第2話 黒間と鳳

俺が小3の時に、真希の件で暴れた際、校長に俺はまた後で呼び出された。


「君には、やはり黒間一族と時に鳳一族との因縁をもう話しておいた方がいいかもしれないね。」


校長は優しくそう言って、青眼を持つ俺に語り始めた。


「昔ね、本当にあったかもわからないおとぎ話の時代暗い昔、君の先祖である黒間一族は、火を司る一族として有名だったんだ。」


「他の一族も何かしらの能力は使えたんだろ?」


幼い声をした俺は生意気に口答えをしていたのを虚ろに覚えている。


「あぁ、他にも水や、雷や、風や、草花さえも司る一族もいた。他に火を司る一族もいたんだ。けどね、黒間一族の使う火は格別だった。それに戦闘技術にも長けており、能力を使うタイミングも、力もあった。だから黒間一族は当時から最強の一族と呼ばれていたんだ。」


黒間を嫌う俺はまともに聞く気なんてさらさら無かっただろう。


「けれど、もう一つ、格段に強い、しかも火を司る一族があったんだ。それが鳳一族だ。黒間一族と鳳一族は次第に敵となり、ライバルとなり、戦争までしていた。だが当時の黒間一族の当主だった黒間阿修羅が、鳳一族きっての天才と呼ばれた鳳輝と和解し、争いは終結したかに見えた。だが2人が亡くなり時代が変わると、また一族たちは敵対し、今に至るんだ。」


まるで他人事のように話していた校長も、どこか俺を心配するような目で見ていた。


「…ねぇ、弾くん。君はあまり自分の一族に良い印象を持っていないようだけど、その眼がある限り運命に翻弄させることになるだろう。でもね、その眼をかつて持っていた阿修羅は人間的にも強かったんだ。仲間を思い、仲間の為に生き、敵である鳳輝を許す強い心を持っていた。君は普通の黒間一族ではない、特別な、英雄黒間なんだ。それを忘れないでくださいね。」


うっすらと瞳に涙を浮かべながら、校長は語り終えた。







周囲から火が迫る。


逃げ場と言えば上しかないが、上へ飛べばきっと準備をしていた黒間の者にやられてしまう。


となれば、下しかない。


俺は拳に精一杯の力を込め、地面を殴った。

瓦礫が飛び散り、周りの人間は防御の体制に入った。


その隙に上へ飛び、火を回避すると3人ほどの顔を全力で殴り、後ろへ下がった。


その時だった。


下がった瞬間に他の黒間のものが俺を羽交い締めし、殴った奴らや火を噴いていた奴らが一斉に俺に殴りかかってきた。


なす術もなく、ただただ殴られていたが、次に誰かが言った、


「火銃!」


の声とともにボッ!という音を立て、俺の足、太ももの部分を焼いた。


あまりの痛さに声をあげようかと思ったその時、目が異常に痛くなり、次第にそれは熱さへと変わった。


「…おい、…まさか、開眼しちまったんじゃねえだろうな…青眼…。」


誰かそう言ったので不思議に思い窓を見ると、自分の両目が青く光り輝いているのが目に入った。


そうか、これが青眼か…


力が溢れる気がしていた俺は、試しに息を吹く感じでふぅーっと吹いてみた。


すると俺の口から、


ブゥおおおおオゥゥ!


という音を立てて物凄い火が出てきた。


「やっと…やっと火が噴けた。」


感傷に浸る俺はやはり力が溢れ、素早くうごける自信も出てきた。


大三郎が


「まずいことになったな…。」


と呟いたことなど俺は気付かず、ただ本能のままに一族の者を殴り、蹴り、傷めつけ、挙句火を噴いてと暴れまくっていた。


「ウオォオォー!」


と叫びながら眼を青く光らせ、暴れまくっていた俺が我に返った時にはもう一面が血の海で、周りには一族の死体が転がっていた。


青眼のおかげで格段に上がった戦闘能力を持つ俺には、黒間一族が束になって襲いかかっても叶わなかったようだ。


「ハァ…ハァ…ハァ…」


息を切らしながら俺は青く光る眼で大三郎を睨みつけた。


「儂はとんでもない誤算をしていたようだ…。まさか…青眼がここまでとは…。」


焦った様子の大三郎を見た俺は心が躍っていた。



今まで余裕をかましていた奴を、人の親を殺した人でなしを、妹や自分に悪しき運命を背負わせた憎き一族を。



今やっと、やっと滅ぼすことが出来る。



俺は興奮に顔も緩みきっていただろう。



「おい…ジジイ。テメェは絶対に殺す。…俺たち一家の…恨みを…罪を無理矢理にでも償わせてやる!」


すっかり青眼を信じきった俺はもうこの老いぼれを殺すだけだと考えていた。


黒間一族の当主である事を、すっかりと忘れていた。


「興奮すると…判断力が著しく低下するようだな、弾よ。流石は明王、といったところだが、儂も黒間現当主なのだ。青眼の価値、定させてもらうぞ。」


そう言って異質なオーラを纏いながら、大三郎は俺に襲いかかってきた。

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