4-6
最初は主人公の一人語りだ。
なんの特徴もない高校男子が普通がいいとか、普通の日常が欲しいとか言っている。
すこぶる共感できるが、大体こんなことを言う奴に限って普通じゃない。
モテる要素もあるし、行動力もある。
知らず知らずの内に女の子達に囲まれて、そのくせ好意には気付いてない鈍感野郎だ。
大体姉貴がエロゲ声優じゃないだけでお前はマシだよ。それ以上を求めるな。
この主人公は実家暮らしだが、両親が二人共海外出張に出ているらしい。
中学一年の時からだからもはや教育放棄だ。
この世界に児童相談所はないのか?
なんて思ってるとヒロインとの出会いのシーンに差し掛かった。
*
――昼休み。
――昼寝でもしよう。そう思い俺は屋上に上がった。すると先客が居た。どこからか持って来た花柄のレジャーシートをひいて横になっている。
[至流](あれ、屋上の鍵を持ってるのは俺と先輩だけのはずなんだけどな)
――不思議に思った俺は、その先客の顔を音を立てないようにゆっくりと確認した。
――女の子だ。それもとびっきり可愛い部類の。さらさらとした長い髪と制服のスカートが風に揺られて気持ちよさそうになびいている。小柄で、小動物みたいに丸くなって寝ていた。
[至流](うおっ、かわいい・・・・・・。にしてもこんな生徒居たっけ・・・・・・?)
[女子生徒]「う~ん。むにゃむにゃ・・・・・・」
――女子生徒は口元に指をあて、気持ちよさそうに寝ている。俺は辺りを見回した。当然のことながら、誰もいない。
[至流](どうしようか? 俺も寝たいんだけどな・・・・・・)
――悩みながらも女子生徒のぐっすり眠る顔を見ていると、俺の方にも睡魔が襲ってきた。昨日徹夜でゲームをやったのがここで効いてきた。気付くと俺は・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぐー。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・。
――誰かが俺の体を揺すった気がした。
[至流](頼むから、もう少しだけ寝させてくれ・・・・・・)
[女子生徒]「あ、あの・・・・・・」
[至流]「う~ん・・・・・・・・・・・・。あと、少しだけ・・・・・・」
[女子生徒]「で、でも、チャイムが鳴ってますよ・・・・・・?」
[至流]「・・・・・・・・・・・・チャイム?」
――がばっ。俺はその言葉を聞いて勢いよく体を起こした。次の時間は美人の前田先生の授業だ。遅刻したら殺される。
[至流]「やばい。まじでやばい。あいつ遅刻にうるさいんだよ。あ、起こしてくれてありがとな。俺、行くわ」
――急いで立ち上がり、屋上の出口へと走る。女子生徒は俺の背中へ呑気に手を振っていた。
[至流](助かった・・・・・・。あの子にあとでお礼言わなきゃな・・・・・・っと)
――そう思い、俺は立ち止まった。まだ名前を聞いてない。振り向くと、女子生徒は不思議そうに首を傾げた。
[至流]「なあ、名前なんて言うんだ?」
――言ってから気付いた。これじゃナンパみたいだ。しかし、女子生徒はにっこり笑って答えてくれた。
[ヒカル]「わたしですか? ヒカルです。月宮ヒカル」
[至流]「ヒカル・・・・・・。よし、覚えた。後でお礼するよ。じゃあ」
[ヒカル]「はい♪ 期待してます。いってらっしゃい」
――俺は笑顔で手を振るヒカリに別れを告げて、教室へと走った。
――これが、俺とヒカルの出会いだった。
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