第33話 裏切りの香り

「なんで、そんなこと言うの?」


 いつもと様子がおかしいチェイスに、シェリルが尋ねた。


「それは・・・」


 本当のことを言うべきなのか、しかし言ってしまってもシェリルのことだ信じてはくれないだろう。


「チェイス・・・あんた、なんか知ってるわね」


 マーガレットの言葉に、確信した。この二人は知っている。シェリルの悲しそうな表情にチェイスは何も言えなくなる。


「知っていることを話して」


「オリビアは・・・「おっ!!チェイスじゃねえか!!」


 そこに現れたのは、ギルバートだった。まるで、チェイスのことを見張っていたかのように絡んできた。


「悪いが、カワイ子ちゃん二人。コイツ、借りるぜ・・・んじゃあな~」


「ちょっ!!離せよ」


 暴れようとしたチェイスに小声で、呟くギルバート。


「悪いが、これ以上いらねえこと言われると、こっちも考えがあるんだ」


「なんだよ」


「あいつだろ?神の国の次期女王ってんのは・・・」


「シェリルに何するきだ?!」


「ここで、殺してもいいんだぞ」


「てめぇ・・・」


 勿論、この声は二人に届いている訳はない。


「あんまり、いらねえことすんなよ。見張ってるからな」


 そのまま、じゃあな。とだけ伝えてギルバートはその場から去っていった。


「チェイスくん?」


 オリビアは、本気だ。本気で、シェリルを殺そうとしている。


「止めないと・・・」


「止める?なにを?」


「悪い、リル!!オレ、ちょっと行くところあるから!!あと、できる限り一人になるなよ!」


「うん?」


「絶対だぞ!!」


 そのまま、チェイスは魔の国に帰ってオリビアを追い詰めようと思った。


 絶対に止めないと・・・シェリルは、オレが守るんだ!!


 一方、魔の国の会議室ではというと。


「お前たちが協力してくれるんなんて嬉しいわ。ありがとう」


 薄暗い部屋に現れた人物はというと。


「別に、僕はこの世界に飽き飽きしてるだけだよ」


「自分は、こっちの方が楽しそうだなって思っただけですぅ」


 神の国の戦闘部隊のリーダー、ルイと、副リーダーのレイだった。


「神の国の戦闘部隊が魔の国に力を貸す?」


「狙いはなんだ?!」


「まさか、裏切るつもりではないだろうな!!」


 周りの老人たちは、早くも裏切りムードに変わっている。


 そんな彼らに、ため息をついてルイが懐から出したのは、書類の束。


「これ、神の国の戦闘部隊の内密書類。こっちは、頼まれてたシェリルの就寝時間とか無防備の時間帯。殺すなら、その赤いペンで引いてあるところがおススメかな」


 書類を手に取り、不敵な笑みを浮かばせるオリビア。


「これでも、信じてくれない?」


「ご苦労様。下がっていいわ」


 二人は、一度オリビアに頭を下げて会議室を出て行った。その時、一瞬振り向いたレイと目が合うオリビア。


「会議は、これにて終了。じゃあ、各自書類に目を通しておいて」


 まだ、廊下を歩いていたレイに声をかけるオリビア。


「なに?まだなんか用ですか?オリビア様」


「ルイ、アンタには用ないわ。用事があるのはレイ、アンタよ」


「自分ですか?」


「アンタ・・・私の考え透視したでしょ」


「わぉ・・・バレてた」

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