第5話
椿に子供を預け、一安心したところで。
誰かに聞かれた訳でもないのに。
それを持って、そそくさと
「
厨に
「おかえり香夜」
男。どこからどう見ても、どの
だというのに。少し長めの紅い髪を、耳にかけ直す仕草や。
椿も大人の女として、なんとも言えない
「ただいま」
やっと
冬の
そこまで考えて、香夜は
立場が逆であろうと、
「…やっぱり、食事抜きで動くものじゃないわね。目が回りそう」
「そうは言っても、香夜が欲しい物を我慢出来るはずがないしね」
「ご名答。さすが柊、私のことをよくわかってる」
側仕えの者たちは、浅からず長年香夜と付き合っているので。よく知っているし、理解していた。
何を考えて、どう行動するのか。それを理解してさえいれば、振り回されるどころか。むしろ付き合いやすいと、柊たちは思っていた。
「いい匂い。たまらないわ」
「出来立てだからね、特に今日のは自信作」
現在火にかけている、鍋の
その鍋の隣では、キノコと豆腐とネギの味噌汁がすでに完成していて。米も炊きたてが出来上がっていると聞かされれば。はしたないと言われようとも、今すぐ食らいつきたい
「…あ、そうそう。いい匂いにつられて、うっかり忘れるところだったわ。柊に頼みがあるのだけれど」
「消化に良さそうなお粥なら、もう作ってあるよ。例の子供が起きたら温めなおそう」
香夜の朝ごはんとは別に、小さな
「さすが『柊』」
「あらかた話は聞いたからね」
「…誰から?」
「屋敷の入り口の桜が、嬉しそうに話していたよ?あの大桜が生き返ったって」
つい先程の出来事だというのに、話が屋敷中に
「…今が盛りの花たちは、やはり力が強いわね」
「俺や椿と違って、それだけが楽しみのようなものだから。そりゃ会話も弾むさ」
料理を皿に盛りつけて。取れたての菜の花で作った、油揚げとの
「
「
「なら今度は、見て楽しむ花も手に入れられるかしら」
「出来たら真っ先に、香夜に持ってくると言っていたよ」
「それは嬉しいこと」
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