第26話 胸に引っかかった違和感

仕事終わりのオリビアは、リアムとデートの約束をしていたのでクラウディアの時計塔の前で待ち合わせをしていた。


 幸せオーラプンプンで、待っている彼女を呼ぶ聞き覚えのある声に振り向くとそこには、愛おしい彼氏のリアムではなくオリビアの婚約者(仮)のギルバートである。


「おお!!オリビアじゃねえか!!」


「げっ・・・ギルバート」


「んだよ、ギルでいいって言ってるだろう!!!」


 ガシガシと、オリビアの頭を撫でまわすギルバートに怒りMaxのオリビアの回し蹴りが入るがあっさりと避けられてしまい、しゃがむ込まれる。


「あ、短パン履いてやがる。でも、短パンもエロよな・・・拝んどくか」


「拝むなっ!!このド変態!!」


 目の前で、手と手を合わせられるオリビアの苛立ちが絶頂に達して一周回り冷静になる彼女の脳内では『コイツ、殺そう』と考えてしまう。


「なにしてるんですか・・・ギルバート」


「おお!!リアムじゃねか!!なんだ?二人して、今日はデートか?」


 今にも拳銃を持ち、ぶっ放そうとしているオリビアに助け舟が出された。


「リアムさん!!」


 拳銃に伸ばした手をやめ、リアムの後ろに隠れるように駆け寄る。


「遅れてしまい申し訳ございません。書類の整理を任されてしまいまして・・・」


「大丈夫です!でも、変なのに絡まれてしまいました・・・」


「そうですね、色々面倒なので殺しましょうか?」


「おい」


「やだ・・・そいつ殺したら、リアムさん犯罪者になちゃうもん」


 ぎゅっと、リアムの白衣を掴むオリビア。


「大丈夫ですよ・・・完全犯罪にしますから」


「リアムさん素敵」


「おーい。俺、殺されるのか・・・」


 遠い目で二人を見つめているギルバート。しかし、二人にはもう聞こえてこない。


「まぁ、良いか。んじゃぁ、俺はこれでけぇるぜ」


 一度、オリビアとの目線を合わせえてしゃがみ込み彼女の頭を優しく撫でた。


「なんかあったら、いつでも頼ってこい。じゃあな」


 この時のオリビアは、ギルバートの考えがわからなかった。しかし、少ししてからこの言葉を理解するのだ。


「オリビア・・・あいつになんか言われました?」


「え?特になにも?」


「そうですか」


「リアムさん?」


「いえ、なんでもありません・・・さぁ、お腹も空きましたし行きましょう」


「は、はい」


 なんだろうか、この胸に突っかかる違和感は。


 なんだろうか、このリアムさんが私を見るときの悲しい瞳は・・・今までとはなにか違うの。


 この違和感に気が付く頃、私はどうすればいいのだろうか。


 この人が私に本当に笑ってくれる日が来るのだろうか。

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