第16話 神帝暦645年 7月14日
「暑いよー。暑いよー。とけちゃうよー。海で泳ぎたいよー!」
「そんなこと言われても、海開きは今度の週末だしなあ? なあ、アマノ」
今日は神帝暦645年 7月14日。今日も今日とて、このクソ暑い中、ユーリをC級冒険者並の冒険者に育てあげるために、俺とアマノはユーリを訓練中である。ああ、暑い!
「うふふ。そうですわ。あと、
「
「まあ、
「うふふっ。そうですわ。私も来週、それがあるために
ちなみに冒険者ギルドとは別で魔法使いギルドがあるわけなのだが、こちらは研究職扱いであるため、別に冒険者としての
そして、魔法には、水、風、火、土と4系統があるわけなんだが、それぞれに年1回の行事があるわけだ。
その行事の中でもひときわ面倒くさいのが、水の魔法使いたちによる
「あれー? あたしはその
「ああ、そう言えば、ユーリを魔法使いギルドに登録し忘れてたな。てっきり、団長がやってくれるものと思っていたぜ。こりゃ、失敗したなあ」
「魔法使いギルドに登録してないと、何か不味いことでもあるのー? お師匠さまー」
「いや、別に登録しなくても良いんだが、小遣い稼ぎにはちょうど良いクエストを魔法使いギルドが独自に発行しているんだよ。で、冒険者ギルドと魔法使いギルドは行政的には別管理だから、魔法使いギルドのクエストを受けるには、そっちのほうで登録をしないとダメなんだよ」
「ふーーーん。縦割り社会の弊害ってやつなんだねー。別にいっしょでもいいんじゃないのー?」
なかなかに難しい言葉を知っているんだな。ユーリは。まあ、俺も面倒くさいシステムだとは常々、思っているんだがな。
「その代り、冒険者ギルドと違って、魔法使いギルドは登録しておくだけで、魔力の
「うわっ! それ、本当ー? 働かなくても食べていけるってことー?」
「いいえ? 支給されるお金で、
「そうだよな。駆け出しの頃はとにかく金がないからな。雀の涙といえども、金は金だ。もらえるのなら飛びつくってのが筋ってもんだしな」
「まあ、ぎりぎり黒字になる程度には支給されるのですわ。でも、お金をもらっている以上は、年1回の行事には強制参加なのですわ。特別な理由がない限りは、辞退できないのですわ」
「特別な理由って何ー? アマノさんー。例えば、骨折したとかの大怪我の場合は辞退できるのー?」
「片足を骨折した程度だと、治療魔法・
「うっわー。嫌な話だねー。この国の闇を覗き見た気分だよー。他にはどうやったら辞退できるのー?」
なんで、ユーリは辞退をする方法ばかりを聞きたがるんだよ……。まあ、良いか。
「んとな、確か、国が直々に発行するクエストの場合は、そちらを優先すべきとなって、魔法使いギルドの行事参加の辞退は可能になるんだ。そりゃ当然だわな。行政のトップは結局、国なんだ。国のお偉いさんが発行するクエストが優先されるのは当たり前な話だな」
「じゃあ、あたし、魔法使いギルドに登録して、年1回の行事が近づきそうになったら、国が発行しているクエストを受注するよー。そしたら、魔法使いギルドから支給されるお金はまるまる、あたしのふところに入ってくることになるよー!」
「まあ、国の発行するクエストを受注するには、色々と条件が厳しいんだけどな。B級冒険者かつ、魔法も2系統使えなければならないとかザラだからなあ」
「あと、国が直接、発行するクエストなだけあって、難易度はどれもAクラスなのですわ。私も1度、国からのクエストに参加したことがありましたけど、【
「あれなあ。団長が一度で良いから拝んでみたいとか言ってたやつだよな? 俺は条件が合わずに参加できなかったけど、一か月近く、クエストに出ずっぱりだったもんなあ。帰ってきた時のアマノの顔を見た時は、団長殺す! って感じだったもんなあ」
普段はニコニコ笑顔を絶やさないアマノであるが、あのクエストから帰ってきた時のアマノの頬はげっそりとこけ落ちており、眼には団長を殺す! と言う怒りの炎を宿らせていたもんなあ……。
「うわあー。アマノさんを怒らすって、団長は命知らずだよー。もちろん、得意の
「それが、団長はさすがにA級冒険者なだけあって、まともに喰らってくれないのですわ?
「うっわー。嫌がらせに本気で対処するって、大人としてどうなのー? そこは素直に洗浄されておくべきだと想うよー?」
「あれ? アマノ。団長のあの合成魔法の弱点を知らないのか?」
「えっ? どういうことですの? あれって、弱点がありますの?」
「ああ。
「ええ。もちろんですわ? 自分の防具等の表面に厚さ数センチメートルの石の表皮、いわば石の鎧を具現化しますわ? そこに火の魔法を組み合わせることで、石の鎧自体を熱して、水を蒸発させるのですわ?」
「そう。そこなんだよ、弱点は。あれって、石の鎧を熱するから、中の本人はめっちゃくちゃに暑いのよ。だから、長時間、使用することができないわけ。だから、長い時間、
「ああ、なるほどなのですわ! それは盲点だったのですわ! いつも、無効化された時点で、
「そういうこと。だから、今度、団長に何かされて、イラッとしたときには、なるべく長時間、
「うーん、でも、あたし、団長ならそれについても対抗策を講じていそうな気がするよー? だって、あの団長だよー? 研鑽に研鑽を重ねて、暑さ対策も施していそうな気がするよー?」
「さすがにそんなことないだろ。じゃあ、ユーリ。今度、団長が性的いやがらせをしてきたら、やってみな? 団長が苦しむ姿を拝めるかも知れないぞ?」
こんな感じで俺はアマノとユーリに助言をしたのだが、さすがはA級冒険者の団長である。はははっ! きみたちが
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