予想外の結末

急いで戻ってきてラジアナを庇おうと止めに入ったネイピアだったが……。


ビリビリ


バチン!!


「え?

どういうこと?」


ネイピアはラジアナのところに飛び込む直前に、

火薬とは別に必要な化学燃料が切れかれた重力発生ライフルをスイッチを付けたまま遠くへと放り投げた。


スポット的な重力でストレンジ物質の対流を一時的に逸らすだけでたいした時間稼ぎしかならないとしても。



ラジアナを庇う為、間に入ったネイピアは、

ラジアナの膝にスタンガンを当て気絶させると、

直前に背後から回り込んできたナルータの頬を激しく叩いたのだ。


バサッ


「ナルータも気絶したナリよ」


「アイピス、お願いがあるんだけど」


「な、何ナリか?」


「気絶したラジアナとナルータを安全な距離まで移動させてもらってもいいかしら?」


「わかったノラ。

でも、その場所は危険ノラ。

早くネイピアも早く安全な場所に離れるノラ!」


「ごめん、アイピス。

残念だけど私にはもうこの場から一歩も動く力は残ってないみたい」


「どういうことノラか?」


「ゲホッ、ゲホ、ゲホ」


「ネイピアどうしたノラか!?

口からたくさん血が吹き出してるノラよ!」


「本当に馬鹿ねえ、アイピスは、ぐはっ!」


「本当に大丈夫ノラか!?」


「ナルータの右手に持っているもの、

ハァハァ、わかるでしょ?」


「拳銃!?

ネイピア、心臓撃たれた……ノラか?」


「そうね。

それも、私の微分方程式無効化を一時的に無効化する銃でね、ゴホッゴホッ!」


「それ以上喋るんじゃないノラ。

ラジアナを運び終わったら次はネイピアもオイラが安全な距離まで運ぶから、

もうちょっとだけ待つノラ」


「私はいいわ。

どっちにしても助からないから」


「だめノラ。

そんな弱気な事を言うネイピア、

オイラ大嫌いなノラ!!!」


「アイピス……。

わかったわ。

だけど、私よりも先にナルータを運んであげて」


「だってこいつはネイピアやラジアナの命を奪おうとした張本人ノラよ!?」


「お願いよ、アイピス」


「……わかったノラ」


「後は、頼んだわよ、アイピス。

それに、みんな……」



「何、柄でも無いこと言うノラか!」


「…………」


「ちょっと、ネイピアなんとか言うノラよ!」


「…………」


「ちょっと、ネイピア冗談きついノラよ」


気絶したナルータを肩車して移動させていたアイピスは、

ネイピアの異変に気がつくと、

ナルータの腕を払い地面に寝かせ、

そしてネイピアのところに慌ててかけよった。


「い、息、してないノラ……」


細胞を操る生命科学に特化した5次元少女アイピスの診断には、皮肉にも勘違いという可能性は見当たらない。


ラジアナもナルータも気絶していて、

アイピスの他には誰もこのネイピアの状況をまだ知らない。


「わ、わ、わわ……」


一人だけ状況を知るアイピスは、

今はまだ悲しみよりも、ただただ目の前の恐怖として、どこまでも不条理な現実を痛感していた。




ネイピアの完全な心肺停止と脳死が

このとき確定した。


つづく

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