第6話 ハッキング行為って犯罪じゃないんだね
ギルド内で、メンバーさん達とどんちゃんを騒ぎしていると、受付の人がやって来ました。
「千冬さん、千秋さん、ギルドカードが完成しましたよ」
「あ、ありがとうございます」
そう言って、受付の人からギルドカードを受け取ると、少し違和感がありました。
魔法の質とかはあまり良くわかりませんが。
少し、落ち着くような、優しいような、不思議と癒される様な感覚になります。
「このギルドカード……」
「そのギルドカードに、ちょっと違和感があるのは当たり前なんだよなぁ」
同じメンバー、て言ってもまだ少年ぐらいの身長の子が話しかけてきました。
「当たり前って、どのギルドカードでもそうなの?」
「いや、ここで作ってもらったカードだけだ、このギルドは、ここ以外にもたくさんの支部があって、その支部ごとにマスターがいるんだけど、ここのマスターはその中でも、マスター達をまとめるマスター、その人がギルドマスターって呼ばれてて、そのギルドカードは、ギルドマスターの手作りなんだよ」
マスターという言葉が、ゲシュタルト崩壊しそうです。
「え?このカードって、手作りするものじゃないの?」
「そのギルドカードを作るには、マスターが魔力石って言う魔力の塊みたいなものを動力にして、専用の機械を使って作んだけど、ギルドマスターの場合は石も機械も使わねぇ、完全な手作りなんだよ。話によると、そのカード作んのに、人並みの魔力とは比にならない量の魔力を使うらしいぜ」
「だから持ってると暖かいような気持ちになるんだね」
人並みの魔力とは比にならない量の魔力、そうなると、1つ疑問が。
「ねぇ、1つ聞いていい?」
「んあ?なんだよ?」
「その、ギルドマスターさんって、何者なの?」
「それは、私からお話ししましょう」
声をした方に目を向けてみると、そこにいたのは受付の人でした。
「え?なんで受付の人が?」
「紹介を遅れましたね、私、当ギルドの受付嬢兼初代ギルドマスターの、アストライアーと申します、アストと呼んでください」
ん?今、引っかかる言葉が。
「初代?え?このギルド、最近できたんですか?」
「いえいえ、このギルドは何千年も前からある、由緒正しいギルドなのです」
「何千年も前から?」
僕も千秋お姉ちゃんも首を傾げながら呟きました。
そしてアストさんは笑顔でこう答えました。
「はい」
何千年も前からある由緒正しきギルド、そうなると当然、ギルドマスターは何代もいる訳で。
「それで今、初代?と言ってましたよね?」
「言ってましたね」
「由緒正しくて、そのギルドの初代ってことは、あんた」
千秋お姉ちゃんが要点をまとめて、結論は僕が言いました。
「何千年も前からギルドマスターになって、今まで死んでいない」
「言わば不老不死、と言うものですね」
アストさんから答えを出してきました。
この時、僕と千秋お姉ちゃんは思いました。
僕たち以上にチートな人いました。
おっちゃん、これどういう事?
(彼女はね、現在進行形で神さまなんだよ)
と、突然脳内に直接語りかけてくるように、おっちゃんの声がしました。
千秋お姉ちゃんにも同じことが起きている様です。
(彼女は、能力としては自分よりも全知全能の最高神じみているんだよ、でも昔、ちょっとバカンスに行ってくるって言ったきり帰ってこないんだ、どうにか帰ってくるように説得はしているんだが、中々納得してくれなくてね)
道理でチート級の力を持っているわけです。
道理で膨大な魔力を持っているわけです。
こんな人(?)がクエストに同行したら、もう全部あいつ一人(?)でいいんじゃないかな状態になりますよ。
とんでもない人(?)ですね。
「さてと、それでは、いきなりではありますが、クエストに向かわれてはどうでしょうか?」
「クエスト?」
またいきなり、でもアイリスさんからの話では、ゴブリン討伐や、採取系のものを生業としているようですし、簡単なクエストで。
「これとかはどうですか?討伐目標、隣国、ゲルマニー帝国」
来るという優しさがあったらいいなと思っていました。
国を相手。
朝にアイリスさんが言ってたのって、冗談じゃなかったんだ。
前半と最後が冗談だったんだ。
「あの、国を相手にするってどうかと思うんですけど」
「あら?フィリアとアイリスのパーティはよくやってますよ」
お願いします、嘘だと言ってください。
「まぁ、今回は私も同行しますので、安心してください」
もう全部アストさん一人でいいんじゃないかな?
「まぁまぁ、いいじゃん千冬、もし成功すれば、次の王様の代で友好関係が結べると思うし」
「そう考えるとハイリスクハイリターンだけどさ、限度はあるよ」
そう言うと、アストさんが詳細を話してくれました。
「しかし、どうやら最近、先代の国王は追放されたようですよ、とある過激派集団から」
「「「え?」」」
そこで声が上がったのが僕と千秋お姉ちゃんとフィリアさんでした。
なんでフィリアさんまで?
「それで、受けますか?受けませんか?」
「いや、受けませんよ、そんなの失敗したら即刻死刑に決まってるじゃないですか、いくらなんでも」
「受けます」
へ?
「あの、フィリアさん?なんで?」
「千冬君達には話してなかったね。私、元々はゲルマニー帝国の生まれなの」
へ?
「そういえば、フィリア達はそうでしたね。そうしたらこれは、先代国王の敵討ちのようなものですね」
「はい、国王の為にも、このクエストは、受けなきゃいけないんです」
なんだか一気にシリアスっぽい雰囲気に、っていうナレーション入れているとそんな雰囲気はぶち壊しになりますが。
「それではクエスト受諾と、メンバーはフィリア、千冬君、千秋さんと私ですね」
「それでは行きましょう」
フィリアさんがそう言うと、フィリアさんとアストさんがギルドから去り、なんだか最終回っぽい画になりました。
どういう感じかと言うと、日に向かって二人が並んで歩いている画になりました。
向こうが南なんだ。
なんだか、私たちの戦いはこれからだみたいな字幕が出てもあまり違和感はないくらい、堂々と道を歩いていました。
「千冬君、千秋ちゃん、何してるの?置いていくよ」
「え?あ、はい」
「い、今行きます」
こうして、僕達は隣国、ゲルマニー帝国に向かう(連行される)のでした。
歩いて2分、直接行くのは面倒なので、街にある広場で国を潰そうとフィリアさんとアストさんは考えました。
具体的にどうするのかと言うと、ここから現国王を暗殺しよう、と企てていました。
そして現在、四方位で並べると、アストさんが北、フィリアさんが東、千秋お姉ちゃんが西で、僕は南に背を向け、対面するように、広場にある噴水前でしゃがんでいました。
日が当たって気持ちいいです。
眠くなりますね。
そしてその中心には、今度はタブレットタイプのノートパソコンが地面に置かれていました。
アストさんの持ち物だそうです。
こんなのまで出回ってるんですね。
「しかし、ここで王を殺すといっても、一体どうやるんです?」
「私の母国は、科学技術が圧倒的に高いの、主に魔力を動力源とした魔法科学がね」
「しかし、玉座が過激派集団に温められたら、欲望の色が姿を見せます」
「今の王はその技術を高めるために、崇高な科学者達を集めて研究、開発をさせてるの」
「魔法科学の中で、一番技術が高いのが魔力を使った科学兵器、中には警備用として自立型の兵器まであります、今回はそれを逆手に取りましょう」
逆手に取る、という言葉を聞いて、千秋お姉ちゃんが反論します。
「でも、それを逆手に取るって言ったって、崇高な科学者達が創ったものだよ?奪おうにもここじゃ奪えないし、かと言って、警備用の兵器が暴走するのを待つのも無理な話だよ?」
その時、僕は思い出しました、フィリアさんはこの世界の真実を知った人。
もしこのことをアストさんに報告して、アストさんも前世の世界の技術を知っていたとしたら。
ここで殺せる方法が1つだけありました。
「あ、あの、科学者たちの中には、転生者っているんですか?」
「ちょ、千冬、あんた何言って」
僕の質問に対しての答えを最初に口を開いたのはフィリアさんではなく、アストさんでした。
「十中八九いますね、しかし、その人物もこの世界に来てすぐって訳ではなく、数年居てから集められたのでしょうね、だからこれは異常だと考える転生者も現れるでしょう」
「え?どういうこと?」
「二人とも、僕達が別の世界から来てることも、その世界から何人かがこちらの世界に来たことも知っているの。ところでアストさん、異常だと考える人たちが現れたとなると」
「助けを求める為に、技術にわざとミスを生むように施すでしょう」
「だからわざと弱点を作っていると考えられるよね」
「転生者がいたら、作る設計図も、前の世界の技術を利用するでしょう」
「だとしたら、やることは1つ」
そしてその答えは、僕の予想通りの答えでした。
「王直属の自立型警備兵器をクラッキングして、コントロールを奪ってしまおう」
注意。
クラッキング行為は犯罪です、どんな理由があろうとも決してやってはいけません。
「にしても、ここにそんなことが出来る奴がいるの?」
確かに、それは向こうの世界の技術だから、この世界で出来る人はかなり限られています。
「転生者の中には、サイバー攻撃に精通している人もいましたけど、心が少し穢れていたので、綺麗にしたら、悪用しないことを条件に教えてもらったので、多少の心得はありますよ」
今この場で悪用しようとしているんですが。
ていうかその人サイバーテロを起こした人じゃないんですか?
「えーと、王室内にある警備兵器の数は、どうやら玉座の後ろに2体、設置しているようです」
「それじゃあ、そいつらのうちの1つをクラッキングして、王を殺そうか」
千秋お姉ちゃん、賛成しないで。
「そうなると、次代の王様は先代に王になっていた人なのかな?」
「過激派組織が崩壊したら、追放された王様も戻ってくるから、そう言うことになるね」
「それじゃあ、クラッキング開始です」
と言うと、どこから取り出したのか、アストさんの左手にはタッチペンが握られ、画面を操作しだしました。
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