雨と傘、飛行機とコインケース

雨が降ってきた。



コンビニで500円で売っているビニール傘。それに挟まれた街が滲んで見える。



傘は滲ませる。全てを滲ませる。国籍も容姿も貧富も問わず滲ませる。



いや、滲ませているのは雨か。



このビニール傘は、誰にでも等しく雨が降ると半透明のフィルターで教えてくれているだけかもしれない。



雨が滲む。赤が滲む。街が滲む。誰かが滲む。



雨がベースで町がメロディを奏でる。



誰かにとって俺は他人で、風景の一部にすらなったないんだろう。



それでいい。それでいいか。それでいいや。



俺は誰かの風景になれたと思っている。それが正解かなんて知りたくもない。



それでいいんだよ。



見上げた空に光が見えた。



こんな夜にでも飛行機は飛ぶんだな。



さて、どこに行こう。穴の開いたコインケースひとつだけ持って。

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