第8話

 夢を見た。綺麗に切り揃えられた私の髪を見て、座敷童子のようだとからかう男の子たち。泣くだけの私。そんなとき、アカネちゃんが走ってきて、彼らを蹴散らした。

「大丈夫?」

 そう言って私の涙を拭ってくれる彼女。これが初めての会話だった。このときにはすでにお隣さんだったにも関わらず、私はいつも彼女から隠れるようにして接触を避けていた。両親からなにか言われていたわけではない。ただ、彼女が住んでいた今にも崩れそうな家が怖くて、そこに住んでいる家族はみんな幽霊かなにかなのではと思っていたのだ。ガラスが割れる音。怒声。悲鳴。泣き声。そんななかにいても、アカネちゃんはいつも幼稚園では笑っていた。そのときの私も、きっとその笑顔に助けられたのだ。

「こんなに可愛い子、いままで見たことない」

 そう言って私に微笑みかけるアカネちゃん。まるでお姉さんのよう。このときから、私にとって彼女は幽霊などではなく、ひとりの女の子になったのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る