1-8 子供らが成しえたこと
……音が聞こえる。フクロウの声や、イタチの草木を揺らす感じとも違う。ましてや遠目に見える海が荒れているわけでもない。
人の足音だ。
仙桃院の住まう寺に近づく。寝ている子供ら数人も気付き始める。誰がこんな真夜中に来るというのか。……もしかして、さきほどの大人たちか。年長の者は恐れた。もしや、断られた腹いせに連れ去ろうとでもしているのか。
子供らは手分けして、男を木陰や屋奥の影より見張る。まだ少しばかり残雪が残る雑木林。梅の季節といっても、夜は寒い。……さきほどは何もしてやれなかったが、相手は一人らしい。子供総出でかかれば、何とかなるのではないか……。
男は彼女のいるであろう法堂へあがろうと、草履を脱いだ。すると、“わっ”と小さい影が男へ向かっていく。子供らは何も持たず手ぶらだったが、不意を突かれた男はあっという間に取り押さえられた。一人が後より縄がないことに気づき、どこかしらより取ってくる。そうして男はがんじがらめにされた。
彼女は布団に入ってこそいるが、眠りに落ちてはいない(落ちるはずもないのだが)。やはり外の物音に気付いた。……疲れた体をゆっくりと動かし、外へつながる障子戸を静かに開ける。
そこには暴れながらも捕われてしまっている森岡信治の息子と、とても誇らしげな顔つきで、今から彼を懲らしめようとしている子供らの姿があった。
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