第37話 あなたのいない世界で生きたくない


「嘘だよな?」


「チェイス・・・」


「また・・・四人で腕組んで、笑えるって信じてたのはオレだけなのかよ。なんで・・・そんな簡単に割り切れるんだよ」


 知らなかった、怒りって度が越えると苦しみに変わるんだ。


「おい、何度も言わせんな。オリビアの気持ちも考えろ」


「考えられるか!!!オレは、コイツとリルと先生と育ったんだ!!!いきなり出てきたてめぇの言葉の重みが違うんだよ!!!!」


 ポロポロと溢れるチェイスの涙、こんな涙を見るのはいつぶりだろうとオリビアは遠くの記憶を遡っていた。


「もう一度聞くぞ?」


 チェイスは、オリビアの方へ一歩また一歩と歩み寄り彼女の肩を掴んだ。


「本当にいいのか?」


「あ・・・当たり前じゃない。リルが生きてる、リルが笑ってる、それが私の幸せ・・・」


「じゃあ、なんで・・・お前は泣いてるんだよ」


「え?」


 気がつくとチェイスの言う通り彼女の瞳から、たくさんの涙が溢れていた。


「本音いい加減聞かせろよ」


「僕も聞きたいですね」


 聞き覚えのある声に前を向くと、扉に腕を組み若干怒り気味のリアムの姿があった。


「ずるい・・・この二人に嘘なんてつけるはずがないじゃない」


 もう、涙で何もかも見えない。まるで、暗闇に一人ぼっちみたい。


 怖い。怖いよ・・・。


「私は・・・本当は、生きたい。リルと・・・チェイスと・・・リアムさんとまた笑い合って、たまに怒って、そばに・・・居れるならずっと一緒に居たい・・・生きたいよぉ。三人のことが本当に大好きだから・・・」


 最後まで言い終わるところで、リアムはオリビアを力一杯抱きしめた。


「当たり前です・・・おバカ。オリビアが居ないとリルちゃんもチェイスくんも・・・僕も、また笑い合うことなんて有りない・・・ずっと一緒にいるんですから」


 気がつくとオリビアの体は、リアムとチェイスの優しい温もりに包まれていた。


「リル・・・怒るかな」


「一発は覚悟しな」


「ふぇええ・・・」


「大丈夫、一緒に謝ってあげます」


 その日をきっかけに、争いの計画は終わった。数日後、エリアの協力もありオリビアの能力も戻ってきた。


 そうして、シェリルに全て事後報告する日がとうとう来てしまった。


 場所は、シェリルとオリビアの思い出のクラウディアの記念公園。小さな公園でブランコと滑り台しかない本当に小さな公園だ。


 オリビアが到着する前に、一人ブランコで遊んでいるシェリルがそこにはいた。


 心地よい風が、頬を撫でた。その瞬間にあることがオリビアの脳裏を通る。それは、二人が10歳の時だ。オリビアは、チェイスからシェリルは、マーガレットから逃げている時。


 丁度、あの二つのブランコが揺れたのだ。

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