第31話 何かの予感
その日、リアムはいつも通りに魔の国のオリビアに会い行っていた。
「今日は、オリビアの好きなチョコレートタルトも買ってきましたし・・・きっと喜んでくれるでしょう!」
オリビアの喜ぶ顔を想像しながら、彼女の住んでいるお城へと向かう途中に、こんな話を小耳に挟んだ。
『おい、聞いたか?神の国への戦争会議が今日、あるらしいぞ』
『ばっ!!お前、そんなことを大声で話すもんじゃねえよ!!』
『さっき、オリビア様が大荒れだったらしいぞ』
あちこちで、オリビアについての言葉の数々にリアムも不信感を覚える。
とりあえず、オリビアの待つ部屋へと向かおう。
「オリビ・・・」
思わず、隠れてしまった。何故なら、そこにギルバートが居たからだ。声は聞こえないので、何を話していたのか聞こえないが、わかることは、オリビアが泣いていて、ギルバートがそんな彼女を抱き寄せていた。
なにも言えなくなってしまったリアムは、そのままその場を去っていった。
クラウディアの公園のベンチで、腰を掛けて夕焼けを眺めるリアムには、その美しい色鮮やかな夕焼けは目に入っておらず、思い出すのはギルバートに優しく抱きしめられていた愛おしい恋人の姿。
「あれぇ?リアムさんじゃないですかぁ~?」
「貴方は・・・レイくんじゃないですか」
「奇遇ですね~。お仕事で・・・はないようですね」
「また、お得意の透視ですか?・・・おっと」
レイが投げてきたのは、ブラックコーヒーだ。
「まっさか~。そんな分かりやすく、しょげてる人に何があったぐらい透視を使わなくても分かりますよ」
もう一本持っていた缶コーヒーを飲んでいると、リアムは『お隣どうぞ』と言わんばかりに、席を一人分空けた。
レイは、そのまま彼の隣に腰を掛けて缶コーヒーを傾けていた。
「恋愛って難しいですね・・・。なーんて、こんな、お兄さんに言われてもって感じですよね」
「自分のことをお兄さんって言えるその鋼のメンタルがあるならば大丈夫じゃないですかぁ?・・・オリビアさんのことでしょ?」
「バレてますか?」
「そこは、なんでもみえーるんで。もっと見てあげましょうか?」
レイは、嫌がらせで言ったつもり見てくれと言わんばかりに彼に真正面を向けた。そんな彼の態度に、一つため息をついて手のひらをリアムの胸に当てた。
すると、レイの脳内に流れ出す。リアムの思考回路。
「ほうほう、昔の彼女さんのアリシアさんにオリビアさんがそっくりと・・・それを旧友のギルバートの兄貴に突かれて痛かったってところですかね?」
「さすが、大正解です」
レイの名推理に、思わず苦笑を浮かばせるしかなかったリアム。
「そんなの・・・「あっ!!レイのお兄ちゃんだ!!」
「本当だ!!!お兄ちゃんだ!!」
「レイ兄!!また遊んで遊んで!!」
ベンチにやってきたのは、この公園で遊んでいた子供たち。年端もいかない少年少女が色々なおもちゃを持ってレイに近寄ってくる。
「この子たちは?」
「ああ、たまーに遊んでもらってるんですぅ~。ほら、自分友達少ないでしょ?だから・・・それに、子供たちの運命は見透かせないから一緒にいて楽なんですよぉ」
レイの膝に座りたがっている女の子を抱き上げてやる。すると、『次は、ぼく!!』や『レイくん、わたちも~』と、手を挙げて喜ぶ子供たち。
「レイさん・・・自分が嫌われ者だってこと気づいていたんですね」
「わお・・・そこまで言うか」
感情がないように聞こえる彼の言葉。でも、レイは子供たちと遊んでいる時は今までに見たことのない笑顔ではしゃいでいた。
「では、僕は帰りますね・・・色々とありがとうございました」
よっこいしょ。と、立ち上がるリアム。
「リアムさん・・・。オリビアさんですが。・・・・・・・・ますよ」
「え?」
「お気をつけて」
リアムは、レイの言葉が信じられなかった。いや、信じたくなかったに近いのかもしれない。
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