第20話 神帝暦645年 8月22日 その4
なんとかアマノを説得して、
「ふう。あやうく
「うふふっ? 自由が欲しいのですか? やはり、
「いやいや! 自由と言っても、変な意味じゃないからな!? 精神的自由って意味だからな!?」
「言い訳は見苦しいよー? お父さんー。でも、なんで男性って、愛する奥さんが居ながら、他の女性を視ちゃうんだろうねー?」
「ウキキッ。おっぱいがいけないのですウキキッ」
ヒデヨシの一言をユーリが耳に入れ、じと眼で彼を睨みつけるのである。
「ウキキッ!? なんで、わたくし、こんなにユーリ殿に睨みつけられているのです? ウキキッ!」
なんか知らんが、ユーリは自分の胸のサイズを気にしている風なんだよな。朝起きたら、コップに2杯、牛乳を飲んで、さらに洗面所で鏡を見ながら、胸をマッサージしているそうだ。それを視ていたアマノがユーリに牛乳を飲んでも背が伸びるかもしれないけれど、胸にはあまり効かないのですわ? と忠告をしているそうだが、聞く耳を持たないらしい。
まあ、世の中、おっぱいに釘付けになる男は確かに存在する。かという俺だって、スイカのようなおっぱいをぶら下げている女性が街中を歩いていたら、アマノが隣に居るというのに、ガン見してしまう。それで、何度、アマノの本気の肘打ちで俺の横腹をえぐられてきたことか……。
「うふふっ? やっぱり、
「だ、だから、その
「ぶひひっ。首への致命の一撃を防げるので、
「首への致命の一撃をしてくるモンスターって言えば、ニンジャとかアサシンだったっけー?」
「まあ、相手をすること自体が面倒くさいから、なるべくなら、出くわしたくないけどな? この
「マツダイラ幕府の諜報機関と深い関わりを持っているという噂があるのですわ? でも、幕府はニンジャとの関わりを
「まあ、幕府が法律で禁止しているはずの殺人を生業としているモンスターだからなあ。要人暗殺として役に立つだろうけど、関係が
まあ、要人暗殺が起きたって話は、俺が40年生きてきて、この国では1度や2度程度だもんなあ。それも、闇夜に紛れての暗殺ではなく、
「ニンジャが爆殺事件を起こすことはないだろうってことで、過去の要人暗殺には関わっていないってことになっているけど、本当のところ、どうなんだろうな?」
「ウキキッ。ニンジャと言えば、毒殺なのです。目立つような爆殺を選ぶとは思えないですウキキッ」
ヒデヨシも俺と同意見のようである。
「うふふっ。ニンジャ・オブ・ニンジャと言えば、伝説のハットリなのですわ?」
「あれ? キング・オブ・ニンジャってのもいなかったっけ? 確か、モモチって奴」
「ぶひひっ。ニンジャ・マスターのタラオの存在も忘れてもらってはいけないのデュフ」
「ウキキッ。どれも伝説のモンスターばかりなのです。うちの団長も、そやつらに会いに
団長が出会えないのは、ただ単に、ニンジャたちに命の危険があるから、出てこないだけじゃねえの?団長は火と土の合成魔法である
「ぶひひっ。話は変わるのデュフが、今度は何のクエストを受けるのデュフか? ツキト殿」
「ああ。
「
「まあ、不思議な点については、ジョウさんとは同意見だ。でも、俺たちのメシの種となってくれるなら、季節外れでも、構わないけどな?」
「ぶひひっ。ツキト殿は業が深いのデュフ。出来るなら、もっとクエストを受けて、ぼくちんのお店にお金を落としてほしいところデュフ」
「ジョウさんも大概、業が深いよな? まあ、冒険者稼業に連なる商売だし、仕方ねえか」
俺がへへっと笑うと、ジョウさんもぶひひっ! と気持ち悪く笑い返してくるのである。こういうところがジョウさんが女性にモテない秘訣なんだろうなあ? と思いつつも、俺は口に出さないように注意するのであった。
「ぶひひっ。同じ穴のムジナといったところデュフね。さて、ユーリ殿? どうせなら、呪符用ポーチを買っていかないか? デュフ」
「んー? あるなら便利だけどー? でも、ポーチひとつで銀貨2枚、加工料でさらに銀貨5枚追加もするんでしょー? ちょっと、即決で決めれないよー?」
「その害獣をしまっておくために買うのはどうか? という提案なのデュフ。胸元か横腹に、呪符用ポーチをつけて、その中に、その害獣を入れておけば良いのデュフ」
「ああー! なるほどー! それは良い考えだねー? でも、ねずみのこっしろーくんを害獣呼ばわりするのはやめてほしいところだよー?」
「ぶひひっ! ぼくちんから言わせれば、自分に懐かない小動物など、全て害獣なのデュフ!」
まあ、邪悪なジョウさんに懐くような小動物がいるようなら、逆に視てみたいけどな? ジョウさんにお似合いの小動物なんて、毒蛇くらいじゃねえのか? あー。訂正。毒蛇でもジョウさんになつくわけがないか……。
「で? ユーリ。胸元に呪符用ポーチをつけてみるか?」
「そうだねー。横腹あたりは呪符をポーチに入れたいものねー? あと、こっしろーくんの声を戦闘中に聞くのなら、耳に近い胸元のほうが良さそうだしねー?」
「ん? 害獣の声を聞くのデュフ?」
おおっと! しまった! ユーリ、こっしろーがしゃべれることは、特にジョウさんには知られないように注意しとけって、家で教えてただろ!? しょうがない、ここは本当のことに若干、嘘を交える会話術を使ってみるか……。
「あ、ああ。ユーリは使い魔との感覚の共有性が高くてよ? なんとなくだけど、使い魔がなんて言っているかがわかるんだよ。なあ? ユーリ」
「う、うーん! そうだよー? 決して、こっしろーくんがしゃべるわけじゃないんだよー!?」
「ぶひひっ。害獣如きがニンゲンさまの言葉をしゃべれないことなんて、わかりきっているのデュフ。しっかし、使い魔と感覚を共有できるのは便利デュフね? ぼくちんも、使い魔を飼ってみようかと思ってしまうのデュフ」
ジョウさんが使い魔を欲しがるなんて、めずらしいよな? そもそも、小動物を害獣呼ばわりしてるくせにな?
「なあ、ジョウさん? 使い魔を使って、風呂を覗き視するのは、立派な犯罪だからな?」
「し、失敬デュフね! ぼくちん、風呂を覗き視した時に、男の裸体を視てしまって、ゲロゲロゲロっとなって以来、覗き見は金輪際、やらないことを心に誓ったのデュフ!」
「おーーーい、おまわりさーーーん! ここに犯罪者がいまーーーす!」
「や、やめるのデュフ! 10年前の話デュフ! 時効なのデュフ!」
あれ? 覗き見に時効ってあったっけ?
「まあ、いいか。ジョウさんが街の警護に連れていかれたら、防具の修繕をよそに頼まなきゃならなくなるしな。ここは眼をつむっておくぜ? その代り、ユーリの呪符用ポーチと鎧の加工料を半額にしといてくれよ?」
「し、仕方ないのデュフ……。くれぐれも、通報はやめてほしいのデュフよ?」
「わーーーい! さすが、お父さんー! ジョウさんの弱みに付け込むのだけは上手いよねー? じゃあ、ジョウさん。胸元に呪符用ポーチがつけれるように紐を鎧に付けてくれるー?」
「くっ! 害獣のために仕事をしないといけないと思うと苦痛なのデュフ! でも、可愛いユーリ殿の頼みなら、聞いてあげるのデュフ。30分ほど、待っていてほしいデュフ」
ジョウさんはそう言うと、ユーリの革鎧を木箱から取り出して、再び店の奥へと向かっていくのであった。
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