#18 ゴシップガールは前世紀の夢を見るか

 ◇ハーレムリポート 電子個人誌ジン版 #48◇


 あいもかわらずフカガワミコトの消息は知れないまま、ゴシップガールとしての存在意義を問われる事態に直面してただいま大ピンチのレディーハンマーヘッドだよ。みんな心配してくれてる?


 うーん、本当にどこいっちゃったのかなあ、フカガワミコトってば。そもそもどうして出撃中に消息不明になっちゃったのかなあ? 特殊な乙種侵略者の能力で戦闘中にさまざまな場所に飛ばされたというのが先生たちによる発表だけど、本当かな~? 信じていいのかな~? 


 ま、なんにしてもフカガワミコトの行方がわかんない以上、レディーハンマーヘッドはベッドの上でゴロゴロするくらいしかやることが無くなっちゃうわけで。


 ……ん? 地下に逃亡中なんじゃなかったのかって?

 ふっふーん、アンダーグラウンドを舐めちゃ困るのよ。最近の地下の国には誰かさんみたいにすーぐ人の首をはねたがるハートの女王様が治るワンダーランド以外にも快適なベッドを提供してくれる立派なホテルがあったりするのよ(……え、「誰かさんって誰?」だって? さーて誰かな〜?)。


 てなわけでレディーハンマーヘッドはしばらくは快適なベッドの上で惰眠を貪る生活を送ることにします。目覚める時はフカガワハーレムに何かが起きた時だよ、それじゃおやすみ。皆さん良い夢を。



 ……むにゃむにゃ、それにしても一人だけ学園島に居残りになってる、仲間はずれの誰かさんは今頃さびしくないのかにゃー……可哀想だにゃー……むにゃむにゃ。


 ◇◆◇


「――」


 閉店間際のりゅうぐう温泉の前で、二人一組二つ分、つまり八つの目玉による視線が交錯する。

 四人のうち、一人ゆうゆうとアメリカンドッグを食べ終わっていた人造少女のノコを除いた残り三人はしばし雷に撃たれたように硬直していた。


 金縛りが解けたのは、番台に座っていたりゅうぐう温泉の主がかかっていた暖簾を下げて「もう消していいかね?」と断ってから蛍光灯の灯りを消した瞬間だった。


 同じ極を近づけた磁石のように両者は反発して飛びのきあう。


「深川尊――!」

「文芸部のちんちくりん――!」


 なんでお前がそこにいる? という表情がそれぞれの顔に浮かぶ。それにしても「文芸部のちんちくりん」とはなんだ?

 その中でいち早く的確な行動に移せたのがミナコだった。パチパチっと瞬きをするなりメガネ型ワンドに内蔵されている通信機能をオンにする。おそらく宿舎に連絡するつもりだったのだ、消息不明だったフカガワミコトがここにいる、と――。

 

 が、ミナコもメガネのレンズに細かな罅が入って真っ白になる。その光景だけ見ると漫画じみているがワンド破壊だ。外世界の未知なる物質で出来ているワンドはちょとじゃそっとのことでは壊れない、にもかかわらず壊された!

 ミナコのワンドを破壊した犯人は誰なのかすぐにわかった、むっと唇をとがらせたノコがミナコを睨んで指を突きつけているのだ。


「お前たち、ワルキューレだったのか! さては島からの追手――っ⁉」


 ノコのその口を手のひらで塞いだのはフカガワミコトで、ようやく金縛りの解けたサランはというと思わずミナコの手を引いてその場から逃走を計っていた。

 

 なぜにどうして神秘の力をトヨタマタツミの力でさえ見つけられないレベルで消息不明だったフカガワミコトがここにいるっ? ――という疑問よりも先に、文芸部員として二人から距離を取らねばという反射神経に突き動かされたのだ。文芸部員はフカガワハーレムにお触り禁止、しかしあの距離では接触は避けられない。


「弱ったでござる、某もワンドを破壊されては手も足も出せんでござるよ!」

 サランの隣を走るミナコは眼鏡をはずし、素顔をさらす。声に珍しく焦りが滲む。

「と、とりあえず宿舎に戻ろう! 上に報告もしなくちゃなんないしそれに――」


 サランは続きを口にできなかった。二人のすぐ後をタタタタタタっと追う足跡が聞こえてくる。そしてそれは即座に距離をつめてくる。追手はもちろん、一人しかいない。振り向くと目を吊り上げたフカガワミコトだ。その周囲を宙に浮くことができるノコが涼しい顔で追いかけてくる。


「待ちやがれぇぇぇぇー! てめっ、そこの、文芸部ーっ!」


 フカガワミコトは叫ぶ。

 サランはそれを聞いてゲッと呻く。追跡者はサランをご指名だ。

 りゅうぐう温泉は宿舎まで数百メートルの距離はあるがフカガワミコトは腐ってもワルキューレ、しかも特級。二人との距離を見る間に縮めてゆく。このままでは二人とも追いつかれてしまう――。


「気仙沼さんっ、とりあえず先に宿舎戻ってて! そんで上の人ににヤツがいたって報告頼むっ!」

「心得たでござるっ」


 受け応えるとミナコは路上からぴょーんと民家の屋根まで跳躍する。そのままぴょんぴょんと学習塾に擬態した宿舎の収まるビルまで素早く移動。ビルの向こうから見える赤い鉄塔の九十九タワーを背景に収めたミナコの後ろ姿はウサギ耳風リボンと相まってフィクションに登場する美少女戦士風趣があったが感心している場合ではない。

 サランは再開発を待つ鄙びた下町を装う路地裏に身を滑らせる。

 九十九市の地理には通じている。似たような木造家屋に小さな庭の片隅に植えられた今の時期なら紫陽花を覗かせる生垣やブロック塀がならび、迷い込んだものの方向感覚を意図も容易く狂わせるこのエリア、一見さんには攻略の難しい一帯だ。九十九市などという低レアワルキューレのルーティンワーク出撃先に、甲種殲滅に駆り出されてばかりな特級が足を踏み入れているはずが無い。サランはそう見越していいた。

 民家からテレビの笑い声や生活音が漏れ聞こえる生活音を振り切り、フカガワミコトを撒いてから宿舎に帰還する予定、だった。


 が、


「待てっつってんだろうが、文芸部のちんちくりん!」


 げ。

 

 自分の進路方向の路上に、肩をいからせるフカガワミコトが立ちはだかり、サランは急ブレーキをかける。なぜここに? なぜ奴に先回りが可能だった? という疑問はすぐに解ける。フカガワミコトの数メートル上に白銀の髪を持つノコが浮かんでいたのだ。あれくらいの高さにいればサランがどこを走ってどこに向かおうとするのかすべて丸見えだろう。

 ブレーキをかけてすぐ元来た道を引き返そうとすると、ノコが目の前にふわりと降りてくる。そして、むっとむくれた顔を近づける。


「逃げるな、ぶんげえぶのちんちくりん、マスターが逃げるなと言ってるからお前はそこで待機だ!」


 そしてサランに右の肘を突き付ける。肘から指先が瞬時に変化する。高速で回転する無数の歯をを持つ鋸の形。フカガワミコトが「ノコ」という愛称をつけるきっかけになったその形状に。チュイーン……と目の前で物騒な音を立てるそれを、ぷんぷん、という擬音がぴったりな表情での子はサランに変化した自分の体をサランにつきつける。


「ちょっとでも動くとお前をこれで切り刻むことになるぞ、ぶんげえぶのちんちくりん。マスターの命だ」

「待て待て待て待て、誰もそこまでやれって言ってない! 早まるなノコっ」


 後ろから駆け寄るフカガワミコトが慌てて打ち消す。そしてサランの肩を背後から掴んで振り向かせた。

 短く切った髪、スポーツ用品ブランドのロゴがプリントされた普通の黒T。ごくありふれたグレーのスウェット。身長はサランより頭一つほど高い。さっきよりも至近距離で見たフカガワミコトは何から何までその辺にいる男子だった。本当は九十九市の一般市民なんじゃないかと疑ってしまうほど。


 しかしフカガワミコトは逃げ出さないようにサランの両肩をつかみ、その顔を睨んでこう問い詰める。


「――お前、文芸部の副部長だろ……っ?」


 サランは無言で視線をそらす。文芸部員はフカガワハーレムにおさわり禁止だ。

 無言のサランに苛立ったのか、フカガワミコトはサランの肩を掴む手に力を籠める。


「黙ってんじゃねえよ! お前らこっちのこと好き勝手に書きまくってる癖に、ふざけんじゃねえぞ文芸部のちんちくりん!」

「――違います、うちは文芸部のちんちくりんなどではございません。太平洋戦争末期に当地を焼き尽くした空襲に遭った勤労奉仕中の少女の幽霊です。口さがない子供に竹槍少女などと呼ばれている都市伝説の主でございます」

「……! ふざけんのも大概にしろよ、文芸部のちんちくりん」


 逃げられぬと腹をくくったサランの悪ふざけを受け流さず正面から受け取ったフカガワミコトののこめかみに青筋が浮かぶ。本当に怒りが限界に達しつつあるようだ。そこでサランも肩を掴んだ手を振りはらって真向からにらみ合った。


「あーもうじゃあ人を捕まえといてちんちくりん呼ばわりはやめろよなあ! でないとこっちもお前のことを太平洋校の光源氏とかワルキューレハーレムのアルファオスとか恥ずかしい呼び方してやるぞう⁉」

「――っの野郎、言っとくけどなあこっちだって遠慮してちんちくりんって呼んでやってんだぞ? そんなムカつく態度とってるとお前が本当に呼ばれてる方の仇名で呼んでやるからな!」

「ふーん、それで構わないよう。そっちで呼べば?」


 四月からここ数か月、こっそり囁かれているような類の仇名なら大体見当がつく。サランが挑発目的で促すと、フカガワミコトは案の定、虚を突かれたように戸惑う。


「……えっ? 知らねえのかお前、自分がなんて呼ばれてるのか?」

「どうせ文芸部のセックス連呼マシーンとかそんなところだろう? 構わないし、呼べばいいよう、ほら?」


 サランに促されて本当にそう呼ぶような、フカガワミコトはそんな少年ではなかった。本人の素行に問題があるとはいえ、同学年の少女を不名誉なあだ名で呼んでいいものかと逡巡する優しさと良識と礼節をわきまえた少年のようだった。サランに挑発されて、気まずそうに視線を逸らす。


 なんだフカガワミコト、悪いヤツじゃないっぽいな。


 サランは一秒に見たない僅かな瞬間そんな感情にとらわれたが、のんびりとそんな時間に浸っている間は無かった。文芸部員はフカガワハーレムにお触り厳禁。

 油断しているフカガワミコトのTシャツの襟首をつかんで引き寄せると頭を大きく振りかぶって、得意の頭突きを食らわせる。不意打ちをくらったフカガワミコトをアスファルトに沈め、サランはそのまま逃走を計る。

 額は痛む、脳は揺れる。それでもサランは走らねばならぬ。


 レディハンマーヘッドと手を組んでいる文芸部員はフカガワハーレムの観測者。観測者が観測対象に接近すると、繰り広げられるはずのドラマに影響が出てしまう。フカガワハーレムの物語に文芸部の介入という形の演出ヤラセが疑われるような事態は避けねばならぬ。

 キタノカタマコのように学内で地位や役職をもつものとの接触とフカガワミコトとの接触はわけが違うのだ。


「マスター!」

 額を抑えてうずくまるフカガワミコトにノコが駆け寄る。それを捨て置いてサランは民家の屋根の上まで跳躍した。


 逃走中に学習塾の看板を光らせたビルは遠ざかってしまった。あそこまで逃げる間にきっとまた二人に追いつかれる。現に小柄なノコがワンド特有の怪力を発揮して、額を抑えてうずくまるフカガワミコトをおぶい、サランのことを下から睨みつけている。


「お前……! よくもマスターをやったな、ぶんげえぶのちんちくりんめ! そこで首を洗って待ってろ」


 待てといわれて正直に待つバカはいない。サランは振り返りもせず民家の屋根と屋根をぴょんぴょん跳んで距離を稼いでから、路地裏に降り立ち九十九タワーがライトアップされた九十九市中心部へ直結した商店街の方へ向けて駆けてゆく。商店街アーケードの下なら浮遊能力を持つノコの追跡もかわせるだろう。

 シャッターが閉じられ、放置自転車が並び、酔っ払ったサラリーマンやコンビニの前でたむろする金髪茶髪の若者の視線を振り切りながらアーケードを半分ほど駆け抜けてから横に折れ、古いビルとビルの隙間を通り抜ける。


 人通りのなくなったオフィス街に出たサランは、ビルとビルの間に挟まれてなんとかバブルを耐えてきましたという風情を纏わせた見慣れた木造の商店を発見する。こうこうと明るい光をガラス戸から溢れさせたさんお書店は、今日もまた優しく暖かそうだ。

 しかも運のいいことに、店主のサンオミユが閉店のため看板を仕舞おうとしている所だった。


「せ、先輩っ……サンオ先輩っ!」

「あら、鮫島さん? こんばんは。久しぶりねえ、今回は随分遅かったけど――」


 いつもの様ににこやかに微笑んで不肖の後輩を迎えて入れようとしてくれる優しい文芸部OGに、サランは厚かましく甘えることにした。


「お願い、ちょっとうちのこと匿って……!」

「? あらあら大げさねえ……」


 苦笑するミユの後ろにサランは隠れる。梅雨時の鬱陶しい時期だからかロングヘアを編み込んでまとめ、ノースリーブのサマーニットとひざ下丈のシンプルなスカート、その上にエプロンを着用したミユの脇から店の中に滑り込もうとする、が、


「――ちょっと待って、鮫島さん」


 優しいミユはサランの首根っこを掴んで引き留めた。そして有無を言わさずぎりぎりと引き戻すと、一見優しい笑みをその顔に張り付かせたままサランの顔をのぞき込んで尋ねた。


「初めて見るお友達がいるんだけど――誰かしら? 紹介してちょうだい?」

「――」


 ミユが視線で促す先、そこには宙に浮かんだ白銀の髪をもつ少女がいる。憤怒の表情でサランを見下ろしている。背中にフカガワミコトをおぶっているせいで両腕は塞がっているが、両脚は自由だ。サランが見ている間に、その脚が両方とも瞬時にチュイーンと音をたてて高速回転する鋸に変化する。


「みぃつけたぞぉっ……、ぶんげえぶのちんちくりんめぇっ! お前よくもノコのマスターを……っ!」


「──鮫島さん、あの子現在消息不明中のソウ・ツーと特徴が一致してるみたいなんだけど?」

「正解です。なおおぶわれてるのは消息不明になってる深川尊本人です」

「お友達だったの?」

「違いますよう! 文芸部員はフカガワハーレムにお触り厳禁です」


 小声で素早くやりとりをする二人を見て無視されたと判断したノコは、白銀の髪を逆立てて激昂する。


「無視するなあっ! ──そこのお前もぶんげえぶのちんちくりんの仲間なんだな! だったらまとめて成敗してやるう」


 こらまてノコ早まるなってば……! と、呻いていたフカガワミコトが負ぶわれた状態で静止しようとしたが遅かった。目を釣り上げたノコはぶんっと両脚を大きく蹴り上げる。膝から下が外れて回転する鋸となった両脚が二人めがけて飛来する。


 ヒャア! と叫んだサランはとっさに自分の栞でシールドを張ろうとしたが、すぐ様りゅうぐう温泉へ行く前に宿舎のロッカーに置きっ放しにしていたことを思い出した。

 特殊戦闘地域である九十九市はリングの機能が使えない。よってワンドの格納庫である亜空間にアクセスする許可を申請できない。端的に言い換えると九十九市内では格納庫の鍵が開けられない。

 そのため島に出る以前から格納庫から出して携帯する必要があり、そして常に携行せねばならぬという規則もあったのだが、こんな非常事態が起きることなどまあまずないので誰も守っていなかった──。そこがゆるくて地球を守る熱意にかける低レアの低レアたる所以であるのだが、高速で悔やんだところで飛来する鋸を防げないし間に合わない。


 悔やむサランとは反対に、ミユは落ち着いて身につけていたエプロンを引き剥がして宙へ放り投げる。その後すばやく店内へ向けて手を伸ばした。そこから一本の竹ボウキが飛んできてミユの手に収まる。

 滑空する円盤状の鋸の刃が布を巻き込んで路上に落下。一つはそれで容易く封じた後、ミユは竹ボウキの柄を両手で握りしめていた。


 サランの位置からは見えないが、きゅうっと目をすがめたミユが飛来する鋸の軌道を読み、つっかけサンダルを履いた足を踏みしめて上体を素早く捻り大きく竹ボウキをスイングした。

 竹ボウキは迫り来る円盤状の回転鋸を打ち返す。キィン! という快音すら聞こえそうな鋭さで鋸はまっすぐノコの体まで打ち返される。ピッチャー強襲というところか。ノコも目をみひらいて打ち返された自身の体を避ける。


 その流れで、ミユはアスファルト上でエプロンにまかれてくるくると回転しているもう一つの鋸を竹ボウキの柄でぐん、と押さえた。──飛来すると鋸を打ち返したり抑えたり、そんなことをできる竹ボウキが単なる竹ボウキなわけがない。竹ボウキにしか見えないがれっきとしたミユのワンドである。

 そのまま振り向くと、芝居がかった怖い顔を作ってサランの頭をこつんとゲンコツで叩いた。


「――こういうことがあるから休憩中でもワンドは必ず携帯しなくちゃいけないの。わかった、鮫島さん?」

「わかりました、重々反省しました。サンオ少尉殿」

「まったくもう……今日は特別に黙っておいてあげますからね。次から気をつけること!」


 太平洋校専科卒で現在は国連直属、九十九市にてある作戦遂行中のサンオミユは優しいおねえさまの顔でめっ! と、もう一度サランを叱った。その後、店内からぱちぱちと気の抜けた拍手が聞こえる。

 振り向くと初めて見る年上の女が、ゆるく波打ったロングヘアに眠そうな顔でさんお書店のガラス戸の縁にもたれるように立っていた。ほっそりした体にまとうのは、上下ピンクで小花模様がプリントされた甘ったるくずるずるしたデザインのワンピース。少女めいた顔立ちのこの女にはよく似あってはいるが、二千年紀ミレニアムで文化風俗が固定されている九十九市ではおそらくダサいの烙印は避けられないタイプの衣類だった。


「……おお~、ひっさしぶりに見た。ソフト部と野球部泣かせた美柔ミユのバッティング」


 ええと、誰? という表情を浮かべて硬直するサランに構わず、ピンクのメルヘンチックなワンピース姿の女はマイペースに語り掛ける。


「知ってる? コイツ、部費アップのかかった部活対抗球技大会でその時のソフト部と野球部混成チーム相手にサヨナラ3ラン食らわせて号泣させたことあんだよ? 聞いたことある?」

「――いや、初耳です」


 あまりにごく普通に話しかけられたためにサランは普通に返事してしまった為に、誰だあんた? という当たり前の問いを飲み込まざるを得なくなる。とにかくミユの古い知り合い、おそらく学友でなおかつ元文芸部員であることは察する。

 ピンクのメルヘン服の女はこれ以上サランに説明することはなく、竹ボウキ型ワンドでしっかり回転する鋸を抑えているミユへよびかける。


美柔ミユー、遅い。何やってんの?」

小雨コサメ、見たらわかるでしょう? 取り込み中よ」

「うん、それは分かる。見れば。消息不明のはずの深川尊がいる。びびった。生きてたんだ」


 なにも久々に実家に戻った時にこんなことが起きなくたって……と、ぶつぶつと呟きながら、ピンクのメルヘンチックなワンピースを着た女はふわあっと欠伸をした。びびったというわりにびっくりした様子は微塵もない。

 むしろサランの方が吃驚していた。サンオミユと親し気に喋る眠たそうなこの女も、目の前の少年がフカガワミコトだと見抜くくらいであるからワルキューレであるのは間違いないだろう。


 どなたですか? と視線で問うサランにミユは簡潔に応えた。


三尾サンオ小雨コサメ、私の同期で元文芸部員。つまり鮫島さんの先輩ね」

「階級は中尉だけどね。あと同じサンオでも字は違うから、注意な」


 ふわあ、と欠伸をしながらサンオコサメは断った。将校クラスということはそうは見えないが専科卒のワルキューレなのだろう。


「……でさあ、美柔ミユー。こっちも緊急事態なんだけど~」

「晩酌はもうちょっと我慢して」


 甘えてかかる弟妹をいなす姉のような口調でコサメを後回しにしたミユは、宙に浮いたままのノコとその背中のフカガワミコトへ呼びかける。


「あなた達も、とりあえず降りていらっしゃい。ここはちょっと特殊な街なの。人間は空を飛ぶなんてありえないって常識がすみずみまで行き渡っている前世紀の街なのよ? そんなことをしていたら一般の人を驚かせてしまうわ」

「――ふんっ」


 ブーメランのように放物線を描いてもどってきた半円状の鋸を受け止めたノコは不服そうに鼻を鳴らした。鋸は自分の膝に近づけると元通り細く華奢な少女の脚に戻る。ミユの言うことなぞ聞くまいかという風情で唇をとがらせているが、


「ノコ、あの人の言う通りだ。降りた方がいい」


 背中からフカガワミコトに支持されて、思いっきり不服そうな顔ではあったものの、ふわりと地上に降り立った。――正確には片足の膝から下がミユ竹ボウキ型ワンドに抑えられたままなのでバランスがとりづらいためか、本の数センチ地上から浮いていた。その状態でフカガワミコトも地上に降り立つと、ミユを見てぺこんと頭を下げた。その姿にはきれいなお姉さんを前にしたはにかみが透けて見える。

 ミユは竹ボウキを持ち上げてエプロンを取り上げ、もう一つの鋸を自由にした。それはくるくると回りながらノコの膝下にくっつく。

 

 それを見届けてから、ミユはふんわり優しく微笑むのだ。


「初めまして、私はサンオ美柔ミユ、この街では古本屋をやってる御覧の通りワルキューレよ。あなたの先輩になるの、よろしくね」

「――あ、はい、どうもっす。自分は、その、深川尊と申します……」


 あからさまに照れまくりながら、ミユから差し出され手をおそるおそる手を取るフカガワミコト(そのそばでぷうっと頬を膨らませるノコ)。サランはそおっとその場から逃げようとしたが、おねえさま然と優しい微笑みを湛えながらフカガワミコトに向き合っているミユはしっかりサランの首根っこを押さえていた。


「ええ、深川くんね。お噂はかねがね耳にしているわ」

「噂……そうだ、その噂っすけど!」


 肝心なことを思い出した風で、フカガワミコトは目をきっと吊り上げてサランを睨む。ミユに首根っこを押さえられていては観念するしかないサランはぶーっと頬を膨らませた。


「てめこの文芸部、何が面白くて俺らのことをイジリやがんだお前らは⁉」

「――イジってるのはレディーハンマーヘッドだよう、うちらはそれを載っけてるだけだよう」

「うーるーせーえーなっ、屁理屈こねんじゃねえ! ったく人のプライバシー侵害で荒稼ぎしやがる奴らの癖になーにが全人類に奉仕するワルキューレだ、ゲスいにもほどがあるぞお前ら!」

「そっちこそうるせえな! そうやって愛と娯楽に飢えていく戦地の兵隊さんに愉快なゴシップとラブコメをお届けする形でご奉仕してんだろうがよう!」

「……うっわなんだお前、どういう理屈だよ? どうやって生きてりゃそこまで他人のプライバシー侵害してそこまで居直れんだよ? 人間性腐りすぎててマジで引くぞ?」

「勝手に引いてろ、こっちは毎回毎回どうやったら女子ばっかいる更衣室だの大浴場だのに迷い込めるんだってことの方に引いてんだからな!」


 あ、あれはだなあ……! と、顔を真っ赤にして前のめりになるフカガワミコトを「はいはいはいはーい!」と大きな声を出したミユが治める。


「ふたりともケンカはお終い! もう遅いのよ? ご近所迷惑になっちゃう」

 

 近所迷惑もこのあたりはオフィスビルが殆どで、今でも灯りがついているのは遠くのコンビニの灯りや自動販売機に街灯くらいなものだ。それと、駅前広場の九十九タワーのライトアップ。人気は少なく静かではある。それでもやはり屋根の上をぴょんぴょん跳躍して移動したり、宙にぷかぷか浮かんだり、まして自分の体を鋸に変化させて投擲していいものではない。

 敵対する不良チームのようににらみ合うサランとフカガワミコトであるが、おねえさまのようなミユにたしなめられてとりあえずお互い視線をそらしてだまりあった。

 そのタイミングを見計らって、ピンクのメルヘン服を着たサンオコサメが眠たげな声で言う。


「――でさあ、美柔。こっちも緊急事態なんだけどいいかなあ?」

「だから待ってって言ってるでしょ、小雨ったら。――とにかく深川くんを保護したからには学園に連絡を入れないと――」

「いやだから、それ必要なくなったって」


 無言でにらみ合うサランとフカガワミコト、フカガワミコトにべったりくっついて加勢するノコ、竹ボウキ型ワンド片手に夕飯の献立を考えるような表情で今後の方針を検討しているらしいミユ。四人の視線がコサメに集中する。


「ん」


 眠たげなコサメが親指で店内を指す。そのあたりだけ、青白い輝きにぼんやりと照らされていた。

 人ひとり通るのがやっとな幅だけを通路として確保し、出来る限りの本棚を並べたさんお書店の中は狭い。しかしその物理空間を無視して、青白く発光した少女が宙に浮かんでいたのだった。おまけにどこからか、笙を吹き鐘を鳴らし奏でる厳かな楽の音まで聞こえてくる。


 巫女装束に神楽鈴を持った少女だ。その体から本棚が透けて見えることから精神体のような存在であることは分かる。

 装束に似合った神秘的かつ不可思議な現象を引き起こしている少女は、非常に整った容貌を怒りによって大きくゆがめながら、一点を睨んでいた。

 その視線のさきにあるのは、ゲッ、と呻いたフカガワミコトである。


『ふーかーがーわ~っ!』


 巫女装束の少女――豊玉トヨタマ龍巳タツミ――は、手にした神楽鈴を少年につきつける。鈴が涼し気にシャンと音をたてるが背後に流れる楽の音ごとそれを打ち消して少女は怒声を浴びせかける。


『何日も何日も連絡もよこさず行方不明になってたと思ったら、妙な結界の中で見たことない女の人たちとコソコソと……っ⁉ 何やってんのよ、あんた! 最低っ、最悪っ、斬り捨ててやるっ』

「お……お前こそ何やってんだよ⁉ っていうかなんでいっつも誤解を招くような言い方するんだよっ⁉」

『ごまかすな! ――任務中に姿をくらましてどこへ行ったかと思ったらよりにもよってこんな所で知らない女の人たちと密会中だったってわけ⁉ あたしってばそんな最低野郎のために全身全霊ふりしぼってあらゆる世界をくまなく探し回っていたってわけ⁉ あーもうお笑いねっ! あんたなんかのために三日三晩完徹で舞いまくったあたしってばとんだバカだわ! バカの生きた標本だわ!』


 精神体のトヨタマタツミが喚き散らす内容は、見るからに神聖な巫女装束が泣きそうなほど俗まみれだった。それゆえ限界はサランにも見て取れた。トヨタマタツミの両目は見開かれてそこからダラダラと涙が流れる。自己申告の通り三日三晩も眠らず舞い続けていたというならああもなろう。

 明らかに精神状態が限界に達しているトヨタマタツミを前に、フカガワミコトは怯んでいる。


「だ、誰と誰が密会中だっ⁉ ……つうかなんでお前はいっつも人の話を聞かねえんだよっ?」

『問答無用! 帰ったら今度こそただで済まさないんだから……ッ! あたしの心配と睡眠時間を奪った埋め合わせは必ずさせてやるんだから覚悟しときなさい……ッ!』


 ぐるん、と精神体のトヨタマタツミの目が裏返り、糸が切れたようにそのまま仰向けに倒れる。


「豊玉!」


 フカガワミコトがその様子を見て腕を伸ばしたが、青白く発光する巫女装束の少女はふっと掻き消えるようにして消えた。それと同時に楽の音も消える。


 そこにあるのはいつものさんお書店店内だ。

 専科卒、そしてプロワルキューレとしての活動歴がものをいうのか、いち早く不可思議な現象を前にしてもいち早く我に返ったミユが腕を伸ばしたまま硬直しているフカガワミコトへ尋ねた。


「……今のが、初等部特級の豊玉さん? 『ハーレムリポート』によく出てくる?」

「ええ、まあ……あ、でもアレっすから! あのハーレムなんとかで書かれてるような関係じゃないっすから……! あんな暴力女なんとも思ってませんから……っ!」 


 フカガワミコトは顔を真っ赤にして手をぶんぶん振るが、ミユは「ありがとう、深川くん」と軽く流してコサメと向き合っている。


「お客様がお見えならそう言ってくれればいいのに、小雨ったら」

「言ってたじゃん、緊急事態だって言ってたじゃん! なのに美柔が無視したんでしょうに。……ま、ともかく、ああやって豊玉家のお姫様じきじきに深川尊を見つけてくださったんだから楽でいいじゃん。連絡も豊玉本家から島に直に届くでしょ? 丸投げしちゃえー」

「何言ってるのよ。こんな時間よ? 中学生相当の子たちを外に放り出すわけにはいかないじゃない。私たちが保護しないと……」

「ええ~っ、半年に一度の休暇をガキの世話で潰せって言うの~? いーじゃん、終わらない日常に飽き飽きしてる中坊ってことにしてカラオケ屋でオールでもさせときゃあさ〜……」

「こら! なんてこというの小雨ったら! めっ!」

 

 れっきとした専科卒プロワルキューレの二人は世間話と同じテンションで言葉を交わす。階級はコサメの方が上になるのに、二人の間の決定権はミユが掌握しているらしい。小雨の露骨に面倒そうな顔を無視して、ミユは「お入りなさい」とばかりにサランとフカガワミコトとノコを店の中へ手招きする。


「三人とも食事は? おなか減ってない?」

「食べ物があるのか! ……すごくいい匂いがするぞ! カレーだな!」

「そうよ~。小雨が食べたいって言うからはりきって作りすぎちゃったの。この時期傷みやすいからたくさん食べてくれると助かるわ」


 食べ物に関する興奮と執着を全く隠さないノコが、店内の奥から漂うカレーの匂いに強く反応する。さっきまで自分の体で容赦なく切り刻もうとしていミユにすっかりなついて、店の中から居住スペースにいち早く上がり込む。

 

 サランとフカガワミコトだけ、さんお書店のガラス戸の前で取り残された。

 

 サランがじっと見ているとフカガワミコトは咳払いをした。あんな暴力女なんとも思ってはいないという発言をミユにさらっとスルーされた所を目撃されたのが非常に決まり悪かったらしい。


「……なんだよ文芸部っ」

「いや別に。――豊玉さんは『ハーレムリポート』で書かれてるのとキャラがブレてないんだなと思っただけだよう。本当に人の話を聞かない人なんだな、あの人」

「……だろう? 本っ当ーに聞きゃしねえんだよ、豊玉のヤツ……。その癖短気だし手ぇ早いし、最悪だ。あれで本当にお姫様なのか?」


 口ではそう言うが、トヨタマタツミが消える寸前にフカガワミコトが手を伸ばした瞬間も見ている。そんな瞬間も見られたが故の憎まれ口かと判断したが、それ以上の追求はしない。文芸部員はフカガワハーレムにお触り厳禁だし、フカガワミコトの本命がだれなのかどうかそもそも興味が湧かない。

 

 そんなことよりもサランの関心事は、自分はもう帰っていい筈だのではないかという一点につきた。

 任務中に消息を絶っていたフカガワミコトとたまたま遭遇した、そして九十九市に常駐している専科卒ワルキューレの二人にその身柄は託された。単なる低レアのサランはここでお役御免だ。もう戻っていいはずだ。


「ねー、先輩~。うちはもう宿舎に帰っていいんじゃないの~?」

「はあああっ⁉ 何言ってんだよ文芸部! こっちはお前らに言いたいことと訊きたいことが山ほどあるんだ、逃がすかよっ」

「知らねえしっ、うち出撃任務中だし! 早く帰らないと門限破った罰食らっちまうし!」


 ミユが答えるより先に血相をかえたフカガワミコトが食いつきサランに向けてギリギリねめつけてくる。それにサランも迎え撃つ。不良漫画の登場人物のように睨みあう二人だが、天はフカガワミコトに味方した。

 店の奥から住居部分に上がったミユが、しっかりもののおねえさまの声でサランを制するのだ。


「ダメよ。鮫島さんも今日はうちで泊まりなさい。宿舎の方には私が連絡しておくわ」

「ええ~っ」

 

 サランの不満の声が二重唱になる。被せてきたのはピンク色のメルヘン服を着たサンオコサメだ。露骨に嫌そうな顔で、サランとフカガワミコトの二人を見比べた結果、はあ~っとやるせないため息をつくなり恨みがましい目を向ける。


「……さっきも言ったけどさあ……半年に一回の休暇で、実家に戻って美柔といっしょにうだうだ安酒でも飲もうかっていう、そういうささやかな楽しみがお前らふたりのせいでパアになった……」


 年上の女性、しかもサランにとっては直接の先輩にあたる人物にねちねちと嫌味を吐かれては謝るしかない。わざとではないし不満が無いわけでは無いが、半年に一回の休暇を不意にした、それは確かに大罪である。

 おとなしく、すみません、と唱和する二人をコサメは再度睨んだ後にぶつぶつ付け足す。


「……まあしかし潜伏先にこの九十九市を選んだ目の付け所だけは褒めてやるわ、深川。ここはあの豊玉家の姫の霊力をもってしても探知できない最強の傘の下だ。今は二十世紀末だと住民に錯覚させる強力な結界の中だからな」


 九十九市近辺には十数年前に開いたきり、未だ塞げない次元の裂け目がある。

 外世界に通じた次元の穴や裂け目事態はこのご時世なんら珍しくないが、問題は九十九市の近くにあるこの裂け目から出現する侵略者は生身のまま電脳世界へ入り込める性質を有する確率が極めて高いことだった。

 今や地球全世界にかぶさるように発展した拡張現実上に一度でもその種の侵略者の侵入を許せば人類の弱体化と文明の崩壊は免れない。それを避けるために、防御壁としての機能を課せられた九十九市は骨董品のような旧型の電子機器以外は作動できない措置がとられている。


 今、世界はこのように危機に瀕している。そして自分たちの街に住む者だけが人類の平和と発展のために不自由な暮らしを強いられている。

 九十九市住人の間に生じるであろう不満やストレスを軽減するために、世界を護る立場のもの達が講じた策が以下のものになる。

 

 九十九市の文明レベルを前世紀末に固定する。そして住民たち全員に自分たちは永遠の二千年紀ミレニアムを生きていると錯覚させるのだ――。


 この案が出た時はもちろん「住民一斉退去させりゃいいじゃないかアホか」という批判も当然出たのだが、たかだか地方都市とはいえ住民をまるごと抱えきれる体力のある自治体はこのご時世どこにもなく、それならこのバカバカしい作戦を決行した方が安上がりだし住民も幸せでいいじゃないかという意見がいつしか多数派となり、その結果この九十九市は前世紀末の終わらない日常を繰り返す街となったのだった。

 

 とはいえ、永遠の二千年紀ミレニアムを生きていると九十九市に住む人々全員が錯覚する、そんな途方も無い状況を受け入れるには徹底した情報統制だけで対応できるわけがない。まちがいなくワルキューレがその作戦に噛んでいる。SSRでは済まないような高レアリティのワルキューレが――。


 この辺はサランたち低レアワルキューレたちも九十九市を訪れる度に、退屈を紛らわせる噂としてよくささやきあっていたものだ。

 ただ、目の前にいるピンク色のメルヘン服を着た少女らしいというより単に子供っぽい女が、よもやまさかその高レアワルキューレだったりするのだろうか……?

 サランの疑念が正解だというように、コサメは腕を組んでぶつくさ呟く。


「しっかしまあ、あたしが休暇になったとたんお前のことを探し当てるとは。腐っても首席ワルキューレで豊玉家のお姫様って所か。――愛されてるな、深川」

「は、はあああっ? 何言ってんすか、そんなわけ――っ」

「そういうツンデレ仕草は今いらないんだよ、深川尊。ったく、こういう特殊戦闘地域はほかにもあるのによりにもよってこの九十九市に、しかもあたしの休暇の日に逃げてきやがって――。誰の入れ知恵だ?」

「――」

「だんまりか。……ま、いいわ」


 三人とも~早く中に入りなさ~い、と店の奥からのどかなミユの声がする。

 それに「は~い」と眠たげな声で返事したコサメは、さっき見せた眼光と声の鋭さを途端に鈍らせて、まだガラス戸の前に立つ二人を招き入れる。

 

「ほら、美柔が呼んでるから早く入りな後輩ども。そこに突っ立ってると蚊が入るし。――上官命令無視か~? 半年に一度っきゃないあたしのプライベート邪魔しくさった上にいい根性だな」


 愛らしい服に似合った絵本の中の少女のような外見に反し、コサメは腕を組んでサランとフカガワミコトを睨んだ。その夢みる少女めいた目元から放たれる眼力には、専科卒のプロワルキューレ相応の圧がある。


 二人は大人しく従った。


 店の奥からはカレーの匂いが漂い、ノコが無邪気にあげる歓声が聞こえる。

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