第3話 電撃的な侵入者

「……はァッ!?」

 朝。なんだかよく分からない悪夢を見て全身汗びっしょりになったところで目が覚めた。

 飛び起きたのは良いけれども妙にリアルな夢を見た。学校に行く前いつもの電車に乗るまでの夢を見ていたような気がする。

「……また変な夢見てた?」

 誰に言うでもなく眉間にしわを寄せ、周りを見る。そこは当然、いつもの自室。

 壁には時計が掛かっているし、ベッドの脇には電子式の目覚まし時計が置かれている。

 時計の針がいつも通り小さく秒針を切っているが、その針の指している時間はいつもよりだいぶ遅い。

「ひゃあ! ち、遅刻してるかも!」

 急いでベッドから飛び起き床に立つと、また部屋全体の雰囲気が歪む。そうしてパッと風景が入れ替わっていくと、またいつもの駅ホームの中。

 いつもの風景。いつもの時間。けれどいつも過ごしていた毎日の風景が少しずつ違った形で、全部いっぺんに映し出されたバグのようになっている。

「な、なにこれ……」

 宗士はおそるおそると言ったように、さきほど見たセピア色の少女のいたイスを振り返る。

 けれど当然ながらそこに少女は座っていないし、そもそもイスすら置かれていなかった。

 いつもの風景。いつもの時間。いつもの日常が少しずつ違った形で、繰り返される。何の変哲もない毎日が、なぜか目の前ですべて崩れ始めていた。

 ホームに、いつもの電車がゆっくりとやってきた。行き先は何も表示されていない。ドアも開かない。たくさん人は乗っているけど、まるで絵のように動いていない。

 突然、どこかで何かが爆発した。

 結構遠くだったのか音はかなり小さく、振動も駅のホーム全体を小さく揺さぶる程度の物だった。衝撃で電車が小さく動き、ドアが開く。

 たくさんの人たちが一斉に降りだし、ホームの人たちも一緒になって突然動き出した。

 しばらく呆気にとられて駅の様子を見ていたが、再びどこかで何かが爆発。それもかなり大きいし、だんだん近づいてきている。

 空を見ると、遠くを飛行機のようなものが飛んでいた。けどよく見るとそれには手足がついているし、空を見上げた宗士を見て指をさしているような仕草も見えた。

 なんだか嫌な予感がする。

「嫌な予感……」

「…………!!!」

 空飛ぶそれが、何か叫んでこちらに手を振った。宗士はどきっとしてそれを見つめ、ふたたび周囲の大人達を見る。だが大人達は空の彼らに気づいていないような雰囲気だった。

 空のそれが大きく手を振って、また何か叫んでいる。

「…………ぃちょー…………!!」

「なんかしゃべってる!?」

「……ぁ……ぁいち……ぉーーー!!!!!」

 それがさらに何か叫んで、宗士に向かって何かを突きつけた。

 数秒後、またどこかで爆発が起こる。爆発はだんだん宗士の駅に近づいているようだったが、爆発が起こると周りの大人が一瞬止まり、背景にもノイズが走った。

「……ーいちょーーー!!!!!!」

 空のそれがさらに叫んで、こちらに狙いを定めている。宗士は一歩足を退き、これから起こるであろう嫌な予感に身構えた。

 隣の誰かが空を見て、何か声をあげた。

「たぁぁぁいちょー!!!!!!!!!!!」

 こんどははっきりと、空飛ぶそれが叫ぶ。

 騒然とし出す町の人の視線を気にすることなく、それは宗士に向かって弾頭をはなった。

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