと言っても、一般的な妹が兄に向ける好意ではなく、簡単に言うとLikeではなくLoveなのだ。
それをブラコンと呼ぶことも、変だという事も分かっているし、実らないという事も分かっている。
兄は端正な顔立ちをしており、黒間でさえなければアイドルにでもなっていたのではないかというくらいである。
また兄の幼馴染である一果ちゃんも、綺麗で可愛らしい顔をしていて、体つきも女の子らしく、男子から言い寄られることは日常茶飯事だ。
しかし一果ちゃんは、兄に私と同じ感情を向けている。
兄と同じくらいから一果ちゃんを見ている私は姉のように思っており、一果ちゃんと兄がくっつくなら不満も何もない。
きっと兄は、ずっと自分と一緒にいてくれるだろう。
まぁ幸い兄はそっちには疎く、兄に言い寄る女の子たちはみんな酷く玉砕していた。(きっと兄は知らずにしている)
けれど、兄は私や一果ちゃん、兄の友達を守る為にどんどん闇に1人で向かって行く。
圧倒的な強さを既に兄は手にしていたが、それは黒間一族の血があるからだと、慢心することなく更に上を目指して鍛錬を続けた。
細マッチョという感じの体に端正な顔立ちをしていれば、やはり女の子たちは兄を見るときに頬を染める。
一果ちゃんはいつもそれを見て焦っているが、やはり兄は何も気付いていない。
これ以上兄が遠くへ行ってしまえば、結局離れ離れになってしまう。
私は兄が居なければ、もう生きていいけないというくらいに愛しているのに、やはり兄はそっちは疎い。
「黒間一族がなぜ黒間と呼ばれるか分かるか?」
黒いオーラを纏った大三郎が聞いてくる。
「黒い悪魔、黒魔からきている。黒間は最強だ。貴様ごときが勝てる一族ではない。」
言い放った瞬間、大三郎は俺に向かって鋭い火の矢を放った。
「火微矢…。」
その矢を寸前で避けた俺は空中で一度体を捻り、大三郎に向かって火を噴いた。
青眼のおかげか、噴かれる火は大きい。
しかし大三郎が
「火壁!」
と言って噴いた炎が盾となり、俺の噴いた火は届かなかった。
「火を噴いただけで一流の黒間だと思うなよ…。火を変化させ、様々な使い方をし、攻撃力を上げ、防御力を上げ、そして常に火を絶やさぬのが黒間だ。青眼が出たから勝てると思ったか?まだ若いな、弾。」
一流の黒間になど俺はならねえ…と心で呟きながら、俺は大三郎が言うように火を変化させることを考えていた。
「遅い!」
大三郎が俺を殴りつける。
ドガンという音と共に俺は地にめり込んだ。
「痛ってぇ…。」
痛みはあったが、青眼のおかげかダメージも少なく済んだようで、かなりマシだった。
俺は試しに火を手から出し、それを握って拳を燃やし、
「火拳!」
と叫んで大三郎に殴りかかった。
避けられたが、寸前で俺が手に出していた火の量を増やした為に大三郎の頬を赤い鎌鼬が襲い、切れて血が垂れてきた。
「なるほどな…。」
赤い鎌鼬を技にすれば威力が上がると咄嗟に判断した俺は
「鎌火!」
と叫んで火拳の要領で今度は手刀に切り替え、大三郎の間近から襲った。
鎌火は見事に命中し、急所を切り裂き、傷口を焼く火のおかげで、大三郎は瀕死の状態となった。
「やはり黒間だな…。弾よ…。お前は後継者としてふさわしい…。」
と蚊の鳴くような声で呟いた大三郎を睨みつけながら俺は
「俺は黒間などという一族では収まり切る気はない。俺は明王だ。この名を全国へ馳せ、必ずお前らを馬鹿にしてやる。せいぜいあの世でその光景を見てるといい。……。両親を殺し…真希や一果たちに迷惑をかけた報いだ…。」
大三郎は納得したように目を瞑り
「お前は今のままでは必ず不幸になる…。例え妹たちを救っても、儂にすぐ会えるかもな…。」
と言い、ハハッと笑った。
「俺は今日から鬼になる。…鬼に幸せは似合わない…。ただ俺は必ず明王として有名になり、真希を黒間というしがらみから抜け出させ、俺の周りの人間皆を幸せにする…。その為になら俺はすぐお前と会ったっていい…。俺は…鬼だからな…。」
と俺が小さな声で答えたときにはもう既に大三郎は絶命していた。
30人ほどの死体と、血の海の上に黙って立つ俺は自分の血や他人の血で真っ赤に染まっており、まさに鬼という感じだった。
中三の夏休み前に俺は一族を滅ぼし、一体の鬼となった。
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