第4話 アニメとかで主要人物以外で真実に辿り着いたキャラって、ラスボス以上にラスボスっぽいよね
ご飯が済んで、そろそろ深夜になろうとしています。
アイリスさんとアフロさんの2人は、僕が作ったお吸い物に興味津々でした。
外国人にとって、日本食は不思議な食べ物だと思いますが、あそこまで不思議な物を見る目は初めてです。
夜。
それは陽と対を成し、水の電気分解では水素に成る物。
そして夜は。
「いらっしゃい、千冬君」
ちょっとエッチな時間でもある。
「こんばんは、フィリアさん」
「約束通り来てくれたのね、それじゃあこっち来て」
魔法書らしき本を開いたフィリアさんに手招きされて、ベッドに座り、フィリアさんと並ぶ形になりました。
「それじゃあ、まずは魔法とは何か、教えてあげる」
魔法とは、呪文を唱え、自然界の秩序を無視し、超常現象を起こす術である。
と、フィリアさんは魔法書に書かれているような一文を読み上げました。
「魔法には、属性魔法、生活魔法、基本魔法、召喚魔法と多種多様な魔法が存在していて、それらの総称が魔法っていうの」
「そうですか、因みに属性魔法はどういった魔法があるんですか?」
「相手を攻撃したり、日常生活に取り入れる事もあるけど、例えばこの部屋にあるランタンは蠟燭に火属性の魔法、ファイアを唱えたの、お風呂に上がった後にしたドライとウォッシング、あれは生活魔法に入る魔法よ」
「そうなんですね、他にはどんな魔法があるのか気になるので、その本を見せてもらえませんか?」
「いいわよ、はい」
その魔法書を覗いた時、僕は心のどこかで、フィリアさんを普通の女の子だと高を括っていた事を思い知らされました。
それは、この本を読めるからです。
あの時、おっちゃんはこう言ってました。
文字は元の世界とかなり違う。
今の時代、ジパングでは、僕達の言う所の、古文を使っているはずです。
なのに文字の使い方が現代そのもの。
そして最初のページには、小さくこう書かれていました。
千冬君、魔法の世界へようこそ。
「………気づいてたんですか」
「そう、この世界の秘密にね」
この世界の真実に辿り着いた人物、それがこんな近くに居たなんて。
「千冬君にあった時、確信したんだ、異世界から転生したんだって」
「もしかして、フィリアさんには1人、この場にいない声も聞こえるんですか?」
「ううん、聞こえないよ、でも、町で生活していると、時々この町だと場違いな服装をしている人がいるときがあってね」
「その中に、上は黒い服で、下は紺色のズボンをはいて、眼鏡をかけたおじさんっていましたか?」
「いたよ、その人からノートパソコンを買ったり、他の人から色々な言語や歴史、科学、数学、向こうの世界で起きている事を色々教えてもらったの、特に日本語は難しいね、使う文字の種類が多くて複雑で、でも、その言語を考えた人はすごいって思うよ」
「それも教えてもらったから、この本に日本語を書けた」
「そう」
それが分かっていながらなぜじっとしているんですか?あなたならこの世界の神にもなれる可能性があるのに。
「私には神さまになるような器も力も無いの、それに、器も力も無いからこそ、千冬君に出会えた」
「フィリアさん」
「神さまになって、やりたいことができなくなるくらいなら、神さまにならなくて、やりたいことをやりたい、そうした方が、人生楽しめるでしょ?」
「そうですね、僕も学校卒業する前、今後何をしたいのか考えた途端、目の前が真っ暗になりましたし、その時は、やりたいことが見つからなかったんですね」
「そうなのかもね、っと、そろそろお話はこの辺りにしよっか、脱線した話を元に戻さないと」
「そうですね、魔法を教えてもらいにここに来ているんですから」
「それじゃあ、千冬君、今度は私のベッドで寝っ転がって、布団に入ってお勉強しましょう」
「はぃ」
今更ですけど。
僕は、少しでもエッチぃ事に弱いようです。
フィリアさんの着ているパジャマ、少し脱げかけています。
そんな中でベッドの中で一緒に、ちょっと恥ずかしいです。
「今度は何を教えてあげようかな」
「ところで、召喚魔法って、どんな者を召喚するんですか?」
「召喚魔法に興味があるのね」
「まぁ、少しだけ」
「いいわ、教えてあげる。召喚魔法で召喚するものは沢山あるわ、猛獣や戦士、武器や防具とか」
「召喚するときは、何か特別な事をしないといけないんですか?」
「あるとすれば、その者の名前と姿をイメージして、イメージしたものが出てくるまでイメージするだけなの」
「そうなんですか、特に道具を使うとかも無いんですね」
「そうね、特に必要ないわ」
フィリアさんが丁寧に教えてもらっているのに、僕はどうやら。
「ふわぁ」
そろそろ限界みたいです。
「フィリアさん、僕、少し眠いです」
「あれ?もうそんな時間?」
「夜は弱いんです」
「そう、それじゃあ続きは明日ね、そろそろ寝ましょうか」
「………」
「あらあら、もう寝ちゃった」
という訳で、千冬君から語り手の椅子を奪い、フィリアです。
千冬君も転生者だったんだね。
千冬君はどんな力をもらったのかな?
他とは少し違う。
いや。
他とは圧倒的に違う。
今まで出会った転生者は、普通の神さまだったけど。
千冬君は違う。
もっと偉大な。
もっと上の位の神さま。
可愛くて強くて臆病な千冬君。
前はどんな人生を送ってきたのかな。
今度、神さまについて教えてもらおうかな。
でもね、でもだけどね、千冬君。
私はこの世界の真実に辿り着いてしまった。
世界がいくつもあり、最終的な決定権はその人にあるけど、殆どは神さまの気まぐれで次に生きる世界が決まる。
その世界は、簡単に言うとチェス盤のような物。
私達はその中の駒でしかない。
クイーンかビジョップか、はたまたポーンか。
千冬君は間違いなくキングだね。
千冬君がキングなら、私はクイーンが良いな。
隣で一緒に居たいな。
でも、どのチェス盤に、どの役職で入れられるかは、神さまの気分次第。
不確定要素。
それがこの世界達の真実なの。
ぶっちゃけた話をするとね、私にはこの世界で千冬君を愛でる以外に楽しみは無いの。
学問を追求することも、謎を解明することも、正直言って楽しくない。
富を積むことも、何かを成し遂げるのも、正直言って面白くない。
真実を得る代償だね。
この世界達の真実を得る代わりに、あらゆるものに興味が失せる。
あるとすれば、一時の高揚感。
それも時間が勝手に流していく。
結局その謎も、その学問も、その富も、その成功も、その高揚感も所詮その世界での縄に過ぎないの。
その世界で生きる人を縛るための縄。
縛るんだったら荒縄ではなく、肌に優しいベルトと、きつくない縛り方で縛ってほしいね。
と、ちょっと私の世界に入りすぎちゃったね。
深夜にここまで考えてしまうなんて、ネガティブにも程があるってものだね。
この世界に絶望しているみたいだね。
私が超高校級の絶望としたら千冬君は超高校級の希望といったところかな?
私を絶望から救い出してくれる希望。
この世界で退屈しない希望。
そんな希望には。
是非とも私を楽しませてほしいね。
この世界で退屈させないでほしいの。
だから私は人を、千冬君を道具とは見ないの。人は人、人を道具として見るのは、やっぱり私にとっては愚の骨頂だと思うの。
そこは人によるけどね。
さてと、私も眠くなっちゃったな、千冬君を抱きしめて寝ますか、千冬君の髪の毛、ふわふわでいい匂いがするよ。
頭を抱きしめる形になるけど、千冬君、窒息死しないかな?折角楽しめる人に出会えたんだから、幼い女の子がもらった誕生日プレゼントぐらいの大切さで接しないとね。
それじゃあ、おやすみ千冬君。
また朝で。
あ、そうだ、椅子は返してあげなきゃ。
朝。
それは陰が退き、陽が出る時間。
今度は酸素が現れる時間。
水素はたぶん、そこに留まるんじゃないかな?
水素は水に溶けにくいし。
そして、朝は。
「あと5分だけ」
僕が弱くなる時間でもある。
「うーん、千冬君」
フィリアさん、寝言まで僕の名前を、ていうか目が開けられないです。
いや、朝が弱いとかそういうのじゃなくて。物理的に。
何かに押さえつけられてる感覚です。
それとこの服が気持ち悪いです。
今でも学校の夏服を着てて、着ている感触がなんともよろしくないです。
というより今の状況がよろしくないです。
フィリアさんに抱き枕にされてます。
完全に抱き着かれ、絡まれで、身動き1つ取れません。
爆裂魔法は使って無いです。
それと心なしか、後ろの方からも熱が伝わってきます。
身体に絡まってきています。
どうでもいいですけど、コアラって握力が凄いことになってるみたいですね。
本当かどうか知りませんが。
多分デマだと思います。
本当ならユーカリの木の幹を素手だけで壊せそう。
片耳を澄ますと、時折寝言が入って、声の主が千秋お姉ちゃんだとわかりました。
あれ?昨日いたっけ?
昨日は僕とフィリアさんだけだったよね?
いつ来たんだろ?
多分僕達が寝た後だよね。
「フィリア、そろそろ起きろ」
この声はアイリスさん、朝には強いんですね。
「千秋、アフロも起きて、朝飯抜きにするぞ」
どうやらアフロさんもいるみたいですね。
僕は朝はご飯は通りません。
あまり食欲が無いです。
なので学校に行ったら2,3時間目にはギブアップです。
4時間目は体力、睡眠共に限界突破します。
居眠り、腹鳴りは日常茶飯事です。
「うーん、おはよう、千冬君」
おはようございます、ってフィリアさん、苦しいです。
「あれ?私、千冬君をずっと抱き枕にしてたの?」
「うーん、あ、千冬、おはよう」
「おはよー、全員いるみたいだね」
「なに私を抜いてみんなで寝てるの、朝ごはん出来てるから、早く食べるよ」
「「「「はーい」」」」
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