4話 凍えた日。
あれは、初雪が降った日。
俺はもう我慢ができなかった。この想いを告げよう、そう思い図書室に向かった。
いつもと同じように図書室の扉をガラガラと開く。——カウンターに居ながら外を見ている一瀬先輩。雪を見ているのだろう。
「一瀬先輩」
そう呼ぶと一瀬先輩は俺に気づいて居なかったのかびっくりした顔でこちらを振り返った。
「なんだ、宮内くんか。びっくりした」
「すみません」
「いやいやぼーっとしてたのが悪いしね」
どうしたの? いつもの笑みを浮かべ一瀬先輩は聞いてくる。
——言ってしまえ。
俺の気持ちがそう言った。
「一瀬先輩、好きです」
そう伝えた。
一瀬先輩はどう思うだろうか?なんて言ってくれるだろうか?
そんな自分のことだけを考えていた。
「ごめん。君の気持ちは受け取れない」
一瀬先輩の顔からスッと笑みが消えた。冷たい冷たい、目をしていた。凍えるような目。
君、と言われたことに拒絶を感じた。俺は何も言えなかった。その日、俺は「すみませんでした」とだけ言って図書室から去った。
そんな目をさせてしまいすみません、迷惑をかけてすみません、・・・俺の気持ちを伝えてすみません。いろんな意味を込めてのあの一言だった。
初雪が降った日は、とても寒かった。
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