第20話 土下座
放課後。再び、ノアはオリビアを呼び出した。
不機嫌丸出しの彼女に軽くビビる。
「なに?」
「こ、この俺様と・・・勝負しろ」
「は?勝負?」
ノアの考えはこうだ。
まず、オリビアと勝負する。そして、その勝負に勝利した方の言うことを聞く。
「なによそれ」
「俺様が勝ったら、ノア様の彼女になると誓え」
「私が勝ったら?・・・なんもメリットない。めんどくさい・・・帰るわよ」
「このパンダのぬいぐるみを返してやろう」
「それっっ!」
そう、オリビアの誕生日の時にリアムが彼女が好きな動物であるパンダのぬいぐるみを体術の授業の時間に奪っていたのだった。
「コレを返して欲しければ、俺様と勝負・・・」
「アンタ、一番やってはならないことをしてしまったわね・・・」
オリビアの瞳に映るのは、凄まじい怒り。
「イイわよ。私が勝ったら、そのぬいぐるみと土下座の謝罪よ」
「ど、土下座!?」
「嫌なの?この私と付き合いたいんでしょ?」
「うっ・・・」
もはや、どっちが上なのかわかったモノじゃない。
その様子を陰の建物から一部始終を見ていたチェイスとシェリル。ちなみに、レイは興味がないし、ドラマの再放送もあるので帰宅した。
「アレ、止めに入った方が良くない?」
「いやぁ・・・リアム先生からの誕プレ取られた時点でアイツの怒り半端じゃねえからなぁ・・・オレが、ここで入ったら死亡フラグが・・・」
「オリビア・・・」
「で?何で勝負するの?」
「俺様の、真後ろにある地面のアルミ缶を三つ全部撃てたら、返してやるよ。ただし、撃つ場所は、三メートル離れた所からだ」
「・・・わかった」
ため息をついて、ノアから拳銃を受け取るオリビア。彼女は、言われた通りの場所に立ち拳銃を構えた。
ーーまぁ、この場所からなら俺様でもギリギリ届くかぐらいだしな♪
その時だ。
銃声の音と、カンッカンッカンッと当たる音。
オリビアの放った銃弾は、全て完璧に三メートル先の地面の缶のど真ん中を撃ち抜かれていた。
「え・・・」
これを瞬殺と言うのだろうか。
「はい、コレでイイでしょ」
「え・・・なんで」
「私、いつもは五メートル先の瓶を撃ち抜く練習してるから」
「俺様の・・・負け?」
「さっさとそのぬいぐるみを返してくれる?」
ーー成績優秀、眉目秀麗、女子に学年一番モテる俺様が負けた?
「ねえ!!話し聞いてる?」
「なんでだよ!!なんで・・・俺様じゃダメなんだよ!!」
「は?」
「俺様は・・・俺は、お前のことを好きだって言ってやってるんだぞ!!」
顔を真っ赤に染めて、思わずパンダのぬいぐるみを抱きしめて精一杯彼女に想いを伝えた。
「いや、今初めて言われたけど・・・」
「・・・え」
あ。と、思い出して思わず口を押さえる。そんなノアに、オリビアは深いため息をついてノアから、ぬいぐるみを返して貰ったついでに彼の頬にキスを落とす。
「ありがとう・・・その言葉は凄く嬉しかった・・・。でも、私にはもっと大好きな人が居るから・・・ごめんなさい」
ノアの頬を伝う涙。これが、失恋。初めて味わった敗北なんかよりずっと苦しくてまるで心臓を鷲掴みにされる様な感覚。いつからか、ノアは本気でオリビアに惚れてしまってた様だ。
そして、思わずノアはオリビアの事を抱きしめ耳元で囁やく。
「ありがとう」
その瞬間を見ていたのは、チェイスとシェリルともう一人居たのはまた別のお話し。
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