1-3 突如として

 庫裏の一室へ入ると、下座には森岡信治ら三人がいた。仙桃院が目に入るなり、身を彼女の方へ向け、こうべを垂れた。彼女はそのまま立ったままその様を見つめた。……いたって真顔である。子供らの前では慈しみの心を持って表情豊かに接するが、果たしてこの者らに同じく接する必要があろうか。



 そして彼女は上座に腰をおく。その座る音、陰の動く様。三人は静かに顔を上げた。……最初に信治が口を開く。


「お久しく、戌姫様。」


 真顔のまま、彼女は応じる。


「あら、随分と老けられたこと。」


「そうでしょうな。すでに六十を超え、病も患っております。こうして二人を従えますのも、道中で何が起きてもいいようにでございます。」


 信治は苦笑する。彼女はいまだ表情を変えない。


「それで、何のご用です。」


 彼女は問うた。信治は一つ咳ばらいをし、少しだけ体を茣蓙ごと前へ動かした。






「……為信への復讐。お考えはございませんか。」


 初めて彼女は表情を変えた。たいそう驚き、動揺を隠すために顔を横にそらした。心の鼓動は高まり、立ち去ろうにも身は動かない。

 信治はここぞとばかりにたたみかける。

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