第14話 神帝暦645年 8月21日 その10
セ・バスチャンさんがううむと唸りながら腕組をしている。そりゃそうだよな。
「わかったのでゴザル。当家としても、館の損害を考えれば、金貨40枚以上は出せないのでゴザル。あなたたち4人にこの依頼を任せるのでゴザル」
セ・バスチャンの決定に思わず、俺はほうと言ってしまうのである。
「あんた、なかなかに肝が座ってんなあ。俺は依頼を引っ込めるとばかり思っていたぜ?」
「かの有名な【
「ウキキッ。こちらとしても、そちらがわたくしたちの情報を調べていたとは意外なことなのですウキキッ」
ヒデヨシの言う通りだ。初めて依頼を出す時って言うのは、依頼者はその辺を調べるのをすっぽり抜け落ちていて、痛い眼を視て、次からの依頼では慎重に相手の素性を調べるって言うのにな?
「セ・バスチャンさんよ。あんた、本当に優秀だな。だけど、その優秀さが逆に裏目に出ない事を祈るぜ?」
「なあに。
「まあ、3大・
「A級冒険者が2人も在籍している
ちなみに
ちなみに
だが、
「A級冒険者が2人も居る
「そうだぞ、ユーリ。A級冒険者ってのは、そもそもニンゲンをやめないとなれないからな? 今の世には、ニンゲン族では、A級冒険者ってのは12名しか存在しないんだ。ヒノモトノ国には大体1500万人くらいのニンゲン族がいると統計では出ているけど、マジでほんの一握りのニンゲンをやめた奴らが存在するってわけだ」
「うふふっ。1500万人のうちの12人って、とんでもない数字なのですわ。魔力A級のニンゲンのほうがよっぽど数が多いのですわ?」
「魔力A級は他のヒト型種族を含めてだけど、まだ200人近くいるもんな。それでも、魔力検査を受けているニンゲン族自体が少ないからであって、ヒノモトノ国全員のニンゲン族が魔力検査を受けてみたら、もっと増える可能性はあるもんな」
「ウキキッ。魔力検査をするための費用が高すぎるのが原因のひとつなのですウキキッ。いくら、そのニンゲン族が魔力回路を開く作業もあるからと言って、ぼったくりにもほどがあるのですウキキッ」
そうだよなあ。魔力検査とその魔力回路を開く作業で金貨30枚(※日本円で約300万円)を請求されるもんなあ。親が良い会社に勤めているか、もしくは貴族階級か、所属する
この費用がバカ高くて、D級冒険者の奴らはせいぜい、1系統しか、魔法を使えないのである。ユーリは団長の特別措置で費用を立て替えてもらったために風と水の魔法の2系統を使えるのだ。
まあ、その特別措置も、ユーリから溢れだす魔力を団長が感じなければ、それもなされなかったのであろうが。なんたって、最初から水、風ともに魔力C級なんて、そもそも希少なレベルだしな。
「ユーリ。才能ってのは、望んだからと言って、与えられるわけじゃないんだ。お前は自分に才能があったことを喜ぶんだな?」
「うんー。わかったー。でも、驕らずにいろって、お父さんは言いたいんでしょー? それくらい、あたしにもわかるよー?」
そうそう。才能があれば、それだけ、ひとに妬まれるんだ。ひとの嫉妬は怖いもんだぜ。ユーリは人知れず、誰かに妬まれ、憎まれる可能性があるんだからな? だからこそ、謙虚じゃなきゃだめなんだ。
「さて、話が横道にそれちまった。セ・バスチャンさんよ。俺たちが館から
「早いなら早いで越したことはないのでゴザル。できれば1カ月以内に頼みたいところでゴザル」
「そうかそうか。じゃあ、準備に三日、移動に一日。んで、
「そんなに早くやってくれるのでゴザルか? 少し、急ぎ過ぎなような気がするでゴザルよ?」
「まあ、予定ではそれくらいってことだよ。もし、俺たちが予想している相手が居るとしたら、もう3日ほど伸びる可能性はあるな。一度、闘ってみないと、相手への有効策を見いだせないかもしれないからな?」
「予想している相手でゴザルか。ちなみに何が出てくると思っているのでゴザル?」
「うーーーん。よくてリッチで、悪けりゃビッグ・リッチってところかなあ。まあ、ビッグ・リッチが居たら、俺たちじゃ相手にならないから、普通のリッチであることを願っていてくれよ」
「リッチでゴザルか。館に住みつけば、その家に富をもたらすという。うーーーむ。退治してもらうのは少々、迷う所でゴザル」
「まあ、富をもたらしてくれる代わりに、
「ウキキッ。
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