具体的な作戦

「オイラにお願いっていうのは何なのら?」


「あなたには私達のDNAを強力な灼熱のガンマ線から護って欲しいの?」


「ガンマ線?

どういうことナノら?」


「奴を倒す為にはどのような手段をとったとしても体に有害なガンマ線が発生するからよ」


「ガンマ線から護ってって言われても、

オイラには漠然とし過ぎてわからないノラ。

それってどれくらいの耐性が必要なノラ?」


「作戦として具体的にどのくらいの対策が必要かをあなた達三人にイメージしてもらうには、

今私達が置かれた状況を省略せずに説明しないとだめそうね。

わかったわ。少しばかり回りくどくなるのだけれど、順を追って説明するわ。


私達は今、超越因子自身が生み出した特殊な閉鎖空間の中に閉じ込められて闘っているの。

そして、その特殊な空間というのはおそらくナルータと同じ中性子星。

ただ、ナルータが中性子星の外側なのに対してこの超越因子はおそらく中性子の内部。

それと、もう一つ。

ストレンジ物質に耐性のある抗ストレンジ物質っていうのはどうやら存在しないわ。

私達はあたかもウイルスの感染のようにみせかけられていただけ。

いいえ、そもそも蓋を開けてみれば、

ウイルスに見立てられているのはあくまで超越因子にとって都合の悪い真相から私達の注意をそらす為のブラフであって、抗体なんて存在する必要も無かったのだけれど」


「ちょっと待ってよネイピア!?」


「どうしたの、ラジアナ?」


「ここが中性子星の内部っていうのはおかしくない?

だって、中性子星ってナルータと戦ったときみたくブラックホールの次にっていうくらい物凄い重力じゃん?

アタシたちはとっくに豆粒みたいに押しつぶされてるハズなんじゃないの?」


「確かに普通はそうなるわ。

まあ、ナルータが私達と戦うときにとっていた中性子星の形態は、

中性子星の性質をスケールを落として模しただけのなんちゃって中性子星だったのだけれど。


 だけど、今私達がいるこの環境を解析してみた限りではナルータのときと比べても明らかに時間の進み方が引き伸ばされ遅くなっているの。

超重力の影響があることは間違い無いわ」


「いったいどういうこと?」


「さっきも言ったけど、まだはっきりとした確証は無いわ。

だけど、私達は例外的に重力の影響で潰れないようにさているみたいね。

 それに、例外的というのは何も重力に対してだけでは無いわ。

一番少なく見積もっても100万テスラという強大な磁力や熱線なんかの電磁的作用の影響からも守られているわけなのだから。

本来であれば電子機器や貴金属の破裂や融解なんて当たり前。

人体で言うと先ずは失明や心肺停止。

他には、体中の水分子が激しく揺さぶられることでぐつぐつ沸騰しながらスライムみたいに溶けるでしょうね。

そして、最終的には原子レベルでバラバラになって消えてしまうはずだわ。

なのだけど……、不思議なことに私達は謎の力によってこれらたくさんの脅威から守られているのよ」


「護られてる?それって何で?

私達に有利にしたところで、

超越因子にメリットはなにも無いじゃん」


「これは確かな確証は無く、あくまで私の仮説なのだけど。

ストレンジ物質の存在や維持には、

超高密度環境や表面張力などいくつもの特殊な条件が必要なの。

それらの弱点を私達に隠すためかもしれないわ。

まるで小さな昆虫を捕獲する食虫植物の様に。

実際にはストレンジ物質に変化するより内側の領域とその変化の及ばない外側の領域とで目には見えないけれど明確な境界線があるのかもしれないわね。

ここが中性子星の内部だということ。

そして、ストレンジ物質の変化の及ばない方向を私達獲物に気付かれ安全な外側に逃げ出されないために超越因子自体も必死なわけね」


「食虫植物、なるほどね!」


「オイ!

でもさ、だったらどうしてオイラがわざわざガンマ線からオマえらを守らないといけないノラ?」


「みんなで危険が及ばない範囲まで脱出するだけだったらアイピス、

確かにあなたの力はいらないわ。

だけれど、それだと何の解決にもならないわ。

私は解決をしたいの。

宇宙空間でこの不自然で異常な程物質として安定した状態を維持しておくのは危険だから。

だからストレンジ物質を1か所に集めてブラックホールに飲み込ませるわ」


「ネイピア、オマえらしいな」


「あら、ありがとう。

そこで問題なのが、ストレンジ物質を1か所に集める時に核反応が起こって強烈なガンマ線が放出されるということ」


「ちょっと待ってネイピア!

アタシ達は中性子星の超重力や強大な磁力の影響とかからは免除されているんだよね?

だったらストレンジ物質から出てくるっていうガンマ線に対しても平気なんじゃないの?」


「それはもちろん考えられるわ。

だけれど、アイピスの切り離された手がストレンジ物質に変わったとき、

ほんの微量だけどガンマ線が発生していことがあの時点で分析してわかっていたの。

つまり、超越因子側から予め予測できる影響に対しては守られるけれど、それは完全では無い。

だから、私達がストレンジ物質を1か所に集めブラックホールに流し込むという不測の事態イレギュラーに対しては、守られない可能性もあるわけよ」


「じゃあ、アタシは何をしたらいい?」


「ステラシアンちゃんを連れてきて神ウニ全体化でみんなを守って貰えるかしら?」


「なるほど、わかった!」


「ところでラジアナ?

貴方の神技には熱耐性はあるのかしら?」


「あるよ。

炎攻撃とか防げなかったら絶対防御じゃ無いじゃん」


「あら、たまには役に立つこともあるじゃない。

発動中は何も出来ずただじっとしていることしか出来ないから使えないってスネてたみたいだけどね」


「やかましい!」


「ラジアナの技の熱耐性があるなら

オイラの能力は使わなくてよよく無いノラか?」


「それなんだけど、ラジアナの能力が仮に熱源を防げても、DNAを傷つける放射線因子を全て透過せず防げるという確証は無いから。

あなたの能力によるクマムシの放射線耐性をラジアナの神ウニに付与してDNAを保護するという二重の防御で保険をかけておきたいのよ」







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