第一章/第五話 挫くもの:惑星開発者
もうすぐ、日が暮れる。
朱みを増していく空の下に、街の建造物群の稜線がおぼろげに刻まれていた。
ぼくは定速度に設定した
この荒野の惑星に存在する、唯一の街の名は、ナピという。
そう、この星と同じ名前だ。新銀河系連盟の命名ルールにおいては、その惑星において最初に造成された都市には、星と同じ名が与えられることが多い。だからぼくの住む惑星はナピであり、ぼくの生まれ故郷の街もまたナピということになる。
行政上の区分としては、ナピの街は『惑星区中心都市』という定義だそうだが、
街の中でもっとも背の高い建造物が、たった五階建ての
ぼくが生まれ、これまでずっと暮らしてきた街だ。
ホバーの速度で接近するうちに、中心街の建築群の暗い陰の中に、より低く、そして背の丸い複数の影が浮かび上がってくる。
ナピの住居街だ。
この星の建築物の多くは、半円形のドーム群が短い通路を介して、横に連なった形状をしている。
それはナピ固有の形式ではなく、同系統の環境を持つ惑星群においてはごく一般的な、『
建物の表面は大地よりもやや明るい茶褐色で、これはナピ由来の土壌と専用の培養液を混合して造られた加工建材に由来している。生成のコストが小さいことはもちろんのこと、耐候性にも非常に優れており、ナピの猛烈な太陽光線や気温変化にもものともしない。
コンソールの脇のハンドルレバーを引いてホバーの速度を落としながら、住居街のメイン・ストリートに入る。
ナピの街の南側に広がる住居街は、余裕をもって区切られた敷地内に、等間隔をもって前述のドーム状建築が並ぶ――という景色が、ひたすら続いている。道路は隅々まで丁寧に紅土素材によって舗装されており、日々降りつもる砂の清掃も行き届いていた。
この街を「無機質で味気ない」と形容する人々がいることは、ぼくも承知している。しかし、ぼくにとっては馴染み深い景色だったし、この星の持つ要素を十分に生かした、ある種の暖かみのある光景だとも思っていた。結局は好みの問題なのだろう。
ぼくは、このナピの大地を占める、紅い土と岩の色が好きだった。
その紅色を構成物質ごと引き継いた、自宅を含む街の色彩にも、少なからぬ愛着を抱いていることは自覚している。
広々としたメイン・ストリートを、ホバーで進む。
周囲に人気はなかった。今後の人口増大に対応するために、特に街の外縁部には空き家が多いのだ。
一機の大型
朱色が次第に暗みを帯びていく、空の下で。
ぼくはホバーを駆って自宅へと進みながら、あの崖下で起きた出来事を、ひとつずつ思い出していた――。
◆
琥珀色の髪の少女を、あの崖の底にひとりで置いていくことに、躊躇いがなかったはずはない。
いずれにしろ、あの少女――「エアリィオービス」と名乗った――は、立ち去るぼくを
少女の態度からは、出会い頭の辛辣さはほとんどなりを潜めていた。
わたしは問題ない、心配はいらない――という意思を、彼女は示した。
「明日、必要なものを持って、必ず戻ってくる」
そう言い残して、ぼくは琥珀色の髪の少女に別れを告げた。
『明日』という単語の意味すらも伝わっていないのは明白だった。
彼女は、少しだけ困惑を湛えた視線で、ぼくを見据えていた。
身振りによるコミュニケーションには、あまりにも限界が多いと痛感する。
日暮れまでには、街に戻らなければならなかった。
可能な限りあの洞穴に残って、エアリィオービスとお互いの情報を交換するべきだとは思ったが、そうはいかなかった。ぼくがあの洞穴に遅くまで残るという事実すらも、彼女と約束した『秘匿』に影響する恐れがあったからだ。本来であればぼくは、崖下の地質調査の下準備をすぐに終えて、日中に帰る予定だったのだから。
もし、下手に日暮れまであの洞穴に居残ったりしたら、街の警邏局や惑星開発局支部辺りがぼくの消息を追って、この崖下までやってきてしまうかもしれない――そんな終わり方だけは、避けねばならなかった。
――絶対に、わたしのことを、外の誰にも知らせないで。
エアリィオービスと名乗る少女は、再三、彼女の言語でぼくに告げた。
他の何者からも、彼女の存在を、隠し続けること。
秘匿。
それは、あの崖下の少女とぼくという存在をつなぐ、代えがたい一種の契約として、今や履行されたのだ。
もちろん、わからないことばかりだった。
彼女が人から身を隠して洞穴に潜む理由が、ぼくと彼女をつなぐ言語的連絡網の乏しさ故に伝えられないからなのか、それとも彼女がその理由を押し隠したいからなのか、そのどちらかなのかすらも、今のぼくには判別できないほどなのだ。
しかし、少なくとも。
エアリィオービスの様子は、疑いようもなく、切迫していた。
命の危機すらも示唆していた。
この惑星に意図せぬかたちで降りてしまった彼女が、偶然近くにあった天然の洞穴に潜み、身を隠し続けることこそが、自身を無事に保つ最適の手段なのだ――そのようなシチュエーションを、彼女は間違いなく信じていた。
事実は、まだなにもわからないと言っていい。
しかしぼくは、その彼女の意思を尊重すると決めていた。
そうしない理由が、別段見つからなかった。
◆
街から離れた谷の底。
そこでぼくを待っていた、小型宇宙船の残骸。
琥珀色の髪の少女・エアリィオービスと、彼女と交わした秘匿の約束。
昼に崖下に向かった時には、想像もしていなかったような事態――。
それを、この身に起きた現実として、噛みしめながら。
ぼくは、自宅へと近づいていった。
……そして、もうとっくに気がついていた。
なにかを打ち壊すかのような、激しく物々しい、尋常ならざる音響が、聞こえていることに。
まさに、ぼくの家のある方向から。
◆
ここで、やや遺憾ながら。
『惑星開発者』について、少し説明をしなければならない。
この物語の少なくとも一部には、惑星開発者と呼ばれる人々が関与しており、時にはその中心を飾ることになるからだ。
惑星開発者という特権的職能の発祥は、現代の新銀河系連盟が確立される以前――つまり、約千五百地球年以前の、もはや霞がかってしまった旧連盟の時代にまで遡るとされている。
ぼくたちの生きているこの世界の、中枢意思決定機関――アストライオスの大宙域政府。
その宙政省・惑星開発庁に、ある限られた人々が所属している。
彼らは、開発庁が開発を遂行する一定規模以上の惑星や人工環境群に対して、一名から数名が配属され、各区域における『惑星開発支局』の代表者として、その開発にまつわる包括的任務の責任を一挙に引き受ける。
それが、惑星開発者だ。
この公的な説明は、かなり誤解を生じるところがあると思う。彼らは、単なる中央政府から派遣される役人とは一線を画しているからだ。
表現が少し難しいけれども――惑星開発者と呼ばれる人々は、法規上のそれと併せて、ある種の特殊な精神的立ち位置を、一般通念においても認められているのだ。
開発者が管轄する領域は、とても幅広い。
一般的な開発行政における立案と施行のみならず、連盟・星域の各法律に基づいた司法執行権の行使、更には管轄地点における地質特性等の研究や、地域住民への告知や仲裁――開発対象惑星のあらゆる側面において、全面的な決定権を与えられている。
特筆すべきは、そこに大宙域警邏軍の指揮官級権限すら含まれているところだろう。
これは、惑星開発者にのみ与えられた特権、ヘカテー衛星の機動権限に由来している。
新銀河系連盟が管轄するすべての居住衛星に配備され、このナピにも合計八機が衛星軌道周回を続けている、限定的収束零導波照射衛星――ヘカテー衛星。
その操作権と起動能力を、法的にも“物理的にも”唯一有しているのが、神経系に特例の処置を施された惑星開発者のみなのだ。これは、開発者が公的に『ヘカテー帯域調整者』と呼ばれる所以でもある。
ヘカテー衛星は、この世界における最大の劇薬と言えた。
その使用は、通常では大規模な地形の修正といった開発任務に限定される。しかし、非常時にはその限りではない。照射衛星群は、その機能と特性故に、当該地点におけるほぼ絶対的な兵器としても転用されうるからだ。
そう、惑星開発者は、究極の鎮圧能力を握るもの――挫くものとして、宙域政府の立場を体現する存在でもあった。
ヘカテー衛星という莫大な力を一手に背負う責任と代償は、あまりにも大きい。
以上のようなその立場の特殊性や、求められる高い資質、そして門戸の恐るべきまでの狭さも相まって、旧時代より、惑星開発者はある種の聖職として見なされている。
基礎科学理論の確立と、その応用技術の進展段階に幕を下ろし、『空白』との調整が始まった時代――いわゆる十四箇条宣言の文言を借りるならば、『この宇宙空間における人類全体の拡張と発展』が、銀河系人類の主たる目的と据えられる、新時代の千年紀。
この時代において、惑星開発者と呼ばれる存在は、ぼくたち銀河系人類の、純然たる代表者と言えた。
◆
――その、人類の代表者のひとりが。
たった今、ぼくの視界の中で。
まったく見覚えのないビニール製のビーチチェアに、だるそうに脚を組んで寝そべっていた。
ぼくの家の、目と鼻の先だった。
ホバーを留めて、驚きと落胆に全身を震わせながら、ぼくは近づいていく。
……びくり、
と、その仰向きの体が、突如高電圧でも浴びたかのような上下動を表した。
立ち竦んでしまった、ぼくを前にして。
まるで何事もなかったかのように、チェアの上の長身が、シートから勢いよく上半身を起こす。
灰色の瞳を、眠そうにしばたたかせて。
――その人物は、実にのんきな調子で、ひらひらと、ぼくに手を振ってきた。
「ケイヴィくん、おかえり」
言いながらもう一方の手で、ビーチチェアの脇に掛けていたおかしな鍔付き帽をぶんどり、すとんと自身の頭に乗せる。
長髪の銀白色がナピの微風に晒され、シートの上でさらさらと揺れていた。
自信に満ち満ちた笑顔が、恐ろしい。
メロウディア・ユリシーズ。
この小規模開発惑星ナピに配属する、唯一の惑星開発者。
そして、他ならぬぼくの姉さんだった。
この時。
既にぼくの意識は、メロウディア姉さんの眠たげな顔には、もう向けられてはいない。
向けている場合ではなかった。
――目の前にあるぼくの自宅が、現在進行系で、二体の重機によって粛々と破壊されていた。
「なに、これ……姉さん?」
メロウディア姉さんは、自宅――つまり、ぼくと姉さんが毎日暮らしている家に、そこでようやく視線を向けた。
その、「おかしなことでもある?」と言わんばかりの表情にも。
ぼくらふたりの眼前に展開される状況――自宅の容赦ない破壊行為に対しても。
ぼくは、まったく笑えない。
困惑さえもできない。
――ふあぁぁーーあ……っ、と。
ぼくの質問は、当然のように無視された。どこから持ってきたのかもわからないビーチシートから降りると、メロウ姉さんは両腕を上げて、実に暢気な伸びを見せた。
並んで立つと、姉さんはぼくをやや見下ろす格好になる。
ぼくの背丈はこの銀河系連盟における成人男性の平均とまったく同じなのだが、姉さんはそれよりも五センチメートル高い。
朱みを増す夕暮れの中で、その衣装のシルエットが、嫌でも目に入る。
メロウディア姉さんは今日も今日とて、『最先端の流行とわたしの趣向を合わせた』という、ぼくから言わせれば支離滅裂なスタイルの服装を身に纏っていた。
やけに丈の短く切られた縮れた生地のシャツの上に、再現革製と思しき褐色のジャケットを着重ねている。何故かリベットで補強された派手なジーンズの足下に見えるのは、これも意図がいまひとつわからない滑車付きの靴だ。なによりも目立つのが、やたらと大きく、過剰なまでに
姉さんの服の趣味はしばしば移り変わる。しかしこのナピにおける常識で見れば派手すぎる、奇妙なものという点では統一されていた。
そして一度決めたら、その系統の服をわざわざ遠い星系からひたすら取り寄せて、着続けるのだ。
一週間ほど前のある朝、顔中に疑問符を浮かべたぼくの前で、軽やかにくるりと一周して、「まさしくこれぞ、我が開発者の名に符合した、カウガール・スタイル!」と姉さんは教えてくれたのだけれども、その「カウガール」なる単語がいったい何を意味しているのかについても、ぼくは未だにわからないでいる。
この辺境のナピの街でも、もちろんファッションに気を遣って流行の服を着る人々は少なからず存在した。しかし、姉さんのような異常な服飾趣味の人間は他に存在しないと断言できる。
例のカウガール・スタイルとやらの巨大な帽子の下で、姉さんの白に近い銀色の髪が、無邪気になびいていた。
メロウディア姉さんの容姿については、その頭頂から足先に至るまでのありとあらゆるところについて、『高度なAIによって人間を模して造られた、それでも人間ではないもの』という第一印象を、ぼくはどうしても捨てきれないでいる。
ナピの街の人々は、しばしばメロウ姉さんに向けてなんらかの形容句を添えて美女などと呼んでいたし、開発局支部の姉さんの部下にも、その容姿を絶賛する人物がひとりいるのを知っている。
しかしぼくにはどうも、その反応が的を射ているようには思えない。
よくよく見れば必ず認識できるはずの、姉さんのルックスが内包している、ある種の違和感に、そうした美辞麗句はまったく着目していないからだ。言わば、不気味なまでの整然さ――とでも表すべきものを。
ドローンの放つ成形フィールドの衝撃力で曲面の壁が取り壊され、マニピュレーターによって天井が持ち上げられている、自宅を前にして。
ようやく、再び疑問を口にすることができた。
「一体、これは、なにを……やってるの?」
堂々とした、揺るぎのない声音でもって、いつもの通りメロウディア姉さんは答えた。
「見てわかんない? 家を壊してる」
「そういうことを言ってるんじゃ――」
まるでぼくの声に応えたかのように、ナピの街が公共物として保有する自動操縦ドローン群の汎用クレーンの先端が、唐突に獰猛な音を上げて自宅の壁面を凄まじい勢いでぶち破った。
毎日ぼくが使っていた、キッチンの中央部だった。
絶句してしまう。
その間に、姉さんが補足した。
「改装してるのよ」
「ぼくになにも言わずに……。一体、いつ決めたんだ……?」
この辺りでようやく、ぼくの狼狽ぶりが多少は気になりはじめたのか――メロウ姉さんは、その灰色にくすんだ瞳で、にやりとぼくを見据えて、応えた。
実にのんきな返答だった。
「ええっと、そうだなあ……仕事上がりに思いついて、見積もってもらったから……さっき? だいたい一時間前くらい?」
少なくとも。
この自宅の法的な所有者は、姉さんではなく、ぼくということになっている。
――あのねえ、
と、ぼくが声を上げようとした瞬間、再び申し合わせたかのように、クレーンの傍らに佇んでいた巨大な無人造成機がいきなり猛烈なターン機動を開始し、これまでとはまったく別種の高質な異音を上げつつ、破壊された壁にマニピュレーターを潜り込ませて、めまぐるしい速度で瓦礫の回収作業に取り組みはじめた。
聞いた覚えもない自宅の全面改築作業は、容赦なく進行していた。
声も上げられなかった。
丁寧かつ徹底的な、ドローンの手による正確無比な作業に、一息ついてから。
「どうして……?」
という掠れ声を、なんとか喉から絞り出すことしか、ぼくにはできなかったのだ。
「いやさあ、だって」
姉さんは、わざとらしく首を横に傾げて、まるで考え込むようなポーズを見せてから。
やはり、平然と言った。
「ずっと同じ内装だったじゃない? ケイヴィ君も、正直、そろそろ飽きてきたでしょ? というか、わたしは飽きたんだよね。どうかな?」
笑顔すら浮かべながら、メロウ姉さんは逆に尋ねてきた。
――まるで、身勝手で理不尽な憤りを表す弟のぼくに対して、姉の自分が理性をもってなだめているかのように。
まったく。
冗談じゃない。
少しは、わかっていただけたかもしれない。
ぼくの姉さん、惑星開発者メロウディア・ユリシーズは、若干風変わりなパーソナリティの持ち主だった。
姉さんは、自分がこうと決めた行動について、後悔や疑念といった当然の感情を、原則的にまったく抱かない。
そう、まったく、だ。
メロウ姉さんが、自分の選択に迷ったり後悔する様子を、同居を始めてからおよそ一地球年半の間に、ぼくは本当に一度として見たことがない。
それがどれだけ唐突だろうと、身勝手だろうと、周囲の人間(主に、ぼくだ)をいくら困惑させようとも、「メロウ姉さん自身にとって正しいこと」は、「この宇宙すべてにとって正しいこと」という具合で、姉さんは決断して実行に移す。
その前提に、とりたてた根拠や理論といったものは、存在しないことすらある。
だからこそ、それゆえに、反論や反証もまた意味を持たないのだ。
……そもそも反論なんて、最初から存在すらしていないよ。
そうとでも言わんばかりに、メロウディア姉さんという人物は、この銀河系の辺境で、毎日堂々と、自由に楽しく過ごしている。
メロウディア姉さんについての逸話には、まったくこと欠かない。
ついこの間、姉さんがぼくが大切にしていた机を勝手に売り払ったエピソードなどは、まだ容易い。数ヶ月前に動植物に関する法令を無視して、勝手に持ち込んだ孔雀をぼくに飼わせた話はどうだろうか? 勝手にぼくの眼球の精細な型をとって、家の監視システムに侵入した話は? 自作した時限爆弾を貯蔵庫で炸裂させた時などは、本当に死を覚悟した。
そして、今日はこれだった。ぼくにまったく許可を取らない、自宅の破壊。
姉さんは、この街を含む惑星ナピ全体の代表的政治執行者のひとりだった。その任務における優秀さにおいては、開発局支部にも市長室にも一目買われているらしい。
しかし、私生活については、自由奔放を絵に描いたような性格の持ち主だった。
ぼくは毎日のように、そんな姉さんの気まぐれに付き合わされている。
メロウ姉さんはおよそ一年半ほど前に――この社会で一般的に用いられる地球基準時間の一年半ほど前に、惑星開発者の公式認定を受けて、この惑星ナピに配属された。
そしてぼくの土作りの家に住み込み始めてから、ぼくの生活は豹変を余儀なくされたのだ。……良い意味においても、悪い意味においても。
メロウディア姉さんという人物の存在は、あらゆる面で衝撃的だった。
両親を共にする実のきょうだいが存在することさえも、それまでのぼくは知らなかったのだから。
――ふっふっふっ。
動力系のエネルギーでもって容赦なく殴りかかるドローンに、なすすべもなく崩されていくぼくの自宅。
その様子を腕を組んで眺めながら、メロウディア姉さんは不気味な笑い声を上げた。
「まあ、許してよ」
ぼくを、その輝かんばかりの笑顔で見て取ってから。
素敵な補足情報を、姉さんは教えてくれた。
「新しい冷温保存庫は、広くていいやつを選んどいたから」
言葉が出なかった。
溜息も出ない。
崖下に隠れ住む謎の少女すらも、脳裏から吹き飛んでいた。
姉さんの、この無根拠な自信と奔放さが、ぼくはたまに羨ましくなる。
もちろん、たまに、だけれども。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます