第6話酒場にて

オルメカはラザナルに着くと、まずは情報収集から始めようと思い近くの酒場に入った。店内は暗すぎず、かといって明るすぎない雰囲気で、今日は天気もよく休日だからか昼間にも関わらず、10人程の客が酒を楽しんでいた。オルメカが空いている席に腰かけると、店主らしき人が話しかけてきた。


「兄ちゃん、酒は何に……ってこりゃすごい美形だなぁ。」


オルメカが帽子を脱ぐと、店主は驚きの声をあげた。その言葉にオルメカがやんわりと微笑んでいると、周りで酒を飲んでいた2人組の男たちが寄ってきた。


「ほんとだぁ、こりゃすげー。」

「かっこいいなぁ、兄ちゃん。」


ひとしきりオルメカの美しさに驚いた後、2人のうち小太りの方が、


「店長、酒を追加で三つ!!」


と勢いよく言った。


「味はどうするんだ?」


そう店主が聞くと、彼は少し悩んだあとに、


「俺らはいつものを!兄ちゃん、何にする?」


とオルメカに視線をよこした。


「いいんですか?」


そうオルメカが遠慮がちに聞く。


「おう、遠慮すんな!」


彼は人の良さそうな笑みを浮かべてそう答えた。


「じゃあ、お言葉に甘えて。酒は店長のおすすめでお願いします。」


「あいよ!!」


店主が酒を取りに店の奥に入って行くと、小太りの方が話を再開する。


「兄ちゃんはこの町初めてか?」


「ええ、つい先程隣町から来たところです。」


「へえ、そうか!!じゃあ、俺たちがこの町を案内してやるよ。俺がジャックでこいつがトムな。よろしく頼むぜ。」


そう言うと二人は手を差しだした。


「よろしくお願いします。」


オルメカは二人と握手しながらそう答える。


「いつまでここにいるんだ?」


「決めてません。仕事が終わったら帰ることになっているのですが……。」


「へぇーー。じゃあ、宿でも紹介しようか?」


「本当ですか?ありがとうございます。」


オルメカはそう言うとお得意の笑みを二人に向けた。


「いいってことよ!それと、今日の夜空けといてくんないか?案内したい所があるんだよ。」


ジャックの言葉に店主は、


「どうせ『茨姫』のところだろ?」


と笑った。すると、トムはむすっとした顔をして


「どうせってひどいなぁ。あと、先にネタバレすんのやめてくれ!」


と言う。


「そりゃ悪かったな。いやぁ、こいつらね、あんたみたいな美形を見ると必ず『茨姫』のとこに連れてくんだよ。どうしても『茨姫』が落ちるところを見たいって言ってね。」


店主はカウンターに酒を3つ出しながらオルメカに話し続ける。


「ま、あんたみたいな美形なら『茨姫』もコロッといっちまうかもな!!」


とウインクを1つよこした。


「いやぁ、私なんてたいしたことないですよ。でも、その方一度見てみたいです。」


オルメカは目的に早くもたどり着いたことに喜びながらも、それを顔には出さないように気を付ける。


「お、兄ちゃん乗り気だな?じゃ、まず宿に案内してやるよ!!早く酒を飲んじまいな!」


その言葉にオルメカたちは酒を飲み干すと、ジャックが3人分のお金を払った。


「店長、後で結果を報告してやるよ。」


トムがそう言うと、店主は


「おう、楽しみにしてるよ。まいどあり!!」


と大きな声で答えた。

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