第16話 結ばれた日
ーー僕は、何なんだろうか。
「リアム先生!!」
「はい?」
まだ、彼が教師をしていた頃、次の授業に行こうとしていたところに、丁度他の神の国の女子生徒達がやって来ていた。何やら、顔を染めて周りの女子達は、ホラホラ!!と、急かしている内心、リアムは『めんどくさ』と、思ってしまっていたが、彼はいつもの薄っぺらい笑顔を貼り付けて差し出された手紙を受け取った。
遠くの方で、学生時代のオリビアが見えた。何やら、同じクラスの男子と歩いていた。それを見たリアムの胸は何故かちくりと痛んだ。
「うわぁーー。まぁたアイル先輩、他の子狙ってるよ・・・。」
「わぁ・・・本当だ・・・え、一緒にいるの魔の国の人間じゃん・・・」
「ならいっか」
あははは。と、声を上げて笑っている女子生と達。リアムは、一緒に笑っていた彼女達の頭に軽くチョップをする。
「魔の国も、神の国も関係ありません。戦争は、終わったんですよ。それに、そんなガキ臭い事を言っている子は、タイプではありません」
『 失礼します』と、貰った手紙を返してから小走りでオリビアの後を追うリアム。
「確か・・・バラ園に行った筈なんですが・・・。あ、いた」
咄嗟に、何故か彼らの近くに合った茂みに姿を隠した。
「あのさ?良かったら、俺と付き合ってくれない?」
「え?」
まさかの告白だった。結構、アイルの方も真剣そうだ。アイルは、魔の国の人間で遊び人だという噂は、絶えない。
「ダメか?」
「いや・・・。急に言われても・・・」
「オレ、オリビアのこと大事にする」
「ごめんなさい・・・。私には、好きな人がいるの・・・」
思わず、リアムの耳もダンボになる。
「それは、言えない・・・でも、私はその人の事を永遠に愛してるから」
その時のオリビアの表情は、なんとも言えないほどに美しかった。アイルは、そのまま彼女の前から姿を消した。
「先生?いるんですよね?」
「ぎくりっ・・・。やはりバレてましたか・・・」
茂みから出て、頭に付いた葉っぱをオリビアが近づいて取る。
「全く、困った人です」
「それは、すみません」
バラ園にあるベンチに腰掛けて、雲一つない空を見つめていた。
「さっきの話し聞いてました?」
「はい・・・」
「あはは、やっぱり」
オリビアの隣に腰掛けて、白衣のポケットからタバコを出して加えるリアム。
「先生は・・・なんでいつも私の事を気に掛けてくれるのですか?」
「あ、ライターどこだっけ・・・」
「魔の国の次期女王ですよ」
「あれ??・・・あ、見つけた」
わざと話しを流しているのか、良く分からないがオリビアは続けた。
「ありがとうございます・・・嬉しかった」
「ふぅー・・・。別に、良いんですよ。オリビアちゃんは大切な生徒です・・・守って何が悪いんですか?」
「私の人生より、遥かに先生の方が素敵ですよ。」
「そうですかねー・・・」
「はいっ!!私、先生のこと大好きです!!」
満遍な笑みを浮かばせて、自信満々に答えるオリビアに驚く様に目を丸くした。
「あっっっっっっ!!!い、今の好きは先生として好きと言うか・・・その・・・なんて言うんだろう・・・わぁぁぁあ・・・変な汗かいいてきた」
真っ赤に染めた彼女の頬を両手で包み込む。
「せ、先生!?!!?」
「え?!?!?!あ、すみません!!!」
『い、今・・・僕は一体何をしようとしたんでしょうか・・・でも、大好きか・・・不思議です・・・貴女のその言葉で、僕は明日も生きて行こうと思える』
そして、現在の魔の国。
「リアムさん?リアムさん・・・いい加減起きてください」
「・・・ん?」
どうやら、長い時間夢を見ていた様だ。フカフカな大きなベッド、隣には服を着ようと下着を着ているオリビアがいた。
「メガネ・・・メガネ・・・」
手探りで、枕元にあるメガネに手を伸ばす。まだ、寝ぼけ眼で、背後からオリビアを抱きしめる。
「り、リアムさん!?!?!?」
「あれ?もう服、着ちゃうんですか?」
「当たり前です!!!ちょっ!!くすぐったいですぅ!!あはははは」
フカフカな大きなベッドに、愛おしい人。嗚呼、生きていて良かった。この時間が、ずっと・・・ううん、いっそ時間さえ止まればいい。彼、リアムは心からそう思っていた。
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