第10話 メール


目が覚める。


カーテンの隙間から入ってくる光を見て朝だと思う。

1人で寝るには勿体ないツインベットから降りる。

部屋に置かれた着替えに着替える。

部屋の扉を開け外に出る。




「おはようございます。国王陛下」




城の使い達が挨拶をする。

「おはようございます、スリー国王陛下。今朝は晴れていて良い朝ですね」

そう言いながら俺の前に出て来た男はと言うと、俺の騎士ソフェルだ。

俺が国王に即位してから1年。実質、国王に即位の発表はあの日から少し後に行ったので、記録上はまだ1年ではない。

その事情を知る者も城の中でさえ限られてくる。

あれから俺はまず、召使いだったソフェルを専属の騎士に任命した。

ソフェルは俺に絶大な忠義を捧げており、1年前も2つ返事で偽物の王を演じた。

剣や魔法の技術も申し分無いと判断し騎士に任命した。

そしてこの1年俺が力を入れやって来たことは・・・・




軍事強化だ。




兵士の訓練も以前よりも厳しくし、技術のある者には新兵器を作らせ、力のある者はどんな事情があろうと兵士にしてきた。

国民達にはいつか必ず再開する戦争に備えてと言ってある。

勿論それは建前だ。

俺には国民全てを使える権力がある。

それを大いに使いこのゲームを勝ち抜くのだ。




そして・・・・




スリーは青空を見上げ、現実世界で自分よりも先に旅だった息子の姿を思い浮かべる。










「どう言う事ですか!手術失敗て!」




隣から妻の怒鳴り声が聞こえる。

見ると妻が医者の胸ぐらを掴みながら怒鳴っていた。

普段なら止めに入るが、今はそんな気分ではない。

嫌・・むしろもっとやれと言う気分だ。




ー息子が死んだ。




今年4歳になる息子だ。

パンが好きで、少し泣き虫の男の子だった。

去年の冬、ある病気を発症した息子は入院を余儀なくされた。

なんの病気かは覚えてないが、命に関わる大きな病気らしい。

医者は手術を勧めて来た。

少し高額だが、失敗はしないと言う。

私はその手術をしてもらう事にした。

そして、色々な治療が試された後4月8日の深夜、手術が始まった。

手術は日をまたぐ大手術となった。

そして手術が終わったのが4月9日午前2時頃。

「息子はどうですか!」

医師は失敗しないと言った。

だから私達は心の何処かで大丈夫と思っていたのだろう。


しかし、出てきた医者は首を横に振った。




こうして今の状況に至る。

「いいよママ、今日は一度帰ろう」

「どうしてっ!!」

妻が反論する。

「帰りたいんだ・・・・」

何もしたくなかった。

酷い消失感に襲われた私は、自分の家に帰りたかった。

「そう・・ね・・」

その意思を読み取ってくれたのか、妻が反論してこない。




家に帰り、私はひたすら下を向いて息子の死を受け入れようとしていた。

しかし受け入れられず、時間だけが過ぎていく。

そして、午後2時頃




ピロリン




一通のメールがきた。


そのメールの内容を見て私は目を疑った。

そして同時に表しようのない怒りがこみ上げてくる。

私はすぐにメールに書かれていた待ち合わせ場所にトラックで向かう。

怒りと復讐に燃えていた私は、家から1時間ほど走った場所で・・




ー事故死した。








「フォー隊長!いよいよですね!」

同士が話しかけてくる。

「あぁ・・いよいよだ」

「遂にやってくるんですね。あの憎っくき王を殺す日が・・」

同士が嬉しそうに言う。

さぁ時間だ。

腰を上げ、沢山の同士達の前に立つ。

「同士達よ!準備は整った!」

同士達が一斉にこちらを見る。

そして少し間を開け・・




「革命の始まりだ!!!」




そうフォーは、同士と呼ぶスラムの住人達に言った。

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