第5話 咄嗟会敵!

ミハルとミリアの前に張り出されていた搭乗割には・・・


今後、運命を共にする者達の名が記されていた。


搭乗割には

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車長       リーン・マーガネット少尉

操縦手      ラミル・バンガール兵長・先任

前方機銃・無線手 キャミー・マコダニア一等兵

砲手       ミハル・シマダ一等兵

装填手      ミリア・クルーガン二等兵

_________


<本当に・・・曹長の言った通りだ>


「どうしましょう!私が装填手だなんて。

 私が陸戦騎乗りだなんて。戦車学校も行っていない私が!」


ミリアは、パニクっている。


「まあまあ、ミリア落ち着いて」


ミハルは宥め様と声を掛ける。


「こっ、これが落ち着いていられますかぁ!

 いきなり戦車乗りだなんて、聞いてませんようっ」


<ミリア、嬉しいのか、困っているのか、どっちなんだろ?>


「ねえ、ミリア。嬉しいのか、嫌なのか。どっちなの?」


ミハルがミリアの肩を掴んで訊くと、


「嬉しいに決まってるじゃないですか。

 だって、先輩と一緒に居られるんですから、先輩と一緒に闘えるんですから」


そう言ってミハルに抱き付くミリアに、


「そう。良かったじゃない。私もミリアと一緒なら心強いわ」


ミハルの言葉で、ミリアは涙目になって、


「感動です!光栄ですっ、先輩!」


嬉し涙で、顔をくしゃくしゃにして抱き付いた。


「まあ!ミリア。貴女ってそっちの気があるのかしら?」


突然、リーン少尉が声を掛けてきたので、慌ててミリアがミハルから離れて敬礼し、


「あ、ありません。そんな気なんて。ありませんから」


ミリアが動揺して、敬語を忘れて答えるのを微笑み返して、


「冗談ですよ、ミリア。それより、搭乗割を観てくれたかしら。装填手、引き受けてくれる?」


少尉に訊かれると、


「は、はい。私なんかで良ければ。・・・宜しくお願いします」


頭を下げて、了承する。


「少尉、私からもお願いして宜しいでしょうか」


ミハルはリーン少尉に向って話しかけて、


「曹長の教官配置を、車長席でお願いしたいのです。

 少尉には申し訳ないのですが・・・

 少尉には別の車両で敵方として標的を受け持って頂きたいのです」

「・・・私に的になれと・・・そう言うのですね、ミハル。それは、貴女の考えなの?」

「はい、そうです」


ミハルはリーン少尉の瞳を見詰て答える。


「そう、解りました。明日の訓練から、実戦並みにやりましょう。実弾射撃訓練も兼ねてね」


リーン少尉は微笑を湛えて認めてくれた。


「ありがとうございます。何としても曹長が居られる内に、慣熟訓練を終わらせたいのです」


ミハルが決意を述べると、


「解っているわ。あと3日、いえ後2日しかないものね。

 明日は納得がいくまで何度でも繰り返し訓練するから、覚悟しておきなさい」


そう言って、リーン少尉は搭乗員室を出て行った。


「あの、先輩。小隊長に意見具申するなんて、凄いです」


ミリアが瞳を輝かせてミハルを見る。


「うん。私も砲手として出きるだけの事を覚えたいから。

 実弾射撃訓練なら、動標的も撃って感覚を身に着けておきたいからね」


ミハルは自分の手を見詰ながら答える。


<そう・・・私は砲手として戦ったあの日以来の実弾射撃。

 この手でもう一度敵と撃ち合う事が出来るのかを確かめたい。

 あの日、私の照準器の中で見た悲劇を乗り越える為には・・・>


ミハルの手は、あの日の恐怖を思い出して、微かに震えていた。


「・・・ぱい、先輩!どうしたんですか?」


ミリアに声を掛けられて、我に返った。


「あ、ごめん。ぼーっとしてた。何かな?」

「もーっ、先輩。あのですね。今夜、一緒に寝てもいいですか?」


ミリアはうるうる瞳をさせて、ミハルにお願いする。


「は?私と?」

「はい、何故か興奮して・・・寝られそうに無いのです。

 私、先輩と一緒なら寝られそうな気がして・・・駄目ですか?」

「え?あっ、・・と。解ったわ。ミリアがそうしたいのなら。でも、私はノーマルですからね」

「は?私もノーマル人間です。その気はないですから」

「あはははっ、安心したわ」


ミハルは笑ってミリアのおでこをつんっと突いた。


「もー。先輩っていじめっ子だったんですね。

 では、布団を持って来ますから。先に横になっててください!」


ミリアは嬉しそうに整備員室に荷物を取りに戻って行った。


<ミリアさんも女の子だもんね。私ってそんなに慕われ易くないのに。

私だって誰かに頼りたいのに・・・駄目だよね真盛マモル

私、お姉ちゃんなのに、しっかりしないといけないよね>


ミハルは、弟の真盛が何時も懐いてくれていた事を思い出して、温かい心になっていた。


そこへ、ユーリ大尉を送ってきたラミルが戻って来た。


「あ、お帰りなさい。ラミルさん」

「ああ、ミハル。ちょっと今聞いたんだが、私が先任って、どう言う事なんだ?」

「え、いえ?私もさっき搭乗割を観て知ったところなんです」


ミハルはラミルに本当の事を言うと、


「そうか、いきなり先任って言われても、下士官でもないし。

 実戦経験が有る訳でもないのにな。

 兵の最上位ってだけで、先任って言われてもぴんっとこないよ」


「ははは。そうですね」


困っているラミルに、相槌を打つミハル。


「それにな、ミハル。

 リーン少尉だって実戦に出ちゃいないし、

 古参って言っても1年にも満たない私が先任を務めて、

 本当に戦闘に出て、生き残れるかが心配なんだ」


<生き残れる?そう・・・だよね。

 心配を抱えて闘うのって、それだけで不利だものね。

 ラミルさんの心はあの日の前の私と同じ・・・>


「ラミルさん、私も・・・。私も同じです。

 いきなり砲手になって、たった2日で射撃訓練を終えろって言われても、

 とても曹長みたいには扱えっこ無い。

 でも、私達は兵隊です・・・軍人なのです。

 上からの命令には逆らえない。どんな理不尽な命令だとしても・・・」


<そう、あの戦闘の時も、私達は逆らう事が出来なかった。

 あんな酷い命令なのに。そして皆、その命令の為に死んでしまった>


ミハルはラミルに手を震わせながら、


「だけど、ラミルさん。

 私達は生き残る為にも、出来る限りの事をしましょう。

 今、出来る全ての事を・・・」


ミハルの決意に頷いて、


「ミハルの言う通りだな。

 全力で私も訓練するよ。理不尽な命令の為に死んで堪るかってね」


ラミルはミハルの手を握って約束した。


「はい、私も全てを出し切る様に頑張ります」


握られた2人の手は、お互いの熱い想いが込められていた。



そんな2人の姿を、リーン少尉は入り口の影から見ていた。


「ラミルに話して良かった。

 あの2人はきっと、私の想像を超える力を出してくれる。

 これでやっと搭乗員が一つに纏ったわバスクッチ・・これで良かったのよね」


リーン少尉は一人、指揮官室へ戻っていく時、ふいに外へ出たくなった。


古城の見張台に登り、空に広がる星を見上げて、


「ユーリ姉様、私・・・

 私は指揮官として、皆の命を預かっているのに、

 その重圧に耐えられなくなってしまわないか不安です。

 こんな姿を誰にも見せられないのが辛いのです」


リーンの瞳から、涙が零れ落ちる。

リーンは城壁を掴んで歯を食い縛って崩れ落ちそうになる体を支えて、


「誰かに話したい。

 本当は私も恐い。

 此処から逃げ出したいくらい恐い。

 私の判断一つで小隊全員の命が危険に晒されてしまう事が恐い。

 皆の運命を預かる事の重圧で壊れてしまいそう・・・」


星空を見上げてリーンは誰にも見せられない涙を、恐怖を払いのける様に零し続けた。


一人星空を見上げて泣く少尉の姿を見て、声も掛けられず見張台の影からミハルは想った。


<少尉。私は少尉の部下になれて嬉しいです。

 リーン少尉が私達部下の事を大切に言ってくださって。

 そう思ってくださる事が、私には何より嬉しいです>


ミハルは自分の手を見て、


<必ず私は少尉を、皆を守る盾となってみせる。

 闘いの恐怖に打ち勝って、生き残らせて見せる。

 曹長との約束、第1連隊で死んでいった人たちとの約束。

 真盛との約束・・・。そして私自身の願いの為に>


決意を新たにして、星空を見上げ続けるリーン少尉に誓った。




  ((キュラ キュラ キュラ))


朝もやが薄らぎ、荒地にキャタピラ音が響き渡る。


「今日の訓練は、対戦車戦。

 本車はこのまま対敵行動をし、少尉の指揮する標的車両との模擬戦を行う。

 本日の訓練目標は、早期発見、並びに射撃運動にある。

 各員、これを実戦と思い任務を全うする様に」


バスクッチ曹長が喉頭マイクロフォンを押し当ててキャタピラ音に負けない様に大声で指令した。

ラミルが操縦するMMT-3は、発動地点に到着し、停車する。


「よし、訓練開始まで後2分。各員チェック!」


曹長に命令されて、各員が受け持ち部所を確認する。


「エンジン、油圧サーボ、並びに駆動箇所異常無し」


ラミルが報告する。


「前方機銃、無線、並びに車内通信状態良好」


キャミーが車長席を振り返って報告し、曹長に微笑んだ。

そんなキャミーを見てにやっと笑い、


「射撃装置、照準器。並びに砲塔旋回駆動よろし」


ミハルが左右にレバーを動かし、電動機の反応を確かめて報告する。


「砲弾数、徹甲弾12発、魔鋼弾2発。いずれも実弾頭です。

 装填手用意できました。皆さん宜しくお願いします」


初搭乗のミリアが挨拶を入れると、


「装填手!余計な事は言わなくていい。

 本日の車長は、バスクッチが務める。実戦と同じと思え」


ミリアが首を竦めて、恐縮するのを見て、

ミハルは肩の力を抜けという意味でミリアに肩を指差して合図する。

ミリアはミハルの指摘で肩を上下させて、深呼吸を繰り返す。


その姿に笑いかけて、照準器に向き直ると、


<さあ、気合を入れて掛からなくっちゃ。

 たった今から私は砲手に戻るんだ。前の戦いの様な訳にはいかない。

 今度は前の様な戦いにしてはいけないのだから>


ミハルは、以前務めた砲手とは心も体も全く違っている自分に気付いた。

一度実戦を味わった事でこんなにも責任を感じるようになり、それだけに射撃の重要性を痛感する様になっていた。

ミハルの感慨を打ち破って、曹長が命令を下した。


「時間だ。戦闘っ!戦車前へ!」


ラミルがギアを入れて、アクセルペダルを踏み込んだ。

いまだ夏用迷彩を施されたままのMMT-3が、キャタピラ音も高らかに進みだす。


「全員持ち場で哨戒に当たれ。先に見つけるぞ。停車!」


車長のバスクッチ曹長が、キューポラから半身を乗り出して双眼鏡で辺りを警戒する。

各員がスリットから辺りを監視する。

そして、やはり実戦経験が多い曹長の双眼鏡が最初にそれを発見した。


「右舷2時の方向。草原に砂煙が上がっている。

 目標を確認と同時に、射撃を開始する。

 ミハル、ミリア、砲塔を2時方向に向けろ。第1射は、徹甲弾装填!」


曹長の命令で、ミハルは照準器を覗き込みながら、旋回レバーを右に倒した。

ミリアは砲塔バスケット後部ラッチ内の徹甲弾を取り出して左手の拳骨で砲尾から装填し、


「車長、徹甲弾装填完了。射撃用意よろし」


安全ボタンを押し込んで、換気ファンを廻す。


「よし、会敵するぞ!戦車前へ!」


いよいよ、会敵運動が始まった。

ミハルは照準器に砂煙を入れて、倍率を最大の8倍に上げて注視する。

座席の後のキューポラ上に半身を乗り出して双眼鏡を構えて、目標を捕捉しようと目を凝らす曹長の次の言葉を待ち受けた。


<私の照準器には砂煙しか入ってこない。おかしいな?こんなに前進しているのに。って! まさか・・囮?>


「車長!一度停止して。辺りの確認を!」


ミハルは危険を感じて、停車を意見する。


「了解!ラミルっ停車しろっ。全員もう一度辺りを確かめろ。オレは砂煙を見張る」


曹長はミハルの言葉に同意し、辺りの安全を確かめる。

曹長が前方2時方向で上がる砂煙を注視している間に、ミハル達は各々の視界を確認する。


「キャミー。無線に何か入って来ないか」


曹長の問いに、


「いえ、何も。開始時に小隊長の訓練開始を告げる一言だけが有りましたが」

「そうか。何台で標的になるとかは言ってなかったか?キャミー」

「はい。開始すると告げられただけです」

「・・・もしかすると、複数両で掛かってくる気かな?」


<曹長も知らないんだ。だったら、尚更早く発見しないと。

 射撃訓練に入る前に発見訓練だけで終わってしまう>


ミハルが早く発見しようと目を凝らして左舷側を見詰ていると、


<!居た!戦車回収用の力作車だ。

 でも、まだ遠い。有効射程には入っていない>


ミハルは標的車を見つけた事を車長に報告する。


「左舷8時の方向!標的車。距離2500!」


ミハルは標的車を発見した事を、車長のバスクッチ曹長に報告する。


「よし、標的車捕捉!これより射撃訓練を始める。

 ラミル、車体を左90度に向けろ。少しでも敵に投影面積を少なくするんだ」


ラミルが車体を廻して、敵弾が当たりにくい形に持っていく。

ミハルはそれに併せて砲塔を旋回させた。


「射撃準備完了。標的車確認」


曹長に報告すると、ミハルは照準器を睨む。

照準器の中に捉えた力作車から、信号弾が上がった。


<どうやら、こちらに気付いた様ね。

 距離1800、こちらの有効射程に入っている。

 もし、これが戦闘なら、こちらから先手を打てた筈>


8倍の照準器には、力作車の車体が照準点からはみ出していた。


「目標!左舷前方の力作車。

 目標は停止中。距離1500、徹甲弾。力作車後方30メートルにある標的を狙え!」


車長の命令で、力作車が引いてきたキャンパス製の標的に照準を合わせる。


「照準よし!」


ミハルは標的の中心を、十字線の真ん中に合わせて引き金に指を掛ける。


<この砲の特性が解らない今は、照準器を頼るしかない。

 この一発で癖をつかまなきゃいけない・・・>


ミハルの思考がバスクッチ曹長の命令で途切れる。


て!」

っ!」


復唱と共に、指がトリガーを引き絞る。


((ボムッ!))


くぐもった射撃音が車内に響き渡る。


((ガシャッ!))


薬莢が尾栓から弾き出される音が、続いて聞こえたがミハルの目は、照準器から離れなかった。

低伸する弾道をわき目も振らず見詰る。


「命中!」


バスクッチ曹長の声にも反応を示さず、標的のキャンバスにうがかれた穴を見て、


<狙った位置から右へ1メートル程ずれた。1500メートルでこの誤差なら、大した物だわ。 でも、有効射程ぎりぎりの1800メートルなら外れていたかもしれない>


ミハルは慌てず誤差修正の為に、照準器右側の修正摘みを左に廻す。


「第2射!同じく徹甲弾」


ミリアは、すかさず装填してボタンを押し、


「装填よし!」


マイクロフォンを通して、報告が入る。


「続けて、標的に撃て!」


曹長の命令と共に、ミハルの指に力が入る。


((ボムッ!ガシャッ!))


再び射撃音と、排出音が車内に轟く。


低伸する弾が、今度は標的の中心を射抜いた。


「よし、ど真ん中だ。射撃中止、信号を送る」


曹長はキューポラから半身を乗り出し、信号弾を上空に向けて発射した。


「ミリア、ミハル。次は動標的を撃つぞ。

 力作車が信号弾を発射したら、射撃再開。

 オレの命令を待たずに標的に当たるまで発射し続けろ。いいな!」


曹長の指示に、


「了解!」


短く返事をして、砲塔旋回レバーに手を掛ける。ミリアは徹甲弾を装填して、次弾を抱えた。

力作車がスピードを増し、それに連れて標的も加速しだした。

そして力作車から発煙弾が打ち上げられた。


「よし、撃ち方始め!」


曹長の命令を受けて、


「撃っ!」


ミハルはトリガーを引き絞る。


((ボムッ!))


距離1500メートルで発射された弾は、残念ながら標的の1メートル程の所を通過してしまう。


「ミハル!敵速30キロ。距離1500、5シュトリッヒ前方を狙え!」


曹長が偏差射撃を命令する。


「了解!」


ミハルは標的の前方5目盛の所に中心点を合せて、再びトリガーを引き絞る。


((ボムッ!ガシャンッ!))


射撃音と共に、飛び出した徹甲弾が標的を捕えた。


「命中!射撃停止」


ミハルは少し安堵して、トリガーから指を離した。


<この砲は優秀だな。変な癖も無いし、殆ど散布範囲も暴れない。

 撃ちやすい、良い砲だな>


ミハルはこの47ミリ砲が自分には扱い易いと感じていた。


「次は、走行射撃をする。ラミルには、標的と並ぶ様に走ってもらう。

 並行運動に入り次第、射撃を再開する。いいな!」

「了解!」


ラミルとミハルは同時に返事を返した。

ラミルは、車体を標的の左側に見て走らせる。


「ミハル、車体の揺れに上下運動に注意しろ。

 ラミル、距離600まで接近。標的の頭を押さえる角度で近付けろ!」


バスクッチ曹長の命令で、ななめ前方に向きを変え、接近を開始した。


「ミハル、射撃命令と同時に発射しろ。

 敵速30キロ、距離600、2シュトリッヒ前方を狙え!」

「了解!」


ミハルは右側の摘みを廻し、射撃諸元を併せ、標的に的を合せる。


「射撃諸元、併せました。射撃用意良し!」

「よし!距離600。撃て!」


ミハルは命令と同時に発砲した。

弾が、動く標的の左下に当たる。


「ミハル、次はもう少し、前方を狙え。それと、上下運動に注意しろ。射撃を続けろ!」


曹長の注意を聞き、修正を加えて次射を放つ。

揺れに注意を払って撃った弾が、標的の中央を射抜いた。


「よし!命中!ミリア、残弾は何発有る?」


曹長の問いに、


「徹甲弾6発と、魔鋼弾が2発です。」


ミリアが落ち着いた声で返答する。


「よし、思っていたより少ない消費で済んだな。ミハル、上出来だぞ」


曹長が、ミハルの射撃術を褒めた。


「いえ。この砲が変な癖も無くて・・・。当て易かっただけです」


ミハルが謙遜して答えると、


「いや、そうじゃない。ミハルだからこそ当てられたのさ。

 この砲は能力ちからのある者でこその砲なのだから」


曹長が意味有り気な言い振りをする。


能力ちから・・ですか?それってどう言う意味なのですか?」


ミハルがバスクッチ曹長に訊くが、それには答えず、


「よし、訓練を終了する。合戦準備用具納め」


訓練の終了を宣言されて、


「ラミル。力作車と合流する。力作車の後方に付けろ。

 キャミー、無線封鎖を解く。少尉に合流すると連絡しろ」


ラミルとキャミーは、それぞれ命令通りに行動した。


「曹長、先程の話なのですが・・・」


ミハルが気になった事を訊くと、キューポラから下を覗き込んだ曹長が、マイクロフォンを押えずミハルに口を開いて声には出さず、


「後でな」


と、伝えてきた。


ミハルも声には出さず、了承する合図に首を縦に振る。


<言い辛い事なのかな。どんな意味が有ったのだろう>


ミハルは曹長が自分の知らない秘密を隠している事に不安を感じた。


「皆、ご苦労でした。これより基地に帰り、整備に掛かります。

 不具合があったなら、直ちに整備班と共に修理、復旧に当たる様に」


小隊長から無線連絡が入る。

キャミーが各員に聞こえる様に回線を開いておいたのだ。


<そういえば、最初に砂煙を上げていたのは何だったのだろう。

 訓練の欺瞞車両なら合流してきてもいい筈なのに・・・>


「車長、最初に見た砂煙は訓練用の車両だったのですか?

 でしたら、合流してきてもいいのでは?」


ミハルはバスクッチ曹長に疑問を訊く。


「小隊長、今回の訓練にもう一両、何かを使いましたか?」


早速、曹長がリーン少尉に尋ねてくれる。


「もう一両?そんな予定に無い事はしないわ。その車両の形式を確認したの?」


<何ですって!それじゃあ、あの砂煙の正体は?>


「各員、戦闘配備!これは、訓練では無いっ。

 砂煙の正体を確かめる。ラミル、力作車の前方に回りこめ!」


曹長も気付いて、直ちに実戦を想定した行動に移る。


「バスクッチ曹長!私が車長に戻りましょうか?」


リーン少尉が慌てた様に訊いて来るが、


「今、乗り変わっている場合ではありません。

 少尉はそのまま力作車で、後退してください。

 本車が確認するまでは前に出ない様に、宜しいですね。」

「わ、解りました。曹長、指揮を任せます。

 もし敵なら攻撃はなるべく控えて、安全を確保する事を優先して下さい」

「了ー解!」


曹長は小隊長に答えて、


「ラミル、なるべく黒煙を出さずに進め。

 排ガスでも目のいい奴は気付くからな。正体を確かめるまでは慎重にいけ!」


ラミルは緩やかにギアを変えつつ、速度を上げる。


「全員、見張りを厳となせ。先に発見するぞ」


キューポラに乗り出して周りを確認すると、やがて右舷前方に砂煙が見えた。


「いたぞ!右舷1時に砂煙が見える。ラミル、追いつけるか?」

「さあ?こちらも全速を出しますか?」

「よし!追っかけろっ!」


ラミルはギアをトップに入れて、アクセルを一杯まで踏み込む。

キャタピラが不整地を噛んで砂塵を巻き上げる。

不整地のやや高くなった所で、砂煙の正体が解った。


「敵戦車!徹甲弾装填急げ。敵はM-2型偵察軽戦車!

 まだこちらに気付いていない。射撃用意!」


曹長が矢継ぎ早に命令を入れて、戦闘が始まった。


<そんな!いきなり実戦だなんて・・・

 しかもさっき初めて砲手としてこの砲を撃ったばかりなのに・・・>


ミハルは心臓がバクバクと音をたてているのが、自分の耳まで聞こえてきそうだった。


「ミハル、射撃用意。距離1800で発砲する。M-2の装甲なら十分打ち抜ける。

 斜め後方からの射撃になるから、2シュトリッヒ前方を狙え!」


曹長から射撃諸元が命じられ、無意識でそれに併せていた。


<私、私は今再び敵に向って、射撃しようとしている。

 あの日の様に、今再び人を殺そうとしている>


ミハルの記憶が蘇ってくる。

連隊が全滅したあの戦いの中での悲劇が。


照準器の中で斜め後方を見せて走るM-2ライトを中央に捉えて、ミハルの息が荒くなる。


「はあ、はあ、はあ」


敵を撃つ事の恐怖が過去と重なる。


<私は、目の前に居る戦車を撃った。だけど、その結果は・・・>




黒く煙がたなびく戦場。

味方の戦車が次々と撃破されていく。

ミハルの乗るLT-3号軽戦車は、その速力をいかして被弾せずに済んでいた。


「大隊右側に新手です!軽戦車5両!」


前方機銃手の少女が叫ぶ。


「くそっ、やつら完全に包囲する気だな。タームっ新手の左に回りこめ」


キューポラで指揮を執る車長が、操縦手の少女に命令した。


「了解、全速でヤツラの左に回り込みます」


タームと呼ばれた操縦手がアクセルを踏み込む。


「ミハル!ヤツラの前面装甲は硬い。側面を狙え!」


車長の髭面の軍曹が、ミハルに命令する。


「わっ解りました。側面下部を狙います!」


ミハルは徹甲弾を詰めて、砲を旋回させる。

敵の5両は、ミハル達の乗る3号戦車に気付き射撃を始めた。

2発3発と、当たらずに済んでいたが、


((ガギィィィンッ))


物凄い音と、衝撃を受ける。


「助かった。車体側面で弾いた。ミハル射撃開始!」


ミハルは車長の号令と共に、射撃ペダルを踏む。


  ((バシッ))


短い射撃音と共に、37ミリ砲弾がM-2ライト軽戦車目掛けて飛ぶ。

距離300メートルの近距離で放たれた徹甲弾が、

狙った最前列の1両に吸い込まれる様に命中する。

車体中央側面を貫いて、瞬時に爆発、炎上した。


「よし、撃破!砲弾ラックに命中した様だ。次は最後尾のM2を狙え!」


車長の命令を受けて、37ミリ徹甲弾を詰めて、砲塔を廻す。

敵は最前方の車両を避けて左右に分かれる。


「右だ、右に行った2両目を狙え!」


ミハルは無我夢中で照準器にM-2ライトを捉えて、ペダルを踏み込む。


  ((バシッ))


第2射も、側面に命中した。

が、そのM-2はまだ動いていた。

ミハルはさらに37ミリ砲を装填して、次弾を撃つ。


再び同じ車両に命中し、その車両は停止した。

と、同時に砲塔ハッチから敵搭乗員が脱出しようと身を乗り出しだした。

その瞬間、その乗員が吹き出した炎で焼かれてしまった。

炎と煙が、もがく乗員を包む。

ミハルは照準器を通してその悲惨な光景を目に焼き付けた。

次の瞬間そのM-2ライトは、爆発と共に砲塔が吹き飛んだ。

あの乗員と共に。


「うわっ、うわあっ、うわあああぁっ!」


ミハルは自分が撃った結果のあまりの惨たらしさに、悲鳴を上げ続けた。





目の前に後方を見せて走る戦車は、あの時と同じM-2ライト偵察軽戦車。

荒い息を吐きながら、バスクッチ曹長の命令を待つミハルの姿に、ミリアは心配顔で見詰た。


<先輩。先輩の様な人でも、実車を撃つとなると、こんなに緊張するんですね>


ミリアの視線なぞ全く知らずに、ただ照準器を覗き込み命令を待つミハルには永遠とも思える時間だった。


<どんどん離されて行く。

 もう3000メートル近くに離されてしまった。さすがに軽戦車は早い>


前方を走る軽戦車との距離は遠のく事はすれど、近づく事は無かった。


「このままでは、逃げられてしまいます。発砲の許可を!」


ラミルが曹長に意見具申する。が、


「残り弾数が少ない。

 下手に発砲して無駄弾をばら撒くより、このまま追い散らす方がいい。

 奴の仲間がどこかに居るかも知れんからな」


曹長の言う通りかも知れない。


<目の前の一両ばかりに気を取られて深追いしすぎるより、

 今は辺りの警戒を怠らない方が良いだろう>


曹長は追跡を断念し、


「追跡中止。キャミー、その旨を小隊長に連絡しろ」

「は、はい!」


キャミーは無線で少尉に連絡する。


「各員、前方のM-2を警戒しつつ、辺りにも敵が潜んでいないか確認しろ。

 これより本車は、基地へ戻る」


曹長の命令で、ミハルは大きな息を吐いて、


<さすが、曹長。判断に迷いが無い。

 もし、経験の浅い指揮官なら・・・

 目先の獲物ばかり見て届きもしない無駄弾を撃って、

 残弾が少ない状態で格闘戦に突入していただろう。

 下手をするとこちらが返り討ちになったかもしれない。

 ・・・それにしても、私はあのM-2を撃てていたのかな。

 もしかすると、手が指が言う事を利いていなかったかもしれない。

 あんな記憶が蘇ってしまうなんて・・・>


ミハルは今だ震えが止まらない手を見詰て思った。


砂煙は遠く彼方に消え去り、辺りにも他の車両は見当たらなかった。


「よし、此処まで来れば良いだろう。各員合戦用具納め。戦闘配置を解く」


曹長の号令で、漸く辺りに気を配らせる余裕が出来て砲尾の方を見ると、

装填手用の腰掛に座り側面ハッチを開いて風に当たっているミリアが見えた。


ミハルの視線に気付いたミリアが、薄く微笑むのを此方も笑顔を作って返した。

そしてミハルも側面ハッチを開けて、半身を乗り出し深呼吸して、キューポラを見上げるとバスクッチ曹長がミハルに微笑んだ。


<ああ、そうか。一発も発砲しなくても、今のは実戦だったんだ。

 本当の戦闘だったんだ。

 敵も私達も両方共生きて帰る事が出来たんだ。

 私、私は死神なんかじゃない。疫病神なんかじゃないんだ>


ミハルは風に当たりながら、少しだけ嬉しかった。

皆と共に基地へ帰れる事が、無駄に命を奪う事が無かった事に。



やがて前方に、基地へと向う力作車が見えてくる。

力作車のオープントップ上で、少尉がこちらを見ているのが見えた。

その顔は安堵と悩みが入り混じった複雑な表情だった。


<そうだよね。こんな近くに敵が入り込んで来ているなんて・・・

 もうここも、安全ではなくなったのだから。

 2ヶ月前と同じ様にここもまた戦場と化してしまうのかな>


ミハルは力作車の後ろに付いた車内から半身を乗り出して空を見上げて思った。




「皆、御苦労様でした。各種点検を怠らない様に」


整列し、リーン少尉の解散の命令で各々の持ち場のチェックをする。

側面ハッチから砲手席へ入ろうとしたミハルに、曹長が声を掛ける。


「ミハル、ちょっといいか?」


呼び止められて、車外に居る曹長の元へ行くと、


「こっちへ来てくれ」


そう言って、歩き出す曹長に付いて人が居ないガレージの隅に行くと、


「ミハル、さっきの話だが・・・」


曹長は戦闘の前に訊いた質問に答えを返す為にミハルを此処へ連れ出したようで、


「あ、はい。私の能力って・・何なのですか?」


ミハルは自分の知らない事を知っている曹長に、不思議な面持ちで訊く。


「ミハル、オレは君のご両親を知っているんだ。島田夫妻の事をな」

「は?曹長が?私の両親を・・ですか?」

「ああ。来訪されたときからな。

 君は覚えていないみたいだが、

 船で初めてこの国へ来られた教授夫妻と君を港から研究所へと送ったのが、ついこの間みたいだよ」

「え!?え・・っと。6年前に私達親子がこの国に来た時に、

 港から軍用車で送って頂いた・・・あの時のドライバーさん?え?ええっ?」


<そう。

 私達親子が東洋の島国、ヤポン(この皇国ではそう呼んでいる)からこの国へ技術研究開発の為に招聘されて、来訪した時に軍用車で迎えに来てくださった士官さんの運転手を、当時兵長だったバスクッチ曹長が務めていたんだ>


「すみません、曹長。完全に忘れていました」


ミハルが、頭を下げ謝る。


「はははっ、オレもあんなに小さかったミハルが、

 こんな美人になっているとは思わなかったよ」


曹長は笑いながらミハルの頭に手を置いて擦ってくれる。

ミハルは顔を真っ赤にして、照れてしまった。


「そしてオレは、夫妻のドライバーとして半年の間働いた。

 その間に夫妻から教えてもらったよ。どんな研究の為にこの国へ来たのか。

 どうして軍の元で開発しているかを。ミハルも覚えているかい?」


曹長の言葉で記憶を辿る。


<そう、私達親子がこの国へ来たのは、

 元々父が帝国陸軍技術士官だった事、そして母さんが神官巫女だったから。

 魔法力を持つ兵器をこの国に伝える為、国策として派遣された。

 そう父さんは言っていた>


「父はあまり喋らない人でしたから、詳しくは知りません」

「はははっ、そうだったな。

 あの人は無口で、でも美雪さんは、君のお母様は良くオレに話してくださったんだ。

 私は夫の研究には欠かせないって。どうしてか解るかい?」


曹長の質問の意味が解らず訊き帰す。


「あの?どう言う意味なのか、さっぱり?」

「君のお母様、美雪さんは能力ちからを持っていたんだよ。魔鋼の能力ちからを」

「は?魔鋼の力って?」


曹長は悪戯っぽく、


「ま・ほ・う・つ・か・い」


片言のもと帝国語で、そう言った。


<魔法使い?お母さんが魔法使いって、どう言う事?>


「あ、あの、曹長。冗談は辞めてください。

 どうしてお母さんが魔法使いなんですか。

 お母さんは何処にでも居る様な普通の人間です。

 特別な能力なんて、有りっこ無いんです」


曹長に反論するミハルの頭を擦りながら、


「そうだな。見た目では普通の美人な奥様なだけだが、シマダ教授が開発した魔鋼機械を使えば、それは恐るべき力を発揮する能力者となる」


曹長の瞳が、真剣さを増してミハルを見据える。


「母さんにそんな能力ちからが?」

「ああ、シマダ教授がこの国へ伝えた技術。

 君たちの母国では、当の昔に開発が始まって、

 (東洋の魔女)と云う兵団まで出来ていると言うじゃないか。

 そんな技術が友好国である我国にも渡されたのが事の始まりだった・・・と、思う」


最後は何か意味有り気に言いよどんで、曹長は口を噤んだ。

曹長はまるで妹に話を聞かせる様に、優しく、そして真面目に話をしてくれる。

そんな顔を見上げて、


「曹長・・。母にそんな魔法力があるなんて、知りませんでした。

 でも、それは母さんであって私にそんな魔法力があるとは思えません」

「それについては、午後の射撃訓練で確かめようと思う。

 そこで・・・だ。ミハル、君は御両親から何か渡されていないかい?

 光る石のような物が付いた、何かを?」


曹長がミハルに訊く。


<両親から貰った物?光る石のような物が付いている物と言えば・・・

 あの手に付けるブレスレット?あのお守りみたいな物の事かな?>


「あの。母さんから貰ったお守り位しか有りませんが?」


ミハルの返事に、


「そうか!やはり美雪さんは解っていたのか。

 ミハル、午後の射撃訓練には、そのお守りを着けて来てくれ。それで全て解るからな」


曹長はミハルの頭をポンポンと叩いて指揮官室の方に行ってしまった。

ミハルは曹長をあっけにとられて見送って、


「お母さんのくれたお守りと、私の能力・・・どんな関係があるんだろ?」


あまりの急展開な話で、目がぐるぐる回ってしまう。






「綺麗な石が付いてるじゃないか。それって、翡翠か?」


お守りを手に着けていると、キャミーが目ざとく見つけて近寄ってくる。


「んー、良く判らないんだ。

 お母さんがくれたお守りみたいなものだから。大切にしてたんだけど・・・形見だから」


ミハルの言葉に、キャミーが言いよどんだ。


「そ、そっか。お前の母さんの・・・。大切にしろよ」


キャミーがすまなさそうに言うのを、


「うん。ありがとう。でも、何でこんなのを着けて来いって曹長が言ったのか。

 意味が解らないんだ」

「へえ。ウォーリアが・・・いや、曹長がそう言ったんだ?」


キャミーが曹長の名を、下の名で呼んだのを訊いて、


「へぇーっ、曹長を下の名で呼べるんだ。キャミーは」


横で話を聞いていたラミルが茶化す。


「あっ!いや、あの・・えっと・・・」


真っ赤になって、しどろもどろになるキャミーに追い討ちを掛けるミリア。


「そーですよね。出来るならもっと声を小さくしてもらいたいものです。

 それに場所を弁えて欲しいのです」


<うわっ、ミリアも知ってたんだ。曹長とキャミーがHな事をしてたのを>


「うっ、うわあっ。何?何で・・知ってたのか?ミリア!」


さらに顔を真っ赤にしてうろたえるキャミーに、トドメの一撃が。


「ああ、皆知ってるぞ。

 曹長とお前が激しく求め合ってた事なんか。ちょっと焼けちゃったけどな」


ラミルがあっけらかんと言うと、


「あ、あの。皆って、小隊長も?」


キャミーの顔が今度は真っ青になる。


「んっ?ああ。

 私がユーリ大尉を送って帰って来たら、リーン少尉に呼び止められて。

 城壁の向こうには行かないであげてって言われて、こっそり見たらお2人さんが・・・

 だから知ってると思うぞ」


ラミルがにやりと笑ってキャミーに言った。


「う、ううーん」


キャミーは真っ青になって、ベットに倒れてしまった。


「あらら、失神しちゃいましたよ、キャミーさん。あははっ!」


ミリアが呆れた様に腰に手を当てて吹き出す。


「あははっ、ざまーみろ」


ラミルも笑う。

そんな二人につられて、ミハルも笑った。



ミハルの手で輝く青い石が付いたブレスレット。

この石にどんな秘密が有るのか、ミハルは曹長の言った能力がどんな物なのか知りたかった。


この時、ミハルは後の自分の運命を知る由も無かった。

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