私は死ねない

蘇来 斗武

第1話 ホームセンターがきらい

私は死にたい。今日は首を吊ろう。自宅にだれもいなければ、止められることもない。

死にたい理由なんて、この世界の全てに絶望した程度でいい。


首吊り自殺の仕方って確かこの間ドラマで観たっけ、椅子に乗って、ロープを首に引っかけて、椅子を倒す。

辺りを見回すとそれらしい椅子が一つだけある。普段使う机は低めなのでこの椅子は使えないが以前、窓際での読書のために購入した物だ。


よし、椅子をここに置いて······あっ、しまった。吊る道具がない。家にロープなんて無いし、仕方ない。買いに行こう。


ホームセンターに着いた私はロープを探す。私はお店で物を探すのがとても苦手だ。ごちゃごちゃしていて、どこに何があるか全く分からない。こんな身近な出来事に私はやはり絶望する。


やっと見つけた。上を見るとその通りに何が置いてあるか書いてあった。

文房具、工具、ペットフード······そんな物まで売ってたんだ、私よりペットとその飼い主に優しい世の中だ。そのとなりの通りにロープと書いてある。それを見つけたことに達成感を感じながら私はその通りに入る。


えっと、ロープ、ロープ······あれ?無い。ロープが無い!!

本来ロープが売っている場所にそれは無かった。先ほどの達成感を感じた後だと

その後の絶望も普段の2倍だ。私は苛立ち、急ぎ足で店を出た。そして別のホームセンターに行く──が無い。次も、その次も。ロープは売っていなかった。


ここが、今日中に行けるホームセンターの最後の場所。


正直、もうロープは諦めていた。今はどちらかというと家にある物でロープの代わりに出来ないか、自宅にある物を必死で思い出す──と同時に一応ロープも探す。

コード、延長コード。あれなら何とか······無理か。多分コードって硬いから、柔らかそうなロープがいいな。


なんて考えながら探していると、そこにはやっぱり何も無······。


あった。見つけた!!ロープだ!!これでやっと私は死ぬことが出来る。今日1日疲れたけど、それも死んでしまえば全て消える。


私はご機嫌だ。死ぬ前にしてはとても気分がいい。まるでスキップするような弾む気持ちで私は帰宅した。


椅子は出かける前に置いた状態のまま。買ったロープを袋から取り出す。念願のロープ、私は今からこれで死ぬんだ。とうとう、やっと私は死ぬことが出来る。


椅子に乗り、ロープを首にかける。ん?


このロープは天井のどこに掛ければいいのかな。

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私は死ねない 蘇来 斗武 @TOM0225

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