2-7 宿敵滝本
“滝本重行、南部信直の使者として浪岡に参上奉り、多田水谷両管領と面会。水谷は反為信に転ずるの由”
封書の内容である。為信と沼田は愕然とし、事態の急変に驚く。そしてまだ続きはある。
“同滝本は次いで御所にお目通り叶い、吉日に事を申し出る由”
滝本重行という人物は今風に言えば為信のライバルであり、生涯交じり合うことは決してないだろう。滝本は為信のいない津軽こそ正しい津軽だと信じているし、かつ為信を死地まで追い込んだこともある。その男が動いている……。
為信に冷や汗が。決して暑くはないが、静かに何かが暗い畳に落ちる。まるで弾け飛んだかのように大きな音が響いた。
…………
場所は浪岡に移る。かの地に詰めている兼平綱則は、出仕している多田にどういうことかと問い詰めた。白昼の少し肩休めに多田が御所の仮殿から出た瞬間、兼平は彼をとっ捕まえて人の見えぬ方へ……そして塀の白壁に押しつける。何が何でも聞き出そうと気迫が満ちていた。
多田は真正面で兼平に顔を向けることができない。さまざまな者の思いに挟まれた立場は、多田を悩ませる。
……恐る恐る答えた。
「……貴殿は知らないだろうが、……水谷殿の養子のことを。」
養子、何のことだ。それとこれとで何の関係がある。
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