客観的追憶
『ミャア、ミャア!!』
「あなた?
この
やっぱりやめない?」
「同情するのか?
こいつは俺達の娘じゃない!
お前もしっかり現実をみるんだ!
こいつは化け猫だ!」
「この
確かに私達はこの
騙されてきたのかもしれない。
でもね……、
子供が出来なくてもいいって言ってくれた
あなたと私の間に現れて、
私のお腹に宿り、希望をくれたじゃない?」
「もとはと言えばだな、
お前がこいつに会いに
ちょくちょくここに来ているところを
今の旦那に知られたときに、
こいつが人間ではなく猫だってことを
今の旦那にちゃんと話さないまま喧嘩して出てきたから
俺が悪者扱いされて迷惑しているんだぞ!」
「ごめんなさい……。
私はたとえこの娘が猫だって主人に理解して貰えたとしても、
それでも主人には心配をかけたく無かったの」
(ここは一体……、どこナリか?)
救命隊員
「大丈夫ですか~?」
「あ、あの……」
◇墜落現場付近から大人の男女確認!
男性は死亡!
女性は生存を確認しました!
女性も頭部の損傷が酷く、
一刻も早い手当てが必要と思われます!◇
無線からの声
◇了解!
速やかに女性を担ぎ中継のテントまで急いでくれ!◇
◇了解しました!◇
「私がテントまで担ぎますので、
本の少しだけ我慢してくださいね」
「ま、まだ……!」
「喋らないでください!
お話はテントまで戻ってから……」
「アイラ! アイラ!!」
◇おい!今しきりに誰かを呼ぶ声が聞こえるが、
まだみつかっていない乗客がいるのか?◇
「誰か~!!」
「あちらにも、瓦礫に体を挟まれた乗客を発見しました!」
◇了解!
今の女性には別の隊員の応援を呼び
お前は瓦礫からの救出に向かえ!◇
◇了解しました!◇
「すぐ、別の隊員を呼びますので、
しばらくそこにいて下さい」
救命隊員は負傷した女性にそう言い残すと
瓦礫の方へと去って行く。
『ミャア~!ミャア~!
ペロペロ』
「キャ!私の負傷した足を舐めないで。
くすぐったいわ」
『ミャア~!』
「も~!こらっ~w
あら? あなた凄く体が大きいけれど……
可愛らしい白猫ちゃんね!
だけどあなたかなり体がやつれてるじゃない!
最近何も食べてないんじゃないの?
『ミャア!
ペロペロ』
「そうやって舐めて私を慰めてくれるのね。
旦那が飛行機の中で食べ掛けていたおつまみのスルメ!
こんなものしかあげられないけど、
これお礼よ!
気にいってもらえるかしら?」
『ニャア~♪
クチャクチャ』
「美味しそうに食べるわね。
あ!そうだ!
あなたに一つお願いしてもいいかしら?」
『ニャア!?』
「私の娘アイラって言うんだけど、
あなたがこの炎と煙の中でアイラをみつけたら、安全な場所まで案内してあげて!
そしてこれは私の親戚の叔父様に宛てた手紙よ。
あなたが関わった人に気付いて読んで貰えるよう
風呂敷に入れて背中にくくりつけておくわね?
それと、これはアイラが今日使っていたハンカチ。
あなた鼻は効く?」
『クンクン!
『ミャア~!!』
「大丈夫そうね?
じゃあ、娘アイラのことお願いね」
『…………?
ミャア、ミャア!!』
「どうしたの? 早く行きなさい!」
『ミャア……』
「あなたもしかして……、
私も一緒に連れだそうとしてくれているの?」
『ミャア~♪』
「ごめんね。
私は行けない。
頭に酷くケガしちゃって体自由に動かせないの。
それに、もう何時間ももたないことも自分でもわかってるから。
私今まで運がいい方だったから、
運使い果たしちゃったみたい。
アハハ、ハハハ」
『ミャア?』
「時間が無いの!
あの娘にも。私にも。
だから行って!お願い!」
『ミャア!!』
(あれ~!?
急に場面が変わったナリ!?
それに……、わ、我輩の身長、こんなに低かったナリかね?
…………!
ちょっと待つナリ!!
我輩の体、どうして幼児期の姿になっているナリ?
そ、それに……、
ここ、さっきよりもあついナリ~!!
それに、ここもすごい煙で苦し~!)
『ミャア~! ミャア~!』
(さっきの大白猫ナリか?)
『ミャア!
ミャアミャア!』
(え? 我輩背中に乗ったらいいナリか?)
『ミャア!』
(わかったナリ!
よいしょ!)
『ミャア~!!』
(ちょっと急に走ると我輩落ちちゃうナリよ~!!!)
大白猫はアイラを乗せたまま事故現場を離れると、そのまま川沿いの道路をひたすらどこまでも走り続ける。
土砂降りの雨や、ぬかるみでの転倒によって
泥んこになりながらも、大白猫はそれでも歩みを辞めない。
アイラにとって田舎道での夜の時間は長く感じられ、
そして何より恐ろしい体験だった。
聴こえてくるのはただ森の中から聞こえるフクロウや虫の鳴き声。
アイラを助けてくれそうな人間の気配は無い。
アイラは自分を乗せどこかに運ぼうとしている大白猫を
ただ信じる他無かった。
(お日様ナリか?)
墜落現場を離れてから何日経っただろう?
実際は10時間も経ってはいなかったが、
アイラにとっては何倍も長く感じたた。
お日様は上を目指しながらながらゆっくりと夜のカーテンを開けていく。
(あれ?
あそこに民家があるナリね!)
『ミャア~!!』
(ちょっと、走ると我輩落ちるナリ~!!)
ここが田舎であろうことはアイラにもすぐに理解できた。
見えるのは、田んぼ、ビニールハウス、広い庭、民家。
人の往来は少なく、3階建て以上の建物は探すのが難しい。
そして、田んぼに囲まれ年季の入った民家の広い庭には
当たり前のように農作業の為の軽トラが停めてある。
大白猫は、最初に人の気配を感じた民家の庭先に忍び込むと、
そこにいた少年に何かを必死に訴えていた。
『ミャア!ミャア!』
「わかったわかった!
餌とってくるからちょっと落ちつけって!
……あれ?」
そして見ず知らずの民家の少年は気がついた。
「父さ~ん!?
この大きな白猫子供を乗せたてる~!
それに口にも何かくわえてるよ~!」
少年の父親
「ワシは今手が離せ~ん!」
「は~い!
こいつ……、なにを加えてるのかな?
あれ、手紙??」
『ミャア!!』
「ふむふむ。なるほど、そういうことか」
少年は手紙を最後まで読み終えるとアイラ達のほうを向き言葉を続けた。
「あのおじさんのところへはね~、
そこの道を左に曲がって~、
後はひたすら真っ直ぐ行けばいいよ」
『ミャア!
タタタタ……!』
白猫は道順を知るやいなや、
聞いた方向へと走りだした。
「ちょっと待って!
餌がまだ……!
あ~あ、行っちゃった。
それにしても さっきのあの猫、幼い子供を乗せていたけど、いったいどうしたんだろう……」
(あ~、
酔うナリ~!あれ?
ここは……!!
忘れる筈が無いナリ!
ここは、我輩と姉上、ネイピアが遊んだ思い出の草原ナリね?
それに、あれはおじいちゃんの家!!)
「おや?
これは驚いた!
可愛らしい来客が来おったわい!!」
(お、お、おじいちゃん!!)
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