第5話 天と地


水ノ国。そこはアミヤ大陸では珍しい、温泉が出る国。

しかし国王の屋敷の敷地内に湧き出てしまっているので、普通は一般人は使用できない。

しかし今日はと言うと、いつも王族しかいない温泉が国民で溢れかえっている。

女、子供、皆とても嬉しそうな表情が見られる。

今日2028年4月10日は現国王の息子であり、神の子と呼ばれる黒髪黒目の少年、アンタレス・スリーの10歳の誕生日である。

そのパーティーと言う事で温泉が一般開放されている。


「偉大なる水ノ国の者達よ!!」


国王の演説が始まる。

浮かれていた国民達が一斉に静まり王の方向を向く。

「今日は皆集まってくれ感謝する。早速今日の主役に登場して貰おう!」

国王がそう言うと国王の後ろの扉が開く。

中から少年が出てくる。

姿が見えるとすぐさま歓声が湧く。


「スリー王子バンザーイ!!」


スリーは国王の隣に立つと手を上げる。

その瞬間国民が静まる。少し間を開け王子が話し出す。


「今日は僕の誕生日パーティーに来てくれて感謝します!皆さん存分に楽しんでいって下さい!」


「スリー王子バンザーイ!!」


王子の合図が終わると再び歓声を上げる国民達。

「次にスリーの誕生日の贈り物を聞こうと思う!スリー、何が欲しい?」

国王がそう聞くと、国民は再び静まる。

「僕専属の魔法騎士団が欲しいです!」

そうスリーは答える。

「よろしいならば明日にも騎士団を作り与えよう」

「ありがとうございます!」

スリーは嬉しそうに飛び跳ねる。

それを見た国民も嬉しそうに拍手をする。

そして2人が扉の中に入っていき、扉が閉まる。

すると国民達がまたはしゃぎ出す。

その音を聞いた2人は扉の中で安心した様に肩の力を抜く。

「ありがとう、ソフェル迫真の演技だったよ」

スリーは冠を被った王ではない男に言う。

「お褒めにあわさって光栄です王子。なんとかバレずに済みました」

ソフェルと呼ばれた男が頭下げながら言う。


「王子じゃなくて王だろ」


スリーはからかう様な口調で言う。

ソフェルはそう言われて、忘れていたという顔をする。

「失礼しました王」

そう、先程演説していたのは王では無かったのだ。

「亡くなった元国王の為にもがんばってください、王」

「わかってるよソフェル」

そうスリーの父はこの時点ですでに死んでいたのだ。

今朝5時ごろ奇声を発しながら死亡。

この事が今日発表となると、国民が不安がると思い今日の所は隠す事になった。

「しかし今日から俺が王か・・・・」

スリーが先程の演説とはまるで違う口調で喋る。


「これはこのゲーム勝ったな」


そうスリーは誰にも聞こえない様な声で微笑みながら言う。








水ノ国スラム街


この国は裕福な人と貧乏な人の差が激しくその差別も酷いものである。

そんな現状を王族は開国当時から無視し続けた為、現在この様な街が生まれた。

そんなスラム街で1人遠くから聞こえる王子の演説を聞く男がいた。

「自分専属の騎士団とはいい身分だなぁ王子」

微笑みながら男は演説が聞こえる方角に囁く。

「いや・・」

より一層男はニヤつき、


「スリー国王」


「俺がその座から引きずり落としてやるよ・・」

男は演説の聞こえる方向にブーイングを一回しながら言う。

「フォー?どこー?」

そう呼ぶ女の声が聞こえる。

「ここだ」

男が答える。

「あ!いたーみんな待ってるよーー」

「すまんすぐ行く」

男・・いやフォーはそう呼ばれ、瓦礫の山から腰を上げる。


「まぁなんにせよ勝つのは俺だ」


そう言いフォーは、瓦礫の山から地面に飛び降りる。

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