第5話 いくら食べても太らない体質の人って、それはそれで苦労が多いんだよね
今日の僕達の朝ごはんは、コーヒーと、トマトにポテト、ソーセージにベイクドビーンズ等、いわゆるフル・ブレックファストというイギリスの伝統的な朝ごはんです。
とても美味しそうです、美味しそうなんですが。
「どうしたの?千冬君」
「ベーコンエッグはダメなんですよ」
「ベーコン嫌い?」
「そうじゃなくて」
そうじゃなくて、卵がダメなんですよ。
「そういえば千冬って、昔から乳製品は駄目なんだよね」
「そうなんだ、それじゃあ千冬君のを食べてあげる」
「あ、ありがとうございます」
「それじゃあ、いっただきまーす」
そう言うと、ベーコンエッグを僕のお皿からとって食べました、なんで食べられるんだろう。
「ほうだ、ひふゆふん、あほへふふをはいにひほっは」
「ちゃんと飲み込んでから言ってください」
「んぐ、そうだ千冬君、後で服を買いに行こっか」
そういえば、僕はこの制服1枚だけだった。
おしゃれとかもしてみたいな。
「わかりました、朝ごはんを食べ終えたら行きましょう」
「私もいい?私もパジャマを除くとこれ1枚だけだからさ」
「そうだね、千秋お姉ちゃんも一緒に行こうか」
千秋お姉ちゃんと買い物、そういえば初めてな気がする。
「二人が良かった」
「え?」
「ん?どうかしたの?」
「いや、フィリアさん、さっきなんか言いませんでしたか?」
「え?何も言ってないけど?」
「そうですか?」
空耳ですかね?
「そういえばさ、アイリス達っていつも何してるの?」
千秋お姉ちゃんが気になる質問を出してきました、確かに、いつも何しているか気になりますね。
「ん?いつも?いつもはね、クエストをこなしたり、買い物したり、クエストをこなしたり、クエストをこなしたりしてるよ」
クエスト三昧なんですが。
「クエストって言っても、単に迷子の犬を探してきてとか」
「うん」
「ヒドラを倒してきてとか」
「うん?」
「王権を握りたい王様の親族から、王を殺すように依頼されたりとか」
「………」
いつもそんなことしてるんですか?
「まぁ、さっきのは冗談」
「ですよね」
冗談じゃなかったら洒落にならないです。
割と本気で。
「まぁ、ゴブリン狩りとか、採取とかが主なクエストね」
「そうなんだ、んじゃあ、私もクエスト受けてみようかな?買い物終わった後で」
僕達がそうして雑談を続けている内に。
「ごちそうさまでした」
アフロさんが食べきっていました。
「そろそろ僕達も食べ終えないとだね」
話を切り上げて、僕達は朝ごはんに集中することにしました。
朝ごはんを終わらせ、千秋お姉ちゃんとフィリアさんと一緒に外に出ました。
そういえば第1話で町と街が出たけど、何が違うんだろう?
なんか街の方がおしゃれっぽく感じるのは僕だけなのかな?
こんど調べてみよう。
外に出て、フィリアさんの後をついていくと、1つの小さな服屋さんが見えてきました。
中に入ると、1人の男の人が、カウンターで読書をしていました。
「ん?あ、いらっしゃい」
僕達に気づき、本から目を離し、挨拶してきました。
「今日はどうしたの?フィリア」
「今日はこの子の服を買いに来てね」
「ん?その子って、君の姉妹?」
「いや、血縁は無いよ、昨日からこの町に来たの」
「こんにちは、雪代千冬です」
「月姫千秋です」
「ふーん、んで、女の子向けの服をね、でもさ、フィリア、女の子用の服はここじゃなくて、街の方にある店でもいいんじゃないか?」
「なに店側から客減らそうとしてんのよ、いいから早く服を紹介してあげて」
「わかったよ、でも、言っておくけど、ここに女の子向けの服は無いよ、フィリア達のは特注なんだから」
会話からして、二人が知り合いなのはわかりました。
フィリアさんの服って、ここで作らせてるんだ。
「あ、そういえば、1つ良い?」
「んあ?何?」
「千冬ってさ、男の子だよ?」
「ふーん」
「あれ?意外と反応が薄い」
「だって女子っぽい男に驚くってあるあるじゃん、いい加減このネタを使いまわすのは飽きるんだよ」
そう言うと、棚に置いてある服を見て、どれが似合うか調べてくれました。
「最近だと、ここに来るのはお前たちみたいな珍客ぐらいだよ、他の転生者が街の方でデザインを売っていたり、服そのものを高値でやり取りしていたり、正直言ってロクな物じゃない、デザインはその人が一生懸命に考えた末に出来上がるものだ、それを金で解決するのは嫌いだ」
「そうなんですか」
確かに、お金の力に頼るのは僕も好きじゃないね。
というか転生者だったんですか。
なら少し、親近感がありますね。
「それで、まだなの?」
「待て待て、こっちだって事情があんだよ、ていうか女顔に似合う男服なんてあんのか?それに街に行くと服屋はたくさんあんだろ」
「千冬君は男の子だからここで決めなきゃいけないの、街の方だと絶対女の子物を紹介されるじゃん」
「でもなぁ、今探したけど無いぜ、女顔に似合う男服なんて」
「それじゃあ特注でやってもらうけどいい?」
「それなりにきついけど、金払いが良いからいっか、やってやるよ」
「そう、それじゃあお願いね。それじゃあ出よっか、千冬君、千秋ちゃん」
そう言われ、僕と千秋お姉ちゃんは、フィリアさんと一緒に外に出ました。
そういえばあの人の名前を僕は知らないな。
それと僕と千秋お姉ちゃんのウエストとか身長とか図らなかったなぁ。
その状態で作る服かぁ。
……なんか不安。
「それじゃあ、今度は、ギルドに行ってみましょ」
そう言うと、フィリアさんが先頭に立って進みだして、僕と千秋お姉ちゃんがその後を追う形になりました。
「ギルド?」
「なになに、いろんなメンバーとかパーティとかあるの?」
「まぁ、そんなものね、私とアイリスはパーティだけど、2人だけだから寂しいのよね」
「はぁ」
「そう言う訳だから、一緒のパーティに入ってくれない?」
「どうする?千秋お姉ちゃん」
「別にいいんじゃない?」
「僕もいいと思うよ」
「それじゃあ決まりね、後、これからは私たちの家で住んでね」
「え!?いいんですか?」
「もちろん、千冬君を愛でたいし」
「千冬を取られるのは気に食わないけど、まぁ、仕方ないか」
「それじゃあ、千冬君を愛でてもいい代わりに、一緒に生活する、って事でいいよね?」
「うん、千冬も問題ないよね」
「う、うん」
「じゃあ、交渉成立だね、はぁ、可愛いなぁ」
「だからって早速千冬に抱き着かないでよ」
「フィリアさん、ちょっと苦しいです」
「はぁ、あ、そろそろ見えてきたよ」
数分歩いて、大きな建物が見えてきました、多分ですけど、この町で一番大きな建物だと思います。
中に入ると、沢山の人がいて、屈強な大男から、艶美な雰囲気を醸し出してるお姉さんもいたりと、水分を加える前のジュースぐらい濃い面子がいました。
だから時々パックに濃縮還元って書いてあるんですよね。
「誰、あの子たち?」
「最近よく見ない奴が来ることが多くなったよな」
「あれ?フィリアも一緒だよ?」
と、周りから疑問の声が上がっています。
ギルドの中を見回しながらフィリアさんについていくと、受付につき、フィリアさんが話を切り出しました。
「あの、この2人がギルドに入りたいと言っているので、メンバー登録をお願いできませんか?」
「その、フィリアさんの後ろにいるお二人でしょうか?」
「はい、それじゃあ、二人とも、手を出して」
「手?」
「いいからいいから」
そう言われ、受付の方に手を差し出すと、最初は僕の手を受付の人がじっと見ています。
手相でも見ているんでしょうか?
どうでもいいですけど、前世から生命線がどうしても現れなかったんですよね。
この年で死んじゃったからかな?
「なるほど、魔力はこのギルドの中でも圧倒的に多いですね、このギルド内にいるメンバーの魔力を合わせても足りません」
「そう、なんですか?」
「そうです、しかし技術や経験はとても乏しいものです、でも、素質はかなりの物、数週間でそれも消えるでしょう、とても欲しい人材です」
「そうですか」
「はい、それでは、次の方、失礼します」
今度は千秋お姉ちゃんの手をじっと見つめています、そういえばおっちゃんが、触れたものを自在に操る能力だっけ?それを千秋お姉ちゃんにあげてましたよね?
この世界で能力ってどう捉えられるんでしょうか?
摩訶不思議な力、僕達でいう所の魔法みたいな、そんな感じで捉えられるんですかね?
「ほう、なるほど、なるほど、はっきりと言いますが、あなたには魔力の量と質も良いとは言えません、素質もあるわけではありません」
「うっ、結構ストレートに言うね」
「しかし、貴方は少し変わったものをお持ちのようですね、それはギルド内のメンバーの中でも、誰も持っていません、とても興味深い人物です、是非このギルドに入って頂きたい」
「ほんとですか!?」
「はい、それでは、今からギルドカードを発行しますので、少々お待ちください、その間に、他のメンバーに挨拶をすることをお勧めします」
「はい、わかりました」
「よかったね、二人ともギルドに入れて」
「そうだね、千冬、あ、そうだ、挨拶をしたほうが良いって受付の人が言ってたよね」
「そうだね、挨拶して、歓迎してもらおう」
しかし、僕達が挨拶をする前に。
「おい、この2人がギルドに入るってよ」
「私はエミリーって言うの、よろしくね」
「もしかしてフィリアと同じパーティに入んのかぁ?」
と、既に歓迎ムードでした。
僕の前世はいつも、いじめられっぱなしだった。
男なのに女の子みたいな容姿で。
それがコンプレックスでもあった。
整形したい。
韓国へ行って、整形したいとか、もういっそのこと、この顔をめちゃくちゃに殴ってほしいとか、そんなことも思った、でも。
「へぇ、君、男なんだ」
「は、はぃ」
「以外だね」
「か、かわいい……」
この世界に来てから、主に女性の方から受け入れられています。
「男なら肉を食え!そんな身体じゃ、クエストの目的地に着くだけで倒れるぞ」
巨漢のおじさんから、骨付き肉の乗ったお皿を渡されました、最近お通じが良すぎて、すぐにお腹が空いちゃいます。
「そ、そうですね、はむっ」
「おぉ、良い食べっぷりだね」
「千秋ちゃんもさぁ、こっち来て千冬とお肉食べなよ」
「朝ごはん食べたばっかりなんだけど」
「ほのおにふ、あふらっほふはいはらはへはふいほ」
「飲み込んでから言いなさい」
「んぐっ、このお肉、脂っこくないから食べやすいよ」
「え?そうなの?」
「うん、ジューシーだけどサッパリしてる」
「それじゃあ一口頂こうかな」
と、僕と一緒に、千秋お姉ちゃんはお肉にかぶりいたのでした。
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