第14話 嫌われ物のキメラ


翌日。


オリビアは、何やあら考え事をしているチェイスを横目にパトロールをしていた。


「はぁ・・・」


これも、今日何十回目のため息になるのだろうか。流石に、あからさまな彼の態度にイラついたオリビア。


一度、立ち止まり背伸びをしてチェイスの胸倉を掴む。


「その辛気臭い顔と、声やめてくれないかしら・・・ため息が多いのよ!」


「はっ!??顔は、関係ねえだろ!?」


「あるわ!!!」


街中で、大声で喧嘩を始めるオリビアとチェイス。そこに。


「お?まぁた喧嘩か?」


腰に刀をさして、手には酒瓶を持ったギルバートと出くわす。


「あんた、確かオリビアの婚約者」


「おう、ギルバートだ。よろしくな!・・・お前誰だっけ?」


「オレは、オリビアの世話係兼ジェットブラックの副リーダー。チェイスだ」


「世話係ねぇ・・・」


「んだよ」


ジロジロと、チェイスのことを舐めるように見つめるギルバート。


「いや?いつもそのフード被ってるのか?」


「あんまり、見るな」


「人と挨拶す時は、ちゃんと目を見てって母ちゃんに言われなかったか?」


遥かにギルバートの方が、身長も高くガタイもいい為呆気なく、深く被っていたフードを取られてしまう。

ひょっこりと、顔を出す紅色のサラサラな髪といくつかピアスの空いた猫耳。


「お前、キメラだったのか」


「ちょっ!!ギル・・・」


「いいじゃねえか!!!顔だって、俺には負けるが整ってやがるしな」


そこに丁度、パトロールを終えて街歩いて居たシェリルとリアムがやってきた。


「あ、オリビアっ!!!この後ひま?先生たちとお茶でもしよー!!」


チェイスは、シェリルの顔を見るなりフードを深く被ってその場を走り去ってしまった。


「チェイス!!!!」


「チェイスくん!!?」


チェイスの後を、追おうとしたオリビアのポニーテールを掴むギルバート。


「いった!!!なにすんのよ!!!」


「ここは、オリビアの出番じゃねえよ。おい、そこのちっこい姉ちゃん・・・行ってやれ」


ギルバートは、優しくシェリルにチェイスの後を追わせた。


「ギルバート・・・貴方、なにを考えてるんですか?」


チェイスの意味のわからない言動に、リアムは腕を組み横目で彼を見つめる。


「いんやー?特に何にも考えてねえよ?」


「だと思いました・・・で、貴方はいつまで彼女の髪の毛を掴んでいるつもりですか?」


「お?わ、わりい!!!オリビア、痛かったか?」


「ふんっ!!」


オリビアは、勢いよくピンヒールでギルバートの足を踏み抜く。


「いでええええええええ!!!!!!!!」


やっと彼女の髪は、解放された。


「ざまぁ・・・・おっと、口が悪かったですね」


「ハゲたらどうしてくれるのよ」


全く。と、文句を言いながら髪の毛を結い直すオリビア。


「よしっと・・・。えっと、あとは上への報告だけだから、私がしておく。解散っ!」


オリビアの命令に忠実に言うことを聞くメンバーたち。あっという間に消えていく。


「チェイス・・・大丈夫かしら」


「僕より、彼の方が心配ですか?」


腕を組み、少し拗ねた口調でオリビを見つめていたリアム。


「そ、そんなことないです!!先生が私の中では一番っ!!!?」


思わず、大声を出してしまい途中で我に返るオリビアは顔を真っ赤に染めて手で隠す。そんな彼女の姿を見て満足そうに微笑むリアムであった。


「いい性格してるな・・・本当にお前・・・」


そんなリアムを見て、ギルバートはため息しか出なかった。

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