第11話 秘密


「お姉ちゃん!」

少し寂れた小さな小屋にその2人は住んでいた。

「はいはい待っててねー」

そう言いながら私は朝ごはんをお皿に盛る。

今日のご飯はパンだ。

「やったー!パンだ!」

そのパンを見た途端、その子は飛びついてきた。

「本当にパンが好きなんだね」

「うん!」

この無邪気な子はシックス。

こう見えてても、この世界では同年齢だ。

あの日出会ってから私達は一緒に暮らしている。

「おいしーい!」

最近はこの様な朝が続いている。まるで本当の姉弟の様だ。

美味しそうにパンを食べているシックスを見ながら、今日こそはと決心する。

「ねぇ1つ聞いてもいい?」

「何?」

シックスは不思議そうな顔で私を見る。




「シックスは・・なんで死んだの?」




少し気まずい空気が流れる。

誰にだって知られたくない過去はあるだろう。

それが増して自分の死に際なんて・・・・

「僕が死んだ理由?」


「いいよ話してあげる」

案外呆気なく了承してくれた。

「いいの?」

私は少し戸惑う、自分ならこの場合話さないかもしれない。

「うん!」

シックスは微笑みながら


「だってお姉ちゃんは家族だから!」


家族・・家族か・・

どうやら私達はすっかり本物の姉弟になっていたらしい。


「僕は・・・・」






僕は今病院のベットの上にいる。

もうここ何日も寝たきりで、歩き方さえも忘れてしまった。

お父さんとお母さんは毎日僕の所へ来てくれるから、寂しくはないけどその顔はとても悲しそうな顔だ。

僕は病気らしい。

それも凄く重い病気。

なんて言う名前の病気かは知らないけど、このままだと僕は死んでしまうらしい。

死ぬのは嫌だな。

だって死んだらもうお母さんやお父さんとおしゃべりができないもん。

「なんであの子が・・・・あの子はまだ4つなのに・・・・」

まただ。

いつも扉越しからお母さんの悲しそうな声が聞こえてくる。

僕は笑っていてほしいのに。






今日もお母さんとお父さんが来た。

今日はいつもと違い少し明るめな表情だった。


「ねぇ聞いて。その病気が治るかもしれないの」


病気が治る?それはとても嬉しいことだ。

でも、そんなことならもっと明るく言ってくれてもいいのに。

「でもその為にはね・・手術を受けないといけないの」

なんだそう言う事か。

そんな事聞くまでも無いのに。

「とても苦しくて怖いけど、その手術受けれる・・?」

「うん!大丈夫!」

もちろんだ。

この病気が治り、またお母さんやお父さんと一緒に楽しく遊べるなら、僕はなんでもする。そう決めたのだ。

「そう・・」

「手術は4月8日の深夜から始まるから頑張ってね」

「うん!」

そうだ。僕はまた自分の家で家族一緒に楽しく暮らすのだ。






手術の日が来た。

待っててねお母さん、お父さん、もう少しでまた楽しく暮らせるからね。

僕を乗せた車輪付のベットが手術室に入る。

「麻酔」

手術が始まり麻酔が打たれる。

だんだん眠くなってくる。

待っててね、起きたら元気になっているから。

だからまた遊ぼうね。







しかし目覚めた所は病院のベットの上では無く、雲の上の様な場所だった。








リビングに気まずい空気が流れる。

そうか、シックスの幼い口調や行動は死んだ年齢がまだ4歳だったからか。

それにしても悲し過ぎる。

死因が手術の失敗なんて。

「だから僕はもう一度お母さんやお父さんと遊びたいんだ」

シックスの顔が引き締まる。




「だから僕はこのゲームに勝つ」




その顔には決して消えることの無い決意の色が宿っていた。

「お姉ちゃんはなんで生き返りたいの?」

生き返る理由か・・

こんな話聞いてしまったら・・・・






「ごめん。まだ内緒」






答えられないじゃないか。

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