第21話 過去の自分


「ふぅー・・・仕事も終わったことだし、これからどうしますかねえ~」


仕事終わりの夕方、リアムは一人背伸びをしながらクラウディアの街を歩いていた。


「オリビアは、シェリルちゃんとご飯だし・・・んー・・・このまま帰るとしますか」


魔の国に行こうとしていた足を止めて、彼はそのまま自分の住んでいるクラウディアのアパートに帰ろうとしていた。


リアムは、神の国の国籍だが基本クラウディアの安いアパートか、魔の国と神の国を行き来していた。


ボーッと、歩いていると酒瓶を片手に歩いているギルバートに出くわした。


「おっ!!リアムじゃねえか!!」


「ギルバート・・・」


あからさまに嫌そうな表情を浮かばせたリアム。


「ンだよ、ンだよ!!嬉しいのか?俺に会えて嬉しいのか?」


ギルバートは、だる絡みにリアムの肩を抱き顔を近づけた。


「酒臭いんですけど・・・」


「そりゃぁ、呑んでるからな〜お前も、一杯どーだ?」


「いや・・・今日は、もう帰りますから」


それでは。と、ギルバートの腕を振り払う。


「なんだよ、つれねえなぁー・・・オリビアと喧嘩でもしたのか?」


「は?」


『オリビア』その名前が発しられた瞬間リアムの笑顔が消えた。


「お前、如きがオリビアのこと呼びしてるんじゃねえよ」


「おっ!学生時代のリアムに戻った」


「あ・・・」


思わず、口を手で塞ぐリアム。駄目だ、どうもオリビアの事になると自我を保ってられなくなる。


「ンだよ〜・・・俺は、学生時代のお前の方が人間らしくて好きだったぜ?」


ギルバートに背を向けてリアムは、こう呟く。


「もう、あの頃には戻りたくないんですよ・・・」


「へぇー・・・それってアリシアのことか?」


『アリシア』という、名前を聞いた瞬間リアムの顔色が変わる。


「そういや、思ったんだけどよ?オリビアとアリシアに似てるよな!性格は、アリシアの方が荒っぽいが、顔はまるで生き写しって言うのか?俺、初めてオリビアに会った時、驚いたぜ。お前、実のところ・・・アリシアにオリビアを重ねてるんじゃねえか?」


リアムは、歯を食いしばり白衣の下に隠していた拳銃をなんの迷いもなくギルバートに向けた。しかし、ギルバートは顔色一つ変えなかった。


「ンだよ。図星か?」


「黙ってください」


「最低だな、お前」


「黙ってくださいって言っているでしょう」


「オリビア、そのこと知ってるのかよ」


「黙れっっっっっっっっ!」


拳銃を向けられているのは、ギルバートのはずなのにリアムの方が今にも泣き出しそうな表情を浮かばせていた。


「分かった・・・先に謝っておくわ、リアム・・・。俺が、オリビアをお前から奪うわ」


「え?」

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