1-4 妹の死
「戌姫様はかつて為信を殺そうとなさった。その頃の思いにお変わりがないのでしたら、決断なされよ。」
仙桃院は横を向いたまま、離れの景色を見るわけでもなく、少し下へ目線を当てたまま。平静へ戻そうと努めるが、どうにもならぬ。
「あれからさらに恨みは積もったでしょうな。お察しいたします。為信が決起して大光寺城を落としたおかげで、ただ一人の肉親となっていた妹も殺された。」
調子に乗って話す信治だが、少し顔に笑みが見える。ひきつっているようにも思えたが、なにか馬鹿にしているようにも感じる。そのような境遇、立場にあるのだから、立ち上がって当然だと言わんばかりに。
信治の声は強くなる。
「南部信直の命により、外ヶ浜の横内の一族は誅殺された。謀反の疑いがありと。これほど馬鹿らしいことはございませぬ。あれもこれも為信のせいでございますよ。」
そう。それは悲劇だった。災難によって彼女の弟である鼎丸と保丸は死に絶え、残すは遠くへ嫁いでいた妹だけ。そのかけがえのない存在さえも奪われた。
ここで、信治は訴えかけた。
「戌姫様には在りし日の大浦家を作っていただくべく、新たに主人を迎えていただきたい。今の大浦はすでに大浦ではなく、津軽家という似ても似つかぬ……。」
信治は彼女の、次の言葉を待つ。答えはわかり切っている。
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