第2話 最高神!その名も!おじさん

 なんでパソコンが?え?文明のレベルがまだ中世の世界だよね?なんで現代技術が中世にあるの?

「えっと、これが気になるの?」

「あ、まぁ、はい」

「これはノートパソコンっていうの、色々な事が調べられるの」

「あ、そうですか」

 形がまんまノートパソコンのそれなんですけど、しかし、なんでこんなものが?

「ちょっと値は張るけどかなりの優れものなの、奮発して買っちゃった」

 あの、最高神サマ?これどういうことですか?

(いや、どうもなにも、ノートパソコンだけど?)

 そうじゃなくて!なんでノートパソコンがこの世界にあるんですか!?

(いやだって、ないと不便じゃん?自分がいつも創る世界の基準でもあるんだよ?)

 あんたの基準はそれでいいのか、あ、そうだ、道中お願いを叶えるとかなんとか言ってませんでした?

(やっぱり憶えてたか、んじゃあ、サイコロ二つ送るから、出た目の数だけお願いを叶えよう)

 気が付くと目の前にサイコロが2つ置かれていました、そういえば僕、麻雀が得意だったんですよね、得意って言っても、麻雀のイカサマがですけど。

 真っ暗な箱の中、僕はいました、サイコロの目は6と6、つまり12を出して、神さまに12個お願いを叶えてくれることになりました、賽振りは得意です、んで一回、元の世界に戻ってきました、なんでかというと、ちょっと忘れ物しちゃったからです、お経が聞こえるので葬式の最中ですね、不謹慎なので出ますか。

「う、ぐすっ、千冬、なんで、なんで死んじゃったの?」

 この声は、従姉妹の千秋お姉ちゃんですね、悲しいだろうなぁ、従弟が死ぬって、でも、僕がふっかケホケホ、鼻詰められててこんな狭いところにぶち込まれてたら、流石に息が苦しいですね、おっちゃんに1時間だけ生き返らせてもらってここにいるのに、窒息死するよ、早く出ないと。

 重たい棺桶のふたを押しのけて復活しました、千秋お姉ちゃんが驚きと喜びを足して2で割ったような顔をしています、嬉しいです、と、そんなこと言ってる場合じゃなかった、早く家に帰って忘れ物を取に行かなきゃだった。

「誰か家に送ってくれない?縁起でもないからここを出たいんだけど」

「よっしゃ!お前の為ならどこにだって送ってやる、さぁ早く乗れ!」

 死装束から着替えて10分、おじさんの車に千秋お姉ちゃんと揺れて20分、僕の時間は1時間もないと伝えておきましょう。

「ねぇ、千秋お姉ちゃん、お願いがあるんだけど」

「なに?千冬」

「僕は、30分後には死ぬ」

「え!?」

「声が大きいよ、おじさんに聞こえたらどうするの」

「でも、30分後に死ぬって」

「ちょっと神さまにお願いしたんだ、そして1時間だけ生かせてもらったんだ」

「でも、千冬はどうするの?死んでお別れなんて嫌だよ」

「死んでも悔いが残らないように、忘れ物を取りに来たの、その内の1つ、いや、1人は、千秋お姉ちゃんなんだ」

「忘れ物…」

「お願いお姉ちゃん、こんなこと言うのは縁起でもないけど、一緒に死んで、神さまには苦しくないようにしてもらうから」

「………」

 やっぱり嫌だよね、悔いが残らないようにって言っても、そんなことの為に死ねるほど、お姉ちゃんの命は軽くない、でもお姉ちゃんに会えなくなるのは、寂しいよ。

「ごめんね、お姉ちゃん、やっぱり今のは」

「死ぬよ、私」

「え……?」

「だから、千冬の為に死ぬって言ってるの」

「う、うそ」

「ほんとよ、千冬さ、さっき私の命は軽くないって思ってたでしょ」

「う、うん」

「でもね、私にとっては、千冬に会えなくなることが軽くないの」

「お、お姉ちゃん…」

「だから、死ぬための準備、一緒にしよ?」

「お姉ちゃん!」

「もう、遺族より泣いてどうするのよ、さ、ついた、さっさと準備しましょ、もう20分くらいだもの」

「そうだね、やろっか、準備」

 こうして僕は準備を終えて、おっちゃんに千秋お姉ちゃんも一緒に死ぬことを伝え、再び天に還りました。

 またあの場所に戻ると、おっちゃんが呆れ顔をしていました。

「おかえり、まさか千冬君にイカサマの才能があるとは思わなかったよ」

「ただいま戻りました、いやぁ、すいません、かなり無茶なお願い聞いてもらって」

「まあ、千冬君の死で悲しむ人が1人でも減ったらそれはそれでいいかな」

 いや今度は千秋お姉ちゃんの死で悲しむ者が増えると思うんですけど。

「あの、ところで、どちら様ですか?」

「おっと、挨拶が遅れた、悪い癖だ、近いうちに直さなくては、それでは、コホン、初めまして、わたくし、千冬君を復活させた者、最高神です、気軽におじさんって呼んで」

「え、さ、最高神?」

「そうだよ、神さまの中の神さま、最高神だよ」

 そう言われたら、不審者を見るような目をしながら、僕の後ろに隠れました、なにもそこまで警戒しなくても。

「あ、あのー、大丈夫だよ?おじさんは怖い人(?)じゃないからさ、大丈夫だから」

「ほんとに、神さまなの?」

「そ、そりゃそうだよ、これから転生させて、千冬君と一緒に生活を送るんだよ、会えなくなる訳じゃ無いよ」

「そうよね、そうよね!これからも一緒だもんね!」

「う、うん、あ、でも、ちょっとだけ良いかな?」

「なんですか?おっちゃん」

「転生先で持っていくのは良いんだけど、ちょっと重量制限があるんだよね」

「え?重量制限?」

「いやだってさ、そうなると家丸々1つ持ってくるなんてことが起こりかねないからね、そうならないように重量制限を設けてるんだよ」

 しかし、タブレットノートパソコン786グラム、カバーもつけて1078グラム、マウス140グラム、マウスパッドを含め465グラム、スマートフォン115グラム、それらを入れるバッグは100グラム、合計1758グラムで僕はあまり重たいものは持ってきてないはずだけど。

「千冬君はいいんだ、1人2000グラムまでだからね、でも千秋ちゃんは」

 リュックサックの中をパンパンにしていました。

 衣服類、食料、携帯など、30リットルリュックサックがパンパンで、明らかに重量オーバーを迎えていました。

「流石にこれはダメだね、ちょっと整理して、大事なものとそうでないものを分けよう」

 おっちゃんにそう言われて、リュックサックをひっくり返して仕分けをしました、結果、重量制限はクリアしました、ギリギリ。

「な、なんとかなったね、それじゃ転生を」

「おっちゃん、千秋お姉ちゃんにチート能力はあげないの?」

「え?千冬、どういうこと?チート能力?」

「え?あ、いや、ほら、チート能力持ちが数人いると世界のバランスがね?あれなんだよ、あれ」

 そう言って、おっちゃんがはぐらかしていたら。

「なに言ってるの!転生するなら能力を与えるのがルールでしょ!」

 奥さんが文字通り天の声となって乱入してきました。

「はぁ、仕方ない、ほんとはチート能力与えるのって結構負担がかかるんだよ?まぁ君には、触れた物を自由に操る程度の能力をあげよう」

「それって、壊したり、直したりできるってことですか?」

「うん、だからってその立ち方はしないで、怒られそうだから」

 しかし、その能力ってあれですよね、クレイジ

「おっと、それ以上はいけないよ、さぁ、能力は与えたから、いってらっしゃい」

 心の中まで遮るとは、中々の手練れと見た、と言ってる間に二つ問題が、あれ?そういえば幽体離脱して肉だけの僕は今どうなっているんだろう?それと。

「ねえおっちゃん」

「ん?なに?」

「僕の転生先でエンジニアの人と黒いタートルネックにジーンズを穿いて、眼鏡をかけたおじさんっている?」

「うん、いるよ、その人達、ノートパソコンを作れるって言ってたから、千冬君と同じ世界に転生させたよ」

 これでノートパソコンの理由がはっきりしましたね。

 どこか暖かく、優しい匂い、目を開けると、見慣れないベッドに寝かされていました、千秋お姉ちゃんは僕に抱き着く形で寝ていました、しかし真っ暗ですね、毛布をかけられてるんですかね?まぁいいや、しばらくじっとしていたいところですけど誰かが入ってきました、足音、声からして、フィリアさんでしょうか?

「あれ?さっきまで1本だったアホ毛が2本になってる、誰かいるの?」

 やっぱりフィリアさんです、千秋お姉ちゃんのアホ毛を布団の中にしまってみましょう。

「あれ?アホ毛が動いた?やっぱり起きてるよね?」

「バレちゃいましたか」

「おはよう、具合はどう?」

「別に何ともないですよ」

「そう、んで、その子誰?」

 あ、見つかっちゃった、さて、どうしますか?どう説明しましょうか?

「えーと、まずこの人の紹介から、従姉妹です」

「従姉妹さん、あ、もしかしてワープを使ったのかな?」

「ワープ?」

 もしかして、魔法の呪文とかですか?

「あれ?魔法知らない?それなら後で教えるけど」

「あ、はい、ありがとうございますじゃなくて、こっちの説明はしなくていいの?」

「いやだって、従姉妹なんでしょ?」

「確かにそうですけど、もっとあるじゃないですか、例えばなんでいるのとか」

「だってワープ使ったんでしょ?」

 話終わっちゃったよ、えっとまぁ、そういう事にしますか、これ以上言っても面倒くさくなるだけですし。

「大丈夫?立てる?」

「大丈夫ですよ、ほら、千秋お姉ちゃんも起きて」

「うーん、あと50分だけ」

「起きて、お姉ちゃん」

「はい起きました」

 僕の声で起きたお姉ちゃんと手をつないで客間に戻ると、アイリスさんとアフロさんがいました。

「おかえり、何故か1人増えたような気がするけど気にしないわ」

 気にしてくださいアイリスさん。

「ところでさ、私達今日泊まるとこが無いんだけどさ、どうしたらいいの?」

 あ、もう外が暗くなりつつありますね、どうしましょうか?

「それじゃあ今日は家に泊まりなよ、使ってない部屋があるから、その部屋を使ったらいいよ」

 申し訳ない気持ちでいっぱいですが、ここで泊まらなかったら野宿ですし、お言葉に甘えましょう。

「本当にありがとうございます、ただ人助けしただけなのに」

「いいよいいよ、それに、あれは大事なものだからね、それぐらいしないと恩は返せないしね」

「ねぇ、私の事に関しては説明しなくてもいいの?」

 千秋お姉ちゃんがそう言うと、フィリアさんが僕の手を掴んで。

「それじゃあ説明している間、一緒にお風呂に入ろ?」

「ふぁ!?」

 僕はアフロさんと同じ反応をしていました。

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