第17話 神帝暦645年 7月21日
「
「うふふっ。毒素よ、はじけ飛ぶのですわ!
結局、登録するだけでお金が支給されると言う魔法の言葉にいざなわれて、ユーリも魔法使いギルドに登録したわけなのだが、こういう
というわけで、ユーリはD級冒険者にランクアップしたこともあるので、息抜きも大切と言うことで、団長が3泊4日の早めの夏休みを俺たち3人にくれたわけだ。だが、結局、俺たちが訪れた場所は
「いやあ。やっぱり
親子水入らずの旅行のはずなのに、なんで団長がついてきてんだよ!
「いや、だって、先生だって、夏休みがほしいんですもの。それに、
「なあ、いっつも思うんだけど、なんで、お盆進行って毎年、ああも忙しくなるんだ? 忙しくなるってわかってるなら、前々から準備のひとつでもしておけばいいんじゃねえのか?」
【お盆進行】。それは1年に1度やってくる、8月15日の満月の日の1週間前から行われるモンスター大討伐のことを指すのである。
「ああ、嫌だいやだ。こんなに水着姿の女性陣が一生懸命に汗を流しながら、
「それなら、男連中だって、水着だろうが。大体、その赤と白のシマシマの全身水着はなんなんだ? 団長を視ていると、ムカムカするんだけど」
団長が、腕は肘の部分まで袖があり、足は膝の部分まで丈がある全身水着を着ながら、腰に手を当てている。しかも、ぴっちぴちのために、股間の部分がおもいっきりモッコリしているのだ。視ているこっちとしては、気分が悪いこと、この上無い。もしかして、団長は俺に向かって性的アピールをしてるのか? とさえ思えてしまうのだ。
「えっ? これですか? 誰かから聞いた言い伝えによりますと、由緒正しき血筋の方が、昔に着ていた水着と同じデザインらしいですよ? ちなみに、特殊な魔法陣も縫い込まれているみたいで、お値段なんと銀貨20枚(※日本円で約2万円)です!」
「はいはい。金の無駄遣いを見せつけられた気分だぜ。俺のハーフパンツ型の水着なんて銀貨2枚だぞ。なんで、そんなムダに意匠がこらされたもん、身につけてやがるんだ」
俺の着ている水着は腰から膝上までのハーフパンツであり、描かれている模様は大小のひまわりがあしらえられている。
「さあ? 別に意味はありませんよ。無意味なことにお金を使うこともたまには大切なのですよ。先生の水着にツッコミを入れるのであれば、アマノさんとユーリさんの水着はどう説明するのですか? ツキトくん」
団長が言っているのは、アマノの青色を基調とした夏に咲く花がいくつか描かれたワンピースの水着と、ユーリのフリルとスカートのついた桜色のビキニのことだ。
「まあ、女性はしょうがねえだろ……。きれいに着飾りたいのは水着であろうが変わりないんだからさ。でも、それでも、銀貨10枚程度の値段しかしねえよ」
「ツッコミどころはそこではありません。妙齢の女性と年頃の女の子が相応な水着をつけているのですよ? そこに何か言わなければならないことはないのかと、先生は言っているわけですよ」
「まあ、アマノには似合っているって言ったけどな。ただ、ユーリにはなんて声をかけるべきかが、思いつかん。あの年頃は敏感だから、変なことを言って傷つけさせたくないからなあ」
「それこそ、可愛いとかきれいとか言ってあげたら良いんじゃないですか? 別にお父さんをやっているからと言って、遠慮することはないでしょうに」
「うーーーん。それが出来たら、良いんだけどなあ? そりゃ、同い年くらいの男にでも言われたら、喜ぶかもしれないが、俺は40歳のおっさんだからなあ。余計にどう言ったもんかと悩んじゃうわけよ」
「ふーーーん。考えすぎだと思いますけどね。おや、浄化作業は終わったみたいですね。2人がこっちに来ますよ?」
団長がそう言うと、ユーリが右手を大きく振りながら元気よく走って、こっちのほうにやってくるのである。さて、どうしたものかなと。
「お父さーーーん!
「ああ、わかったわかった。今、行くから。んっと、それと、ユーリ。水着、似合ってるぞ。なかなか、可愛いじゃないか」
「ほんとーーー!? アマノさんとお店に行ったときに1時間くらい悩んだけど、良かったーーー! えへへー。可愛いかー。頑張った甲斐があったよーーー!」
団長が俺の横でニヤニヤしながら、俺の右肩を左手でポンッと叩いてくる。
「ほら、褒めたら喜んだでしょ? ユーリくんは褒められると伸びるタイプなんです。もっと、これからもちゃんと褒めてやってくださいね? お父さん?」
「うっ、うるせー! そんなことより、とっとと泳ぎに行くぞ、団長。あそこの
「えええ? 先生、水の魔法を使えませんから、あまり泳ぎは得意なほうじゃないんですがねえ?」
「えっ!? 泳ぐときって、水の魔法が使えると有利になるのー?」
「うふふっ。水を操作するのが、水の魔法なのですわ? でも、今はまだ
アマノがそう言いながら、俺たちの前に歩いて現れるわけである。おおう。なんか、水着ってエロエロだな。素っ裸よりもやらしいんじゃねえの?
「あらあら。ツキト、鼻の下が伸びているのですわ? あまり変なことをイメージしていると、水の中から出れなくなりますわ?」
「うっ、うるせー! 俺がそんな欲望に負けるわけがないだろっ。まったく、俺は美術的観点からアマノを視ているだけだからな?」
「本当ですか? では、腕を組んでも問題ないのですわ?」
うおっと! 胸、胸がーーー! 俺の左腕に、そのご立派なものを押し付けないでくれたまえええ!
「お父さん、なんだか嬉しそうだなー。じゃあ、あたしもお父さんと腕組するー! えへへっ」
「まったく両手に華とはこのことですね。先生もヨシノくん辺りを連れてくれば良かったですねえ」
俺が平常心、平常心、心頭滅却すれば腕に当たる胸の感触もまた気持ちよしっ! と念じている所に団長のつぶやきが耳に入るのである。
「んっ? そういえば、団長の奥さん連中は誰も、ついてこなかったな? なんだ? ついにハーレムが崩壊でもしたのか?」
「失敬ですね。ちゃんとハーレムエンドを迎えれるように、配慮を事欠いたことはありませんよ。そうではなくて、今年のお盆進行はきな臭いと感じたらしく、調査に乗り出すとかなんとか言ってましてね。それで、先生だけが【
「なんだー。団長って、あたしの水着姿が視たいとばかりに、ついてきたんだと思っていたよー」
「いや、それはもちろん視たいですよ? ですが、保護者がいる手前、そんなことを堂々と言えば、先生は番所送りになりますので」
よくわかってるじゃないか、団長は。まだまだ、ユーリを団長のハーレムの一員にするわけにはいかないからな?
「うふふっ。それは口実として、団長さんにゆっくり休暇をとってもらいたかっただけだと、私は思うのですわ? ここのところ、クエストに行って、戻って来れば書類の山に埋もれていたのですわ、団長さんは。何か理由をこじつけて、羽を伸ばしてほしかっただけですわ?」
「だと良いんですけどねえ。特にうちのヨシノは勘がすこぶる鋭い女性ですから。先生に休暇をとらせたいのが半分。本当にお盆進行が大変になるのが半分と言ったところじゃないんですかねえ」
「まあ、今は、お盆進行のことを考えるよりも、せっかく、きれいになった
「そうだねー。今年から、あたしもお盆進行に携わることになるもんねー。ああ、嫌だなあ。楽しいことのあとには地獄が待っているなんてー」
「そのための休暇なのですわ? ユーリ。さあ、めいいっぱい泳ぎましょうなのですわ。ちなみに浄化魔法が効きまくっているので、余り、水を飲みすぎないように注意したほうが良いのですわ?」
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