団地、あるいは工場と

何かの工場の一部のような、珈琲店に入った


開かれたテラス席に落ち着くと

珈琲店の真向かいに

明るいグレーの塀

塀の向こう側には

真白い壁の団地、あるいは工場と

たった一本の夏みかんの樹


樹には実がなっていた

白が基調の中に、ぽつりと、

輝く緑色、明るい黄色、焦茶色


団地の隙間から覗く青空には後から気がつくほど

あの樹こそ、この珈琲に合う、と、

息をするように思った


ほろ苦い珈琲だった。

何かが閉じ込められたかのような。

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