裏切り

ビリッ


「なあ、ラジアナ。

さっき何か変な音しなかったノラか?」


「ん? そうかな」


ビリビリ


「本当だ、確かに今小さくビリビリって……」


ビリビリ、ビリビリビリビリビリ


「何だ、何だ!?」


「ラジアナちゃん、その場を急いで離れて、

こっちに全力で走って!!」


「え、ああ」


「早く、早くしてー、死んじゃうよ!!」

「わかったー!」

ビリビリ、

ババババババババババババババババババババババ

バババババババババババババババババババババババーン!!


「眩しいノラー!」


「耳が、耳痛えー!

頭が割れるー!」




3人の三半規管がある程度落ち着いたのは、

数分経ってからだった。



「か、か、間一髪だった……」



「さっきの物凄い光と爆音、

いったい何だったノラか?」


「あれが、ガンマ線嵐よ」


「なんで今あんなものが……」


「宇宙から降り注いだ鉄がこの中性子星最深部のコアまで落ちてぶつかると、今のようなガンマ線の衝撃波が発生するのよ。

衝撃波は外側へ向かいながらエネルギーを奪われるから星の爆発までは至らないんだけどね」


「そっか。

それにしても、ナルータ。

あんた、そんなに理系の知識詳しかったっけ?」


「ねえ、ラジアナ?

今あなたの喉と背中に突きつけてるこれ、何かわかるかしら」


「何だよ、急に」


「いいから答えなさい」


「ナイフ、ちょっとナルータ、

冗談だよね……」


「そうね。

でもね、ワタシもばかじゃないから、

人間がナイフで一度突かれたくらいで簡単に死なないのは当然知っているわ」


「じゃあ、どうして?」


「だって、こうやってあなたを人質にとることで

アイピスちゃんもワタシに手出しできないじゃない。

2体1じゃこうでもしなくちゃ分が悪いでしょ」


「ラジアナ、防御技でナルータを弾くノラ!」


「あ、そうか!」

「無駄よ」


「え?」

「どうしてなノラ?」


「このナイフ、普通のナイフの訳ないでしょ。

このナイフの役目はね、剣先があなたの身体に触れた瞬間に既に半分は達成してるのよ。

異能の一時無効化。

少なく見積もっても半日は効果があるわ」


「あたしはどうなってもいい。

だから、アイピスは逃してくれ……」


「ちょっとラジアナ、

馬鹿なこと言うんじゃ無いノラ!」


「ワタシが今回アイラ様に与えられた役割は

ラジアナを消すことだけ。

だから、アイピスの命などはじめから興味は無い」


「なら良かった」


「全然良くないノラ〜!」


「アイピス?

短い間だったけど今までサンキューな」


「認めないノラ!!

そうノラ。

オイラ急いでネイピアを呼んで来るノラ!」


「無駄だって言ってるでしょ!

今更あんたがネイピアを迎えにいったところでもう手遅れなのよ」


「……」


「ねえ、ラジアナ?

ワタシがあなたの全身を縄で縛って

動けないようにしている理由わかるかしら?」


「ど、どうしてだ……?」


「オツムの足りない貴方にはまだ理解できないようね。

結局、あなた自身がどんなに頑張っても無駄。

所詮ネイピアにとっては貴方の防御能力だけが必要で、それ以外は足を引っ張る足手まとい程度でしか無いんたから」


「そんなことないノラ!!」


「しっ!余計なこと言わなくていいから

逃げとけってアイピス」


「余計なことじゃ無いノラ!!」


「あら、意外だわ。

アイピス、あなたこの状況でもワタシにたてつくのね」


「ラジアナはラジアナなりに一生懸命頑張ってるノラ!

みんなの頭の回転にくらべたら、

まだ全然かもしれないけど、

みんなが見てない目立たないところで、

こいつなりに努力しているノラ!」


「アイピス、お前……」


「は〜い。

仲間同士のお別れの挨拶はそれくらいにしてもらっていいかしら」


「ちょっと、ナルータオイラを羽交い締めにして何をする気ノラ?」


「あなたはワタシと少し離れた安全な場所から見物しましょう。

そろそろよ。地面から上がってくるのは。

これから宇宙の神秘的な力が創る最高のアートショーの始まりだわ」


「ショー? それに地面から?

どういうこと……」


グラグラグラグラ


「揺れ?」


グラグラ、グラグラ、グラグラ

「地震ノラか?」


グラグラグラグラグラグラ、グラグラグラグラグラグラ


「この地震、激しいノラ。

それに、地面から何か迫ってくる感じがして、

物凄く嫌な予感がするノラ」


ゴゴゴ……


「いいわ、教えてあげるわ。

地下から吹き上がってくるもの。

それは小石ほどのストレンジ物質の塊でできた噴水よ。

ラジアナの周りの地表が程よく割れてきたことだし、きっとこのまま上手くいくわ」


「ラジアナが〜、ラジアナが〜!

うわぁ〜ん!」


「アイピス、泣くなよ。

あたしの最期くらい、笑って見届けてくれよ、な?」


ラジアナは遂に自分への運命を受け入れ覚悟を決めたのか、

まるで深く眠るかのように、その瞳を静かに閉じた。


「ありがとう、パパ。ママ。

それに、チルダやアーレス。

ネイピアにアイピス。

それに、結果最期裏切られちゃったけど

ナルータも。

みんな……。

あたし、みんなと出会えて本当に楽しかったよ。

今まであたしのことを大切にしてくれてありがとうね。

それじゃあね、バイバイ」






「ラジアナ〜!!!!!」




「え、この声、間違えるはず無いノラ!?」


「え、ちょっとこれどういうこと?」


「ラジアナ、目を覚ますノラ!!」



「ん、んん……」




「ラジアナ、逃げてー!!!!」


「へ?」



「クソっ、邪魔がハイったか」


「ね、ネイピアなノラ!

間に合ったノラー!」




「ネイピア、こっち来んじゃねぇー!!!!」



「は、ここにきて仲間内で喧嘩とか、

あなた達本当に最期まで笑わてくれるわね?」


「違う!!

オイラは、それでもラジアナとネイピアを

信じるノラー!!」



最後の力を振り絞り、

手足の自由を奪われたラジアナのところへと

全力で駆け寄るネイピア。


そして、

大切なネイピアを危険に巻き込まない為に、

敢えて距離をとろうとするラジアナ。


いったい、どうなる!?

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