1-2 諭し
法堂の縁側、仙桃院は池の向こう側より三人が庫裏へ向かっていくのを見た。おそらく彼らは庫裏の寺男に話を通してから、私のところに来るのだろう。……彼らに少しでも梅を眺める余裕があれば、向こう側の彼女に気づいたのかもしれない。
子供らは三人の姿が見えなくなったとたん、法堂の彼女のもとへ走り出した。こけて未だ泣いている娘は十くらいの年長の男子が背負う。
……子供らのすべてが戸惑いを隠せない。彼女は縁側より草履をはいて、子供らのもとへ駆け寄った。そうすると子供らは彼女の裾を掴み、抱き着いたり泣き出したり。そんななか、年長の男子がいう。
「あいつら、子供が泣いているってのに、そのままいっちゃった。ひどいよ。」
他の子供らも頷いている。彼女は優しく諭す。
「そうよね……。だけど、あの方々はきっとそんな余裕はなかったのよ。あなたたちを嫌って、怖い顔をしているわけじゃないのよ。」
「だけど、だけど……。」
うぶな子供ら。純粋な心を持つ。その彼らからしたら、泣いた子供がそばにいれば足を止め、慰めるのが当然。そう、彼女のように。
すると、向こう側から寺男の一人がやってきた。彼も少し戸惑っているようだが……立っている彼女に寄り、耳元で伝えた。
「森岡様が、“戌姫様と話がしたい”とのことでいらっしゃっております。ただし……公な使いではないと。」
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