第13話訪問者、あらわる(2)

「ラーニャ、何でここに?!」


オルメカは彼女の姿を見て目を見張った。


「お久しぶりです。オルむぐっ!?」


彼女はその名前を言う前にオルメカに口を塞がれた。彼は小声でその旨を伝えると、彼女はうんうんと頷き手をどけるよう目で催促した。


「オル……?ていうより、二人とも知り合い?」


アイシャは怪訝そうに眉を潜めその言葉を反芻した。


「いやいやいやいや!!何でもないですよ!この子は親戚の子なんですよ!!な?」


その藍色の瞳でオルメカがラーニャにプレッシャーをかけると、ラーニャはひきつった笑みを浮かべながら、


「ええ、そうなんです!!ね、兄さん?」


と言う。オルメカとラーニャは乾いた笑い声を響かせ、それをアイシャはやはり怪訝そうに見つめた。釈然としない顔で彼女はまあいいけど、と言うと店の奥へと姿を消していった。


「何でここに来たんだ!?」


それを見届けるとオルメカはらしくもない乱暴な調子でラーニャに問う。


「隣町でも噂になってたんですよ。アイシャさんに言い寄る謎の美青年がいるって。」


「そんなことは……」


彼が形ばかりの謙遜をすると、ラーニャはすかさず、


「あと無様に振られているとも。」


それを聞いた彼の顔から表情が消えた。


「そんな女性なら会ってみたいなって思って来ちゃいました。」


そう笑って話す彼女には陰りが少し顔を覗かせている。あれほど母のことを思いやっていた彼女があの町を離れたのは恐らくそういうことであろう。


「あ、そうだ!!あのときチューリップありがとうございました。」


思い付いたように彼女が頭をペコリと下げた。 律儀だなぁ、と彼は微笑んで彼女の頭を撫でていると、


「おーーい、いちゃつくなら外でやってくれ。」


二人がビックリしてその声の方を見ると、店主が微妙な顔をしてこちらに目を向けていた。

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