第28話 その決意
クラウディアでは、いつも通りの日常が流れていた。
「先生は・・・オリビアのこと好き?」
今日は、オリビアとチェイスと昼からフウカで呑み会だ。ゆっくりと歩きながら、早めにフウカに着いてしまったシェリルとリアムの話題は、オリビアとのことだった。
「好きですよ」
「へぇー・・・で、どこまで進んだの?」
「そのお話は、オリビアが来てからでお願いします」
店員が持ってきてくれたお冷を一口飲んだ。
「最近、オリビアのことちゃん付けしなくなったから怪しいな~とは、思ってたんですよね~。まさか、そこまで進んでいたとは・・・」
「報告をすっかり忘れてしまっていました。すみません」
お手拭きで手を拭きながら、オリビアたちが来るのを待っていると丁度いいタイミングで彼女たちがやってきた。
「あ、リアムさん!!」
「ちょっと~オリビアったら、私もいます~」
「あ、ごめんごめん!!ちゃんとわかってたよ!!」
「ちょっと聞いてよ、リル。コイツさっきから先生とのこと教えてくれないんだぜ?」
「だから、なんでもないってば!!」
「いーや!!ある!!だって、ずっと『先生』って呼んでたのにおかしくね?」
二人は、席にもつかず言い合いを始める。そんな二人を見て、席につくように勧めるリアム。大人しくとりあえず席につくが、チェイスの口は止まらない。
「で?!先生は?先生とオリビアってまさか付き合ってたり??ってまさかな~」
「付き合ってますよ」
「へ?」
チェイス自身も間抜けな声を出したと自覚していた。
「え?!本当に!?オリビアっ!?」
当の本人を見るが顔を真っ赤にして、黙る。
「マジで?!先生、本気なの?」
その言葉に少し不安になりリアムの方を向くオリビア。しかし、そんな不安をよそにリアムはテーブルに頬杖をしてにこっと微笑みながらこう呟く。
「愛してますよ」
「ちょっと待って。聞いたオレまで照れるわ」
あまりにも、真剣なリアムの瞳がどこかくすぐったくてとりあえず、店員に渡されたお冷を飲む。
「そ、そういうチェイスとシェリルは?」
話題を変えたくて、オリビアは頼んでいたポテトフライを摘まんでいたシェリルに話しをふった。
「へ?・・・あ~」
「え?なに?」
「オリビア、言うの忘れてた。オレ、リルと婚約してます」
「いや、無駄に決め顔でサラリと爆弾投下するのやめてくれる?」
言いにくそうなシェリルの代わりにチェイスが爆発発言した。
「え・・・シェリルは?」
「あ、愛してます」
顔を真っ赤に染めて呟くシェリルに、本気さを感じたオリビアとリアム。
「まぁ、コイツは私の弟みたいなもんだから、それに私はシェリルが幸せならそれでいいのよ」
「オリビア・・・」
「だーいすきな親友だしね」
この時の笑顔でシェリルは、何かを悟った。
「僕のことは?」
にこっといつも笑顔でオリビアに顔を近づけるリアムに、顔を真っ赤にさせるオリビア。
「もう!!怒りますよ!」
「あははっ!顔、真っ赤ですよ」
「知りませんから!!」
「そんな顔しないで、オリビアのその困った表情が堪らなく好きなんです」
目の前にいるオリビアの頬に手を伸ばして優しく触れる。
「せ、性格悪いですよ!!!」
「あ、また赤くなった」
「もうっ」
しかし、オリビアも満更でもなく本当に幸せそうに微笑む。
「で?で?二人は、どこまで進んだの?」
シェリルのずっと聞きたかった話題に変わる。チェイスもその話題には、興味津々そうだ。
「最後まで」
あっさりと話してしまったリアム。
「ちょっ!!リアムさん!!?」
彼も先程から、呑んでいた為少し酒が回っいるようだ。
リアムの言葉に、思わず恥ずかしさに顔を手で隠すシェリルとチェイス。
「聞いた本人たちが恥ずかしがらないでよ!・・・あんたたちは?どこまで進んだの?」
「聞いて驚け!!!抱きしめたっ」
「ピュアか」
けっと、吐き出すように注文していた酒に手を伸ばした。
そのあと、四人は夜まで語り合った。
その日のことは、けして忘れられないほど四人の記憶になった。
解散後、魔の国に帰るオリビアとチェイスの姿を見送りながら、シェリルは隣にいるリアムに呟く。
「オリビアに私は、殺せないよ。だって、先生もみたでしょ・・・あの時のオリビアの私への笑顔」
『だーいすきな親友だしね』その言葉に嘘偽りはけしてないと思う。そう信じたい。
「僕もそう思います。オリビアは、そんな子ではないから。それに、オリビアはメロメロに可愛いですからね」
「先生・・・だいぶ酔ってるでしょ。私たちも帰りましょ」
今夜のことをけして忘れない。
魔の国の帰り途中のオリビアとチェイスは、深刻な表情を浮かばせたまま少しの間沈黙が続いていたが、それをチェイスが破る。
「オリビア・・・」
「このまま実行するわよ・・・」
「ホントにいいのかよ」
「ええ・・・シェリル暗殺計画を・・・ね」
歯車が回りだした。
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