絶命絶命のピンチ

「お、お前本当にネイピアなノラ?」


「……」


しかし、

アイピスの問いかけにたいして返事は無かった。


フンッ


「シッ、シッ、こっちみんな」

(このままだとオイラ絶対こいつにられるノラ)


ブンッ!


「ひゃ、ひゃあー!」


「な、なんだ、剣で素振りをしただけノラね。

予め話しとくけど、オイラはゾンビになったあんたが食べても美味しく無いノラよ」


ドクン、ドクン、ドクン、ドクン

(しかし、何なノラ、こいつのこの凄まじい威圧感……。

山深い山道を一人で歩いていたらたまたま熊に遭遇でくわしたなんていうレベルじゃ無いノラ。

見た者全てを石にする伝説上の怪物メデューサに睨まれているみたいノラ。


ビュュュュュュー!!


「な?

これはどういうことノラ?」


突然、アイピスの背後からネイピアが立っている方向へと突風が襲いかかってきた。


「オイラの体がー!

無理矢理あいつの方向に引きづられるノラー!」


「あー!」

(やっと解ったノラ。

あの時の素振りは突風を発生させる為だったノラね。

オイラを自分の方に引き寄せる為に……)


アイピスはそんな闇落ちゾンビ化したネイピアの神がかった芸当に圧倒され、

身動きが出来ないでいた。


そして次の瞬間にはネイピアの刀先がアイピスの喉を一突きできる至近距離にまで迫っていた。


シュ、シュュュ


ストレンジ物質で出来た刀から人工大気に反応して発せられる水蒸気はアイピスの視界のほとんどを奪ってしまっていた。


ピシッ


「え、何の音なノラ?」

一瞬、アイピスの耳元のすぐ近くで何かが砕けるような小さな音が聞こえた。


フンッ


そして更に次の瞬間、アイピスにとって予想外なことが起こった。

ネイピアが突然、腰を抜かし身動きさえできないでいるアイピスを解放したのだ。

そして何を思ったか、アイピスとは反対方向に向けて走り去っていった。


「ど、どういうことなノラ?」


アイピスはなぜ突然解放されたのか、

その理由にも興味はあった。

しかし……。


「安心したら、なんだかオイラ眠くなってきたノラ」

なにはともあれ自身が今絶対絶命のピンチから脱することが出来たことで緊張が解けたためか、

強烈な睡魔が襲ってきた。



「ねえ、追わなくていいの〜?」


「誰ノラ!?」

アイピスの睡魔は大いに聞き覚えのあるその一声で一瞬にして吹き飛んだ。


そう、ネイピアが命を落とすことになる直接的な原因を作った張本人……。

「ナルータ、お前いつ意識を取り戻していたノラか」


「い、痛たたぁ……」


「ラジアナも」


「あれ、ネイピアは?」


「二人とももう大丈夫なノラね」


「ねえ、二人ともボサっとしてないで早くネイピアちゃんを追いかけたほうがいいんじゃないの?」

ナルータはアイピスとラジアナ二人に向かってそう忠告する。


「え、ちょっと。

あたし今の状況が全然わからないんだけど、

どういうことなの?」


「闇落ちしてゾンビになったネイピアちゃん……」


「ゾンビがネイピアになって闇落ち?」


「まあ、解釈はあなたのご自由に。

そして、そんなネイピアちゃんが今向かう場所、

私には想像がつくわ。

例えば、ネイピアちゃん自身がストレンジ物質の拡散を防ぐためにブラックホール生成の時限式デバイスを打ち込んだ場所とかね」

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