第32話 亀裂
シェリル暗殺計画会議から、一週間が経った。
平穏な日々が続いている中、チェイスはモヤモヤとした気分で歩いていた。
あの日、ギルバートがお城にやってきた時、落ち着きを取り戻したオリビアが、もう一度会議を開く。内容はシェリル暗殺計画について。
『シェリル暗殺計画についてだが、実行する』
その後、会議は十分ともしないうちに終わり、会議の終了後チェイスはオリビアを問い詰めた。
「どういうつもりだよ!!シェリルの暗殺を実行するって!お前、それでもあいつの親友かよ!」
廊下の壁に彼女を押し付けて、怒り狂うチェイスの頭にかかと落としを食らわせた。痛みに耐える彼に、オリビアは何も言わずにその場を去ろうとするが。
突然現れたエリアの手がそれを許さない。
「エリアさん・・・」
「オリビアちゃん・・・アナタ、一体なにを考えているの?」
「私は、裏切ることにしたの」
「リルちゃんを?」
「いいえ・・・私自身を・・・よ」
オリビアのどこか儚い表情に、エリアは黙るしかなかった。そのまま、エリアは手を離しオリビアは、自室へと帰ってしまった。
自室で一人になったオリビアが、扉に背を預けて考える。
「これでいいんだ・・・これは私の意思だ」
その言葉が、今後オリビアのことを縛り付けることになるなんて誰も予想していなかった。背後からノック音が聞こえてきた。
「オリビア、俺だ」
「ギルバート」
扉を開けると悲しそうな表情で立っていたギルバートが立っていた。
「本当にいいのか?実行して・・・」
「いいのよ。これで戦争を止められる」
「オリビア・・・」
「さて、次の段階に行くわ」
その話を聞いていたチェイスは、外に飛び出す。
は?意味わかんね・・・オリビアの奴、本気でリルを・・・殺すつもりなのか。親友じゃなかったのかよ。リルを殺すってことは、先生も裏切るってことになるんだぞ・・・。
チェイスは、道端で止まって先程の言葉を思い出す。
『私は、裏切ることにしたの』
『これは、私の意思だ』
どのオリビアの表情も、真剣だった。何かを決意した表情だった。
彼女は、なにかを起こそうとしている。
「あぁぁぁああ!!もうわかんね!!」
再び頭を抱える。
でも、変わらないことは一つある。
シェリルを守るということ。必ず、守ってみせる。ということだ。
「あ!!チェイスくん!!」
ふと、背後から可愛らしい声が聞こえてきた。振り向くと現れたのは、買い物中であろうシェリルと、マーガレットだった。
「おお・・・珍しい組み合わせだな」
「そうなの!!オリビアに、ナイショでね!サプライズプレゼントしようかと思ってて!!それのプレゼント選び!!」
その純粋な言葉に、なにを考えているのかさえ教えてくれないオリビアに再び腹が立って仕方ないチェイス。
「そうだ!チェイス!!お前も買い物に付き合え、その方がオリビアがなにが欲しいのかわかる!」
「マーガレット!!それ、いいわ!!そうしましょ!!」
ねっ!と、チェイスの方を向くと彼はただ下を向いたまま歯を食いしばっていた。
「チェイスくん?」
「オリビアは!!シェリルのこと・・・大切になんか思ってない」
「え?」
チェイスの言葉にきょとんとした表情を浮かばせたシェリルであった。
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